梅の花が終わるとアンズ.
先月28日に,一輪開花.
今日改めてながめてみると,一気に咲き出していて,3分から5分咲きというところでしょうか.
どれも美しい花を咲かせるサクラ/ウメの仲間サクラ属(スモモ属)の中でも,一輪の美しさでは一番ではないかとも思います.
アンズは,漢字で杏.
アンズという響きも,杏という漢字も美しい.
▽漢字「杏」
中国で同じ意味の漢字をそのまま充てています.
「木」と音符「向」から作られていた形声文字で,「向」が「口」という省略形に置き換わったそうです(字源 角川書店)
杏子とも書きますが,もともとは杏の実を意味した表記だったようですね.
▽アンズ
「アンズ」という名前は,アンズの実を意味する「杏子」という表記から生まれた名前のようです.もとの名前は「からもも」.
杏・杏子[語誌] 「もも」になぞらえうる外来の植物ということで,別の種類の植物と共に「からもも」と呼ばれていたが,杏の果実である「杏子」を食する習慣が,アンズという音で普及するに及び,果実だけでなく,その木や花もアンズと呼ばれることとなった.
万葉集にアンズを詠んだ歌はないそうですが,古今集には見つかります.ただし,「からもも」として.
逢ふからもものはなほこそ悲しけれ 別れむことをかねて思へば 清原深養父(きよはらのふかやぶ)
このことから,また,本草和名(918年)に「杏子(からもも)」の記載があることからも,遅くとも10世紀には渡来していて,花が観賞されていたことが分かります( アンズとは - コトバンク アンズ - Wikipedia ).
ただ,中国では紀元前1000年には栽培されていたこと,また五果(もも・くり・すもも・あんず,なつめ)の一つに数えられていること(山田卓三 万葉植物つれづれ 大悠社),を考えると,10世紀渡来は遅すぎるようにも思います.
英語ではapricotですね.
こちらは,後期ラテン語からフランス語,ポルトガル語,アラビア語などを経た言葉のようで,もともとのラテン語の字義は「早熟の桃」だそうです.(ランダムハウス英語辞典)
ヨーロッパには,おそらくアレキサンダー大王がギリシャに伝えたと考えられるそうで(Prunus armeniaca - Wikipedia),日本より大分早いようです.
アンズは
バラ科 Rosaceae
サクラ亜科 Prunoideae (スモモ亜科)
サクラ属 Prunus (スモモ属)
スモモ亜属 Prunus subg. Prunus
アンズ節Prunus sect. Armeniaca
アンズ P. armeniaca
同じアンズ節にウメがあります.ウメとアンズは,ごくごく近縁の植物で,現在の栽培種のウメの大部分は,ウメとアンズが交雑して生まれたとされています.
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