楽しいマスク
つぶやく短歌 コロナの時代に
馬場あき子
東京新聞 2020年11月26日 夕刊
木犀の香がしてをりぬウイルスの
不死なる秋のうすく明るく
抱卵のかまきり太くおごそかに
道を歩めりつひに見果てず
すれちがふマスクの模様河豚(ふぐ)なりしや
鯨なりしやふとほほゑまる
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GoToで街にも人出が多くなった.
スクランブル交差点にもかなりの人だまりができる.
その人なかで日頃はぼんやり車の流れを見ているだけだったが,今の私は対岸にたむろするマスク情景を面白く眺めるようになった.
コロナ以前だったら異様な光景というほかない.
マスクとは本来「仮面」のことだ.
ウィズコロナが長引くまえにいろいろの覆面マスクが流行し仮面の要素を生み出している.
仮面舞踏会などでお馴染みの半仮面は顔の上部,目と鼻が中心の仮面だが,マスクは下半分の覆面型だ.
今その覆面に固有のデザインをほどこすファッション化が盛んになり出した.
はじめはさまざまな布地の模様を楽しんでいたが,しだいに個性的な染め布で作ったり,好きな花や鳥,犬猫はじめ動物の絵模様を描いたり,刺繍(ししゅう)したりしている.マスクで対面して話す時,それは人物にある種の魅力を加味するので見つめているのも楽しい.
しかし先日,マスクとしての有効性はどの材料が一番かという調査が発表されたのをみると,なんと不織布が最も予防力が高いという結果であった.
一番安価なマスクの原点に戻ったような安心があった.
しかしコロナの時代にマスクが装身具の一つに昇格したことだけは確かだといえるだろう.
東京新聞 2020年11月26日 夕刊