できるのかというと難しいと,客観的に見て思う.どんな形でもやれればいいなら,できるかもしれない.プロセスと誰がいつまでに判断するのか,早く示すべき.(感染状況の)逆戻りにつながる不安がある.国の説明が足りない.議論すること自体が「負け」であり,弱気と受け止められるので避ける雰囲気がある.この国難の中で実施する五輪とは社会にとってどんな意義があるのか.オープンな議論が求められる.山口香 毎日新聞 

以前ほどではないものの,スポーツ観戦は大好きです.

「国の威信をかけて」などと言われると引き気味になりますが,オリンピックが始まれば,毎日結果が気になり,毎回,新たなひいきの選手が現れて,楽しみを倍加させてくれます.

しかし,現在,オリンピックを開くべきかと聞かれたら,「無理でしょう」と答えざるを得ません---

 

しかし,オリンピック開催の可否をマスコミが取り上げることはほとんどありませんでした.

高田昌幸氏は,この不思議な現象を

“「東京五輪中止」の現実味をスルーする日本マスコミの病理 「五輪開催盛り上げ報道」に漂う異様感”

として論じています(論座 https://webronza.asahi.com/national/articles/2021011600004.html?page=3 ).

 

しかし,高田氏の記事とほぼ同じ時期に,ようやく東京新聞が取り上げ,(1月13日 http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2021/01/15/164455 )

昨日(1月20日)の毎日新聞も,この話題にかなりの紙面を割いていました.

記事に添えられていた山口香JOC委員の意見の見出しは「三月上旬までに判断を」.至極まっとうな意見.

私の見たデジタル紙面の記事は,山口香氏のインタビューを編集したものでしたが,ネット上には,一問一答の形で掲載されています.短い回答の中に凝縮されたかの女の現状分析と理路整然とした回答は見事.

 

 

五輪開催「国の説明足りぬ」 山口香JOC理事,一問一答

毎日新聞2021年1月20日 東京朝刊

https://mainichi.jp/articles/20210120/ddm/035/050/052000c

 

 日本オリンピック委員会(JOC)の山口香理事が19日,東京オリンピックパラリンピック開催の可否について取材に応じた.一問一答は次の通り.

 

 ――昨年3月は「選手の練習環境が整わないので延期すべきだ」と発言した.今年の開催をどう考えるか.

 

 ◆五輪は世界最高峰の技を競い合う.その準備が昨年以上に世界中の選手ができていないし,いつできるようになるかも見通せない.できるのかというと難しいと,客観的に見て思う

 

 ――五輪は中止せざるを得ないか.

 

 ◆五輪をどうとらえるかの問題.どんな形でもやれればいいなら,できるかもしれない.

前回は延期だから言えた.1年延期でもスポンサーとの契約延長などが大変だった.今回は中止か延期かの議論でなく,やるかやらないか.私が中止すべきだと言っても,選手を動揺させるだけになる.

どういうプロセスで誰がいつまでに判断するのか,早く示すべきだと思う.

 

 ――国民の中では中止を求める声が大きくなっている.

 

これ以上,事態が長引く要素は受け入れ難いのは当然だと思う.(五輪で)世界の人が入ってくることが,(感染状況の)逆戻りにつながる不安がある.国の説明が足りない.

 

 五輪が勇気を与えるというのは簡単だが,経済状況がどん底の人がたくさんいる中で,「五輪をやってくれれば,ご飯を食べなくても元気になれる」とは思えない.

 

 ――無観客開催を求める意見もあるが.

 

 ◆感染が収まっていた時期に議論をしていたらよかったかもしれない.この期に及んで無観客かどうかというのは(感染状況を考えると)小さなことに思えてくる.

 

 ――大会関係者は公式には「開催する」としか言わない.

 

 ◆スポーツ界も政治もそうだが,日本の組織の体質がある.議論すること自体が「負け」であり,弱気と受け止められるので避ける雰囲気がある.

 

 国民はスポーツ自体を否定しているのではない.昨年12月の柔道男子66キロ級五輪代表決定戦の阿部一二三選手対丸山城志郎選手,今月の卓球全日本選手権女子シングルス決勝の石川佳純選手と伊藤美誠選手の試合はコロナ禍だからこそ,いっそう胸を打たれた.

この国難の中で実施する五輪とは社会にとってどんな意義があるのか.オープンな議論が求められる.

 

【聞き手・松本晃】

 

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