土記
感染症対策のイロハは?
青野由利
https://mainichi.jp/articles/20200718/ddm/002/070/143000c
毎日新聞2020年7月18日 東京朝刊
東京の新型コロナウイルスの感染状況は予断を許さない.
6月末に新たなモニタリング指標を示した東京都の小池百合子知事は「専門家の方々に分析していただき,それを基に都の対応を決定する」と述べてきた.
とすれば,助言している専門家メンバーが誰かは知っておかなくては.そう思って,都庁の担当部署に聞いて,キツネにつままれたような気分になった.
今週になっても,「まだ,決裁されていないので公表できないんです」という返答なのだ.
現実には,モニタリング会議はすでに2回開かれ,それぞれ専門家が2~3人ずつ出席し,コメントしている,彼らがメンバーであるのは間違いない.
ただ,主に現場で患者さんを診る臨床が専門の人々,とすると疫学や公衆衛生の専門家は? リストの公表は来週以降らしい.
東京の情報の見えにくさはこれまでも書いてきたが,まだ他にもある.
東京都は,日々,「今日は293人」というように,新たな感染者数を公表している.これは検査で感染が確定した日に基づく「報告日」ベースの数だ.
これだと,検査が滞ると減り,結果がまとめて出ると急に増える,というように,検査状況に左右される,実際の発症日からのタイムラグもばらばらだ.
だから,本当の感染動向を知るには,「発症日」でみたデータが必要,と専門家は言ってきた.
16日に開かれた政府の新型コロナ感染症対策分科会の記者会見でも,会長の尾身茂さんが「報告日では正確な姿がわからない」「発症日をもとに感染のカーブを描いて判断するのが,感染症対策のイロハ」と強調した.
当然,Go Toキャンペーンについて検討するにしても,このデータは欠かせない,
ところが,なぜか東京都はこれを公開していない.
尾身さんは会見で東京の現状について「爆発的な感染拡大にはなっていない」「穏やかに増加しているか,あるいは少しずつ平たんになりつつあるか」と述べた.
これは,「報告日」ではなく,「発症日」ベースの感染カーブに基づく分析? 当然,そうだろうとは思うが,もやがかかっていてもどかしい.
「重要なデータ」が公表されないと,人々は疑心暗鬼になる.もし,都に公表できない理由があるなら,それを説明しなくては.
市民への透明性のある説明も,感染症対策のイロハでしょう?
(専門編集委員)
東京都,新型コロナウイルス新規感染290人 3日連続で300人近く,累計で9000人を超える
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/07/300-14.php
2020年7月18日(土)15時15分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
18日,都内で新たに290人の新型コロナウイルス陽性者が確認された,NHKなど国内メディアが報じた.
陽性者が100人を超えるのはこれで10日連続,この1週間合計では1502人と感染拡大に歯止めがかからない状態だ.
これで都内で確認された陽性者の合計は9223人,東京アラートを解除し休業要請などの規制を緩和した6月11日以降の陽性者は3803人となった.
東京都では4月17日に206人の感染確認をピークに,徐々に新規陽性者が減り続け,5月23日には新規陽性者が2人まで減少,感染拡大の抑え込みに成功したかに見えたが,その後,新規陽性者が増加,7月に入ってからは連日100人以上の,感染拡大が続いている,感染者が2人と最少だった5月23日以降の累計では3804人となっている.
東京都は陽性者が急増していることについて,PCR検査の実施件数が1日あたり4000人以上と増えていることも理由にあげているが,陽性率も7月10日以降は6%と高まっており,感染第2波が現実のものになりつつある.
vdata.nikkei.comhttps://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-japan-chart/