<検証・コロナ対策 ①岐路>水際対策強化に時間かけすぎ,流入許す. <検証・コロナ対策 ②限界> 追跡調査に保健所は悲鳴 //新型コロナウイルスの感染が再び,東京を中心に首都圏でじわりと広がりつつある.半年前までは未知のウイルスだったが,対策の試行錯誤を経て私たちも知恵を付けてきた.その歩みを振り返り,危機への備えに何が必要かをあらためて考える.東京新聞

水際対策強化遅れ 流入許す

<検証・コロナ対策  危機に備えるために  ① 岐路>

東京新聞 2020年7月14日

https://www.tokyo-np.co.jp/article/42199?rct=national

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 新型コロナウイルスの感染が再び,東京を中心に首都圏でじわりと広がりつつある.半年前までは未知のウイルスだったが,対策の試行錯誤を経て私たちも知恵を付けてきた.その歩みを振り返り,危機への備えに何が必要かをあらためて考える.

 

不十分な水際対策に焦り

 「前のめりになった」.6月24日,政府専門家会議座長の脇田隆字(61)らは,記者会見で活動をそう振り返った.

新型コロナウイルス対策を担当する経済再生担当相の西村康稔(57)はこの日,政府専門家会議の廃止を発表した.

 同じ日,厚生労働省は海外から成田空港などに到着した人のうち,2日間で7人が陽性だったと公表した.いずれも無症状だが,空港での検査で発見.ウイルスの流入を防いだ.

 だが,3カ月余り前は違った.不十分な水際対策への危機感から,会議は前のめりになっていた.

 

▽中国対策の裏で欧州から

 「これはまずい」.3月10日ごろ,脇田は手元に届いたデータを見て思った.イタリア,フランス,スペイン….国内で感染が確認された人の中に,欧州からの帰国者が出始めていた.

 中国からのウイルス対策に力を注ぎ,9日の会見で「何とか持ちこたえている」と述べたばかりだった.ところが欧州で感染爆発が起き,世界保健機関(WHO)事務局長のテドロス・アダノム(55)は11日にパンデミック(世界的大流行)を宣言.局面が変わりつつあった.

 首相の安倍晋三(65)が五輪を「予定通り開催したい」と表明した14日,会議のメンバーらは勉強会を開く.

欧州などで感染者が急増しているデータは,強い危機感を共有するのに十分だった.政府に水際対策の強化を求める方向になる.

 脇田は19日の会議まで待つ猶予はないと判断.17日,「至急,帰国者や訪日外国人対応を」との要望書を提出する.4月の感染拡大を防ぐには,ここからの2週間が岐路だったことが後に分かる.

 

▽上野の花見客に衝撃

 19日の会議も厳しい認識が相次いだ.「楽観視すべきでない」「これまでの対策で乗り切れるとは思えない」.副座長の尾身茂(71)は深夜の会見で,「オーバーシュート(感染爆発)」の言葉を初めて使った.ところがー.

 「上野公園は花見客でにぎわっています」.20日からの3連休,テレビで行楽地の様子を見た脇田は愕然とした.「メッセージが伝わっていない」.連休後,東京都新宿区の国立国際医療研究センター病院で,感染症医の大曲貴夫(48)はスタッフから「先生,絶対おかしいです」と報告を受ける.検査で陽性者が急増していた.「このままだと(感染爆発した)ニューヨークになる」と恐怖心を抱いた.

 

▽遅すぎた検査強化

 五輪の延期が決まった翌日の25日,政府は国民に不要不急の海外渡航を控えるよう要請.水際対策は少しずつ強化していたが,4月3日に帰国者への検査を3倍の73カ国・地域へと大幅に増やした.脇田の要望から2週間がたっていた.

 水際対策は厚労省のほか,外務省や法務省国土交通省がかかわる.会議のメンバーは「ここにお願いしたらすぐ動く,とかでなく間に何枚か壁がある」と,もどかしさを感じた.助言組織の限界も見え,会議は自らの発信をさらに強め,前のめりになっていく.

 10日,国内で感染が確認された人は700人超とピークに達した.3月中旬の10倍以上.医療現場では病床が足りず,崩壊の危機に直面した.「(水際対策強化の)政策に一定の時間がかかり,(ウイルスが)入ってしまった」.脇田はそう振り返る.

 

▽成田はパンク寸前

 政府は現在,入国制限の緩和に乗り出しているが,水際対策は綱渡りの状態が続く.感染者数が世界で累計1000万人を超えた6月28日,成田空港では検査体制が追いつかず,運航に影響が出た.

翌日,WHO事務局長のテドロスはあらためて表明した.「パンデミックは加速している」 

(敬称略,肩書は当時)

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追跡調査に保健所は悲鳴

<検証・コロナ対策  危機に備えるために  ②限界>

東京新聞 2020年7月15日

https://www.tokyo-np.co.jp/article/42600

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 国内に入ってきた新型コロナウイルスをどう封じ込めるのか

 2月25日,首相の安倍晋三(65)は「クラスター(感染者集団)が発生している自治体をしっかりと支援する」と表明.厚生労働省クラスター対策班を設置する.政府専門家会議は「感染者の8割は他人に感染させていない」と分析していた.残る2割を見つけて行動の自粛を求めれば,感染は拡大しないとみた.

 

 班には,世界保健機関(WHO)で重症急性呼吸器症候群(SARS)対策を担った東北大教授の押谷仁(61)と,感染の数理モデルを専門とする北海道大教授の西浦博(42)が参加.各地のデータを集めて感染傾向を分析し,深刻な地域に専門家を派遣する.

 現場で調査を担うのは自治体の保健所だ.感染者から聞き取り,だれからうつされ,だれにうつしたかを見つける.3月上旬まで感染者は多くなかった.保健所の人員で追跡でき,中国由来のウイルス対策は一定の効果が出ていた.

 

▽「見えないクラスター」が頻発

 「クラスター対策だけでは感染拡大を抑えきれないかもしれない」

 3月14日,東京駅の近くにあるビルの1室で,押谷は発言した.

日本公衆衛生学会の専門家らが顔をそろえていた.東京を中心に,感染経路が分からないケースが出現.これが増えると,見えないクラスターの可能性が出てくる.

 

 追跡調査は記憶のあいまいさや協力拒否もあり,時間や労力がかかる.

保健所は新型コロナの受診相談や検査の判断,入院先の手配も担っていた.「労務が過剰で疲弊している」.専門家会議副座長の尾身茂(71)は19日の会見で訴えた.

 このころ,欧州由来の感染が広がり始めていた.

押谷は27日,保健所の負担軽減を「明日にでもやる,という気持ちでやらないと破綻する」と政府に注文する.東京では既に,限界に近い状況だった.

 

▽過労死ラインの2倍の労働も

 感染者が急増した3月末,都内の北区保健所では連日のように職員が午後11時まで居残った.日中は電話相談への対応,午後5時を過ぎると追跡調査へ.「今の体制ではやっていけません」.定例会議で担当者の1人は訴えた.

 

 4月に入ると,都や区から増員があったが,調査は追いつかない.過労死ラインの倍,月173時間に達する職員や,精神的な不調を訴える職員も.都には各保健所から「ずっと調査する必要があるのか」との問い合わせが相次いだ.

 感染経路を追えないケースが増えても,厚労省クラスター対策重視の旗を振り続けた.「調査も検査も入院も全部,全速力でやれ」.都幹部は政府の姿勢をそう受け取った.都医師会長の尾崎治夫(68)は厚労政務官自見英子(44)に「保健所の業務が多すぎる.調査を止めさせてくれ」と電話で求めた.

 緊急事態宣言が解除された5月下旬,安倍は「日本モデルの力を示した」と誇らしげに話した.

その柱だったクラスター対策について,尾身は6月の会見でこう振り返った.「3月末~4月下旬は機能しなくなった」(敬称略,肩書は当時)

 

 

現在のクラスター発生状況

 

一ヶ月弱で87件増 劇場・保育所介護施設

東京新聞7月15日

(増加数が最も多いのは飲食店)

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荒川区公式サイト

区内の介護施設における新型コロナウイルス感染者の発生(令和2年7月15日現在)/荒川区公式サイト

令和2年6月27日に発生した荒川区内の介護老人保健施設での新型コロナウイルス感染症の感染に関し、新たに入所者1名の陽性が確認されました。

今回の感染者は、以前実施したPCR検査での陰性確認後、健康観察期間中に発熱の症状等がみられた入所者6名について改めて検査を実施した結果、確認されたもので、他の5名は陰性でした。

これで、当該施設における感染者数は、累計32名(入所者25名・施設職員7名)で、全て同一フロア内で確認されています。

感染者1名の年代・性別・居住地については次のとおりです。

    90代・女性・区内在住

施設名

介護老人保健施設 ひぐらしの里(入所定員 100名) (荒川区西日暮里1-4-1)

今後の対応

感染経路等については、現在調査中です。区は、東京都及び当該施設と連携し、必要な対応を進めており、引き続き最大限の対応に努めてまいります。

 

https://www.chibanippo.co.jp/news/national/705929

浦安の病院で計16人感染 さらに114人検査 知事、クラスター連続に危機感

千葉日報 2020年7月13日

 千葉県内の新型コロナウイルス新規感染者が12日、緊急事態宣言解除(5月25日)後最多の31人に上り、浦安市内の「タムス浦安病院」では13日までに、入院患者や看護師計16人のクラスター(感染者集団)が発生した。松戸市内の特別養護老人ホームでも11日に集団感染が確認されたばかり。いずれも重症者は出ていないが、森田健作知事は「残念ながらクラスターが続いた。初動が大事」と危機感を示し、感染拡大防止への対策徹底を指示した。県内では13日も18人の感染が判明した。