沖縄の風をはらむ芭蕉布3 三つ目の壺:布の記憶を未来に伝える.芭蕉布の始まりは,およそ600年前の琉球王国の時代.当時は,王に仕える士族たちの正装としても.受け継がれていた伝統は,ある出来事によって途絶えます.第二次世界大戦と戦後の混乱です.立ち上がったのが,喜如嘉の女性たち.苗を植えることから始め,様々な努力を続けます.しかし,全てを守り伝えることはできませんでした.今,一度途絶えた芭蕉布をよみがえらせようという動きが始まっています.

沖縄の風をはらむ芭蕉布

NHKBSプレミアム 美の壺File445

2020年10月7日(水)

(初回 2018年5月18日(金))

【出演】草刈正雄,【語り】木村多江

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沖縄の風をはらむ芭蕉布

http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/11/23/234837

沖縄生まれの布,芭蕉布. 始まりは,およそ600年前の琉球王国の時代.風通しが良く,高温多湿の沖縄に最適な布として愛されてきました. 素材は,バナナの仲間の植物から取り出した繊維そのもの. 壺一:“自然をまとう 沖縄の糸” 一本一本作られた芭蕉布の糸.島の恵みと技の賜物です.

 

 

沖縄の風をはらむ芭蕉布

http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/11/24/233228

糸の結び目が残っているのが味なんだ』「芭蕉布を着る時は,田舎娘とか漁師,畑仕事.庶民を演じる時に,芭蕉布を着て踊ってます」「乾燥するとやっぱりよく切れますので,すすみません.湿った天気の時は1メートルちょっとぐらいも織ますけど、織れない時は30センチぐらいです」模様を生み出すのは琉球藍など天然染料で染めた糸.部分的に染められた糸を使い様々な模様を作ります.伝統の中で育まれてきた豊かな織り柄の世界. その一つ一つが島の心を今に伝えます.

 

 

沖縄の風をはらむ芭蕉布

草刈「ああ,いいね〜.涼しそうだね」

さすが,沖縄のお友達ですね.

「あいついいの選んでくれたよ.さっそく奥さんに見せよう.うん」

 

継承

沖縄県南部,浦添市にある美術館(浦添市美術館).この美術館の館長を務める,宮里正子さん.その服,もしかして--

宮里さん「これは,芭蕉布の服ですね.戦前といいますか,ずいぶん古い時代のもので,布幅が,普通の着物を作るには,とても狭かったんですね.それをそのまま生かす形で使えないかということで,こういうツーピースにした洋服になったんですね」

 

芭蕉布を日常的に使いたいと,自分なりのアイデアでデザインしたという宮里さん.牡丹とループをつけて,様々な表情を楽しんでいます.

宮里さん「この土地(沖縄)で生まれそだった布ということで,皆に知ってもらいつつ,少しでも,自分の手もとで,そして次の世代にも伝えていければいいかな,というふうに思っています」

 

今日三つ目の壺は

布の記憶を未来に伝える

 

芭蕉布の始まりは,およそ600年前の琉球王国の時代.

当時は,王に仕える士族たちの正装としても使われ,その妻など,女性たちは,彩り豊かな芭蕉布を身につけていました.

明治になり,王国がなくなった後も,受け継がれていた伝統は,ある出来事によって途絶えます.

第二次世界大戦と戦後の混乱です.

戦闘終了後,マラリアの蔓延を防ぐ目的で,糸芭蕉の畑はほとんど焼き払われました.

その時立ち上がったのが,喜如嘉の女性たちでした.

 

芭蕉の苗を植えることから始め,様々な努力を続けます.

米軍統治下では,テーブルセンターなど,西洋の生活用品まで織り,技術の継承に努めました.

しかし,全てを守り伝えることは,できませんでした.

 

今,一度途絶えた芭蕉布をよみがえらせようという動きが始まっています.

沖縄県立博物館に収められていた1枚の古い芭蕉布

芭蕉桃色地縦縞絽(縞模様を織り出した絽)織裂”

これを復元しようというのです.

博物館学芸員與那嶺一子さん「これはですね,琉球王国時代に首里士族たちが身につけていた衣装のはぎれです.紅花で染めた地色ということとか,細い糸を使うとか---,かつてはやっていただろうと思うんですけど,今はもうやっていないことを,今の技で模造することで,新しい何かが分かるのではないかというふうに,考えたところです」

 

その復元を負かされたのは.喜如嘉に生きる職人たち.

芭蕉布に取り組んで40年余りの染色家平良美恵子さん.若手の織り手,加藤泉さん.二人を中心に,職人全員で取り組んでいました.

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着物探訪☆沖縄・芭蕉布の旅〜その⑥〜 | ボンジュールきもの


 

一番の課題は,紅花でどう染めるのかということでした.

平良栄美子さん「紅花は(色が)退行するんです.失せて失せて移ろって残っているのが今の(はぎれの)色ということは,本物の紅花染めの新しいものは,どれだけ染めればいいのよっていうのが,ちょっと不安でした」

 

紅花染めは光に弱く,歳月とともに色あせます.

残されていた布から,当時の色を推測するしかありません.

現在,沖縄で,紅花染めはほとんど行われていません.氷を使って温度を下げるなど,試行錯誤.

紅花できれいに染められるのは細くて柔らかな繊維だけ.そのため,織る時も注意が必要でした.

加藤泉さん「自分でやったことがないものなので,こんなに細い糸は.とても緊張しながら織っています.細いので,糸の本数も沢山あるので,からんで切れないようにとか,気をつけてやってます」

 

高度な技が必要とされる復元作業.喜如嘉に伝わる技術の全てを加藤さんに伝えたといいます.

平良栄美子さん「次の世代だなと〜というふうに,ちょうど感じてます.この機会で,次の世代が飛躍できるいいチャンスだな,というふうに思ってます」

 

芭蕉布を守り,受け継ぐ取り組みの数々.

新たな歴史の一ページを開こうとしています.

 

 

草刈「よいしょよいしょ」

草刈さん,どこかにお出掛けですか?

「いや,さっきね,この着物を妻に見せたら,随分よろこんでくれましてね.話しているうちに,いっそ,沖縄に行ってみますかって,そういう話になりましてね」

えっ?今からですか?

「そう,今から.それに送ってくれた友達に,直接会って,お礼も言えるし.いいかなと思いましてね.あいつ,ビックリしますよ.あっ,そうだ.とっておきの酒を持っていきましょう.えっと,どこにしまったかな」

 

 

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http://www.nhk.or.jp/nichibi-blog/400/422622.html

 

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