米疾病対策センター(CDC)は6月25日,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化リスクのある人のリストを改訂した.リスクは年齢とともに増加.重症化リスクのある基礎疾患 ; 慢性腎臓病,慢性閉塞性肺疾患,肥満,臓器移植後の免疫不全状態 ,心不全,冠動脈疾患または心筋症などの深刻な心疾患,鎌状赤血球症,2型糖尿病 毎日新聞// 新型コロナ,免疫持続は数カ月どまり 各国で研究報告 日本経済新聞/ Nature NEWS

新型コロナ 重症化は65歳以上に限らない

ヘルスデーニュース

毎日新聞医療プレミア

2020年7月11日

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https://mainichi.jp/premier/health/articles/20200710/med/00m/070/001000d

 米疾病対策センター(CDC)は6月25日,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化リスクのある人のリストを改訂した.

これまでに蓄積されたエビデンスに基づいて,高齢者の定義から具体的な年齢を削除するとともに,重症化リスクとなる基礎疾患の種類を拡大した.

 

 CDCのRobert Redfield氏は,「どのような人がCOVID-19重症化のリスクが高いのかを知ることは,人々が自分自身や家族を保護したり,社会が最善の選択をするために役立つ.われわれ全員がCOVID-19のリスクにさらされているが,より深刻な影響を受けやすい人を認知し,その人たちの健康と福祉を守るための適切な対策を講じる必要がある」と語っている.

 

リスクは年齢とともに増加

 今回の改訂のポイントは,年齢に関連するリスクと基礎疾患に関連するリスクの2項目の変更.

まず年齢に関しては,従来は「65歳以上」としていたハイリスクとする具体的な年齢閾値を削除した.成人のCOVID-19重症化リスクは年齢が高いほど確実に増加し,65歳以上に限定するのは適当ではないため.

 

 基礎疾患に関しては以下のリストを掲げ,重症化リスクへの注意を喚起している.

 

   ・慢性腎臓病

 ・COPD慢性閉塞性肺疾患

 ・肥満(BMI30以上)

 ・臓器移植後の免疫不全状態

 ・心不全,冠動脈疾患または心筋症などの深刻な心疾患

 ・鎌状赤血球症

 ・2型糖尿病

 

 米国人の約40%は肥満で,成人の約60%はこれらいずれか最低一つが該当する.

今回の改訂により,従来よりも多くの人がCOVID-19重症化高リスク者となる.

CDCによると,これらの該当項目数が多いほどリスクが高くなるという.

 

妊婦の死亡リスクは上がらず

 CDCではこのほか,COVID-19重症化リスクが高まる可能性のある状態として,以下のリストも公開している.

 

 ・ぜんそく(中等度から重度)

 ・脳血管疾患

 ・嚢胞(のうほう)性線維症

 ・高血圧症または高血圧

 ・骨髄移植やHIVステロイドや免疫抑制薬の使用などによる免疫能低下

 ・認知症などの神経疾患

 ・肝疾患

 ・妊娠

 ・肺線維症

 ・喫煙

 ・サラセミア(血液疾患の一種)

 ・1型糖尿病

 

 これらのうち妊娠については,妊娠中の女性がCOVID-19に罹患した場合,「妊娠していない女性よりも入院や集中治療,あるいは機械的人工換気が必要となる確率が顕著に高くなる」と解説している.

ただし,妊娠中だからといってCOVID-19による死亡リスクが高いわけではないという.

 

 また糖尿病については,2型糖尿病は「COVID-19を重症化させるリスクが高い」,1型糖尿病や妊娠糖尿病は「COVID-19重症化のリスクを高める可能性がある」と指摘している.その上で,「取るべき行動」として,

▽通常どおり経口血糖降下薬の服用とインスリン注射を続ける▽医療従事者の指示に沿って血糖値を測定する

インスリンを含む糖尿病用薬が少なくとも30日分手元にあることを確認する

▽気分が悪い場合は医療従事者の指示に従うとともにシックデイルール(糖尿病の人が他の病気になった時の対処法)を守る--などの対処方法を示している.

 

(ヘルスデーニュース 2020年6月25日)

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https://www.usnews.com/news/health-news/articles/2020-06-25/whos-at-highest-risk-from-covid-19-cdc-updates-its-list

 

新型コロナ,免疫持続は数カ月どまり 各国で研究報告

日本経済新聞 電子版   2020/7/18 21:25

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https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61695680Y0A710C2EA1000/?n_cid=SNSTW001

新型コロナウイルスに一度感染して増強された免疫の能力が,数カ月で落ちるという研究報告が相次ぐ.

免疫を持つ人に証明書を発行するという考え方もあるが,実現は難しい.

様々な検査を適時受けられるように体制を整え,感染を広めにくい人を示せるようにして,経済活動と感染症対策の両立を目指す必要がある.

 

ロンドン大学などの研究チームは11日,65人の感染者を対象に,新型コロナウイルスを倒す体内物質「抗体」の持続期間の調査結果を公表した.体内では抗体だけでなく様々な細胞などがウイルスなどを倒す免疫として働く.抗体は感染防御で特に重要な物質だ.

調査結果はまだ他の研究者の査読を受けていないが,抗体の量は発症から約3週間でピークになり,その後減った.平均値は発症から約3カ月後には発症直後と同程度に下がった.症状の軽かった人で減りやすかった.

中国の重慶医科大学などの研究チームも6月,感染時の症状と回復後の免疫の状態の関係を調べた研究結果を発表した.約2カ月後に抗体が残るかどうかを調べた.

発熱やせき,のどの痛みなどの症状のあった感染者では,31人中4人の抗体が消えていたのに対し,無症状者では30人中12人が消えていた.論文の中で研究チームは「無症状者では弱い免疫反応しか起きていない可能性がある」と指摘した.

(以下略)

 

 

Nature NEWS

Antiviral antibodies peter out within weeks after infection

 16 July 2020

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https://www.nature.com/articles/d41586-020-00502-w

(原文英文 DeepL翻訳+拙訳)

抗ウイルス抗体は感染後数週間で少しずつ少なくなっていく

 

これまでで最も包括的な研究によると,新しいコロナウイルスSARS-CoV-2の影響を中和する主要な抗体のレベルは,感染後数ヶ月以内に低下する.

中和抗体は,病原体が細胞に感染するのをブロックすることができる.しかし,コロナウイルスに対するこのような抗体反応は,しばしば,わずか数週間後に衰えてしまう.

キングス・カレッジ・ロンドンのKatie Dooresらは,65人の感染者のSARS-CoV-2に対する中和抗体の濃度を最大94日間にわたってモニターした(J. Seow et al. Preprint at medRxiv http://doi.org/d3s2; 2020 まだ査読されていないプレプリント).

研究チームによれば,抗体産生のピーク時には,重度のCOVID-19症状を持つ人は,軽症の人よりも高い抗体レベルを持っていた.

しかし,ほとんどの人では,症状が現れてから約1ヵ月後に抗体レベルが低下し始め,時には検出不能に近いレベルまで低下することもあり,中和抗体の産生を促進するように設計されたワクチンの持続性について疑問が生じた.

 

Antiviral antibodies peter out within weeks after infection

Key antibodies that neutralize the effects of the new coronavirus fall to low levels within months of SARS-CoV-2 infection, according to the most comprehensive study yet.

Neutralizing antibodies can block a pathogen from infecting cells. But such antibody responses against coronaviruses often wane after just a few weeks.

Katie Doores at King’s College London and her colleagues monitored the concentration of neutralizing antibodies against SARS-CoV-2 in 65 infected people for up to 94 days (J. Seow et al. Preprint at medRxiv http://doi.org/d3s2; 2020). In a preprint that has not yet been peer reviewed, the team reports that at the peak of antibody production, people with severe COVID-19 symptoms had higher levels of antibodies than had people with mild disease.

However, in most people, antibody levels began to fall about a month after symptoms appeared, sometimes to nearly undetectable levels — raising questions about the durability of vaccines designed to promote the production of neutralizing antibodies.

 

 

medRxiv

Longitudinal evaluation and decline of antibody responses in SARS-CoV-2 infection

Jeffrey Seow et al.

doi: https://doi.org/10.1101/2020.07.09.20148429

https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.07.09.20148429v1

Abstract

Antibody (Ab) responses to SARS-CoV-2 can be detected in most infected individuals 10-15 days following the onset of COVID-19 symptoms. However, due to the recent emergence of this virus in the human population it is not yet known how long these Ab responses will be maintained or whether they will provide protection from re-infection. Using sequential serum samples collected up to 94 days post onset of symptoms (POS) from 65 RT-qPCR confirmed SARS-CoV-2-infected individuals, we show seroconversion in >95% of cases and neutralizing antibody (nAb) responses when sampled beyond 8 days POS. We demonstrate that the magnitude of the nAb response is dependent upon the disease severity, but this does not affect the kinetics of the nAb response. Declining nAb titres were observed during the follow up period. Whilst some individuals with high peak ID50 (>10,000) maintained titres >1,000 at >60 days POS, some with lower peak ID50 had titres approaching baseline within the follow up period. A similar decline in nAb titres was also observed in a cohort of seropositive healthcare workers from Guy′s and St Thomas′ Hospitals. We suggest that this transient nAb response is a feature shared by both a SARS-CoV-2 infection that causes low disease severity and the circulating seasonal coronaviruses that are associated with common colds. This study has important implications when considering widespread serological testing, Ab protection against re-infection with SARS-CoV-2 and the durability of vaccine protection.