そのコロナ検査,必要ですか? 陰性証明,不安解消…専門医の警鐘;「医学的根拠乏しく」「国内の検査能力,枯渇する」「検査が増えても“感染予防徹底を”」毎日新聞 //国内初のワクチン治験 吉村大阪府知事「前のめりの政治主導」の危うさ;「“フライング”発表に現場反発」「“医療関係者が対象”拒否できるのか」「動物実験,安全性データ未公表」「“悪玉抗体”の可能性も」 毎日新聞  

Withコロナの生活,New Normal,新しい生活様式

この様々な言葉で語られる日々は,とてつもなく速いスピードで過ぎていくように感じます.緊急事態宣言の解除が一ヶ月以上前だったとは思えません.

それだけ,まだ緊張感の中に生活しているというのが実感.

 

コロナとは別の話題でブログをまとめようかと思っていても,いざネットに向かうと,まずコロナ関連の検索を始めてしまいます.

今日もコロナの話題二つの記事を転載します.地味なものばかりですが---

掲載したもに以外に気になった記事は

「安易な国際移動再開」、大規模流行を招く|医療維新 - m3.comの医療コラム

1日10人の感染者入国で「再宣言」に 西浦教授ら試算 [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル

 

 

 

 

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そのコロナ検査,必要ですか? 陰性証明,不安解消…専門医の警鐘

毎日新聞2020年7月5日

https://mainichi.jp/articles/20200705/k00/00m/040/038000c

 新型コロナウイルスの検査体制が徐々に強化されつつある.「PCR検査」(遺伝子検査)のみならず「抗原検査」も,さらには唾液による検査も条件付きで可能になった.一方,経済活動の再開に伴い,無症状の人が健康チェックのために自費で検査を受ける動きもある.各種検査を扱うグローバルヘルスケアクリニック(東京)院長で,輸入感染症渡航医学が専門の水野泰孝医師(51)に最新事情を聞いた.

 

医学的根拠乏しく

 「海外の赴任先に戻るため,PCR検査の『陰性証明書』を出してほしい」.同クリニックには5月中旬以降,そんな事情を抱える健康な人たちが連日のように訪れている.数万円を全額負担する自由診療となるが,これまでに100人以上が検査を受け,いずれも陰性だった.

 

 新型コロナの感染拡大を受け,外国人の入国を制限してきた政府は感染状況が落ち着くベトナムと相互の往来制限を段階的に緩和することで合意し,6月下旬には第1弾として日本人ビジネスマンら約440人がベトナム渡航した.タイ,豪州,ニュージーランドなどとも緩和に向け協議が進められている.

 

 政府は今後,入国希望者に陰性証明書や日本での行動計画書の提出などを求めるほか,空港に到着した際もPCR検査を実施し,陰性であれば入国を認める方針だ.日本人が相手国に入国する際も同様の手続きが求められる.一方,例えばインドネシアでは陰性証明書の提出などを条件に「一時滞在許可」などを持つ外国人の入国を以前から例外的に認めており,渡航を希望する人が出国前に水野さんのクリニックなどに駆け込んでいるのだ.

 

 「結果が陰性でも,入国日までに感染しない保証はなく,実際は医学的根拠のある証明にはなりません」.水野さんはそう嘆息したうえで,最近の動向を解説する.「一時帰国していたビジネスマンらが赴任先に戻るようになり,医学的根拠が薄くても陰性証明書を用意しなければ身動きが取れない人たちがいます.患者向けの検査体制がようやく整ってきたところに,今度は渡航者を検査する必要が出てきた.政府は渡航者のための新たな『PCRセンター』の設置などを検討していますが,渡航を扱うには別の感染症を予防するワクチンを勧めたり,英文の証明書を作成したりとある程度の専門性が求められます.今後はそうした点を踏まえた体制の整備が必要になりそうです」

 

「国内の検査能力,枯渇する」

 自費での検査はスポーツ界にも広がっている.接触プレーを伴うサッカーのJリーグでは民間の検査機関に委託し,全クラブの選手やスタッフらを対象に2週間に1回ずつPCR検査を行う.日本野球機構NPB)とプロ野球12球団も,選手らに月1回のペースで実施する.厚生労働省が6月上旬,発熱などの症状が出てから9日以内であれば唾液を検体とすることを認めたため,両団体とも唾液による検査を採用した.綿棒で鼻の奥から粘液を取る従来の方法だと,せきやくしゃみが出やすく,採取する人に感染リスクがあったが,唾液ならそのようなリスクが軽減され,より多くの人を素早く効率的に検査できる.

 

 だが,水野さんは自費での検査にはあくまで慎重な立場だ.「経済活動と両立させるためにどうしても必要なケースはありますが,無制限に活用が進んだら国内の検査能力が枯渇してしまう.検査をするにしても,本当に必要かどうかを十分見極めたうえで行うべきでしょう」

 

 2月12日時点で1日最大300件程度だった国内のPCR検査能力は現在,同3万件超に拡充された.政府による「緊急事態宣言」全面解除後の6月は,検査数が日曜日を除き1日5000~8000件ほどにとどまったが,7月2日には東京都内の1日の新規感染者数が2カ月ぶりに100人を超えるなど,予断を許さない状況だ.ちなみにJリーグの「新型コロナウイルス感染症対応ガイドライン」では,社会全体の検査需給が逼迫(ひっぱく)した場合,「公式検査を中止し,検査の機会を社会に提供することがある」と明記する.

 

 PCR検査は,ウイルスの一部の遺伝子を増幅するPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)技術を用いた精密検査だ.

新型コロナの場合,基本的には感染が疑われる人を対象に,感染症法に基づく「行政検査」として行われる.当初は保健所が必要性を判断し,地方衛生研究所などでしか検査を担えない仕組みだったが,保健所の要員不足などで検査が滞る事態となった.

 

 そのため,3月からは公的医療保険が適用され,保健所が紹介した専門外来の医師の判断に基づき,民間検査会社などを活用した検査が可能になった.4月からは各地の医師会を運営主体にドライブスルー方式などで検体を採取する「地域外来・検査センター」(PCR検査センター)が設置されるようになり,かかりつけ医の判断でセンターを紹介するルートもできた.

 

 だが検査能力の向上とは裏腹に,検査数は伸び悩んだ.水野さんが振り返る.「当初は検体採取に必要な防護具が不足し,不慣れな医療機関では感染者と非感染者を分ける動線確保に難航するなどの問題もあった.民間検査会社との協力体制が整っていなかった点も大きかった」

 

 そこで脚光を浴びたのが,インフルエンザなどの診断でおなじみの抗原検査だ.鼻の奥から採取した検体にウイルス特有のたんぱく質が含まれているかどうかを簡易検査キットで調べるもので,厚労省が5月に保険を適用.検体を運ぶ時間に加え検査自体も数時間を要するPCR検査に対し,抗原検査はその場で約30分で結果が分かる.

 

 とはいえ,精度が劣るため,陰性結果の場合は追加でPCR検査を行う必要があった.「便利ですが,鼻の奥からの検体採取では感染リスクが高いことに変わりはなく,陰性だと二度手間になるのが難点でした」.その半面,ウイルスの排出量が多い発症2~9日目であれば,PCR検査と結果の一致率が高い.この期間内であれば陽性でも陰性でも抗原検査のみで診断する,と厚労省が認めたのは6月中旬のことだ.その後,発症から9日以内の患者なら唾液を検体とすることも可能になり,使い勝手は格段に良くなった.

 

検査が増えても「感染予防徹底を」

 

 PCR検査と抗原検査が現時点での感染の有無を調べるのに対し,過去の感染の有無が分かるのが「抗体検査」だ.感染に伴って作られるたんぱく質の「抗体」が血液中に含まれているかどうかをあぶり出し,流行の実態を把握する疫学調査などに活用される.

 

 厚労省が6月上旬,東京,大阪,宮城の住民約8000人を対象に検査を行ったところ,抗体保有率は東京で0・10%,大阪で0・17%,宮城で0・03%となった.ソフトバンクグループも5~6月に社員や医療従事者ら約4万4000人を検査したが,陽性者は0・43%にとどまり,感染がそれほど広がっていない実態が浮かんだ.

 

 抗体検査は自由診療で個人的に受けることもできるが,抗体の持続期間はどの程度なのか,陽性だったとして本当に再感染しないのか,といった点はよく分かっていない.水野さんは「家族などが感染し,自分は濃厚接触者だったのにPCR検査を受けられなかったり,1月以降に症状があったりした人などが,確認のために検査するのはいいと思います.しかし,それ以外の個人が抗体検査を受ける意味はほとんどありません」と語り,こうくぎを刺す.

 

 「どんな検査であれ,不安などを理由にむやみに受けるのはナンセンスです.今後想定される第2波に限らず,インフルエンザがはやる冬には新型コロナの検査も同時に行わなければならないケースが増えるでしょう.今はPCR検査センターなどの体制を十分に整備し,各医療機関で患者さんにしっかり対応できるよう準備を進めておく必要があります.症状がない一般の人たちは,従来通りの感染予防を徹底してほしい」

 

 相手は治療薬もワクチンもない新型のウイルスである.検査体制の充実は喜ばしいが,感染しないに越したことはない.結局のところ,外出時のマスク着用や手洗いなどが何より重要であることに変わりはないのだ.【和田浩幸】

 

 

 

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国内初のワクチン治験 吉村大阪府知事「前のめりの政治主導」の危うさ

毎日新聞2020年7月4日

https://mainichi.jp/articles/20200703/k00/00m/040/136000c

 大阪大発の製薬ベンチャーアンジェス」(大阪府)などが開発を進める新型コロナウイルスのDNAワクチンの治験が6月30日,大阪市大病院で始まった.国内での新型コロナワクチンの治験は初で「来年春以降」の実用化を掲げる.一方,大阪市大の審査委員会の承認前に,大阪府知事が日程や「市大病院の医療従事者が対象」と発表.異例の展開に識者は「前のめりの政治主導」を危惧する.期待が高まる中,安全性は担保されるのか.

 

「フライング」発表に現場反発

 

 「6月30日に大阪市大でワクチンをヒトに投与する」.6月17日,定例記者会見の冒頭で大阪府の吉村洋文知事が治験の日程を明らかにした.対象は市大病院の医療従事者20~30人で,「2021年春から秋に実用化を目指したい」とその後の具体的なスケジュールにも言及した.

 

 しかし,この時点で治験を承認する市大病院の審査委員会は開催されていなかった.

知事は大阪市長と共に,市大と大阪府大を運営する公立大学法人大阪の理事長の任命や多額の運営費交付金など,大学に対して大きな影響力を持つ.市大内には「医療というより政治の話になっている」と,反発や困惑が広がった.

 

 DNAワクチンでは,ウイルスの一部の遺伝子を体内に投与し,これが抗原となって抗体が作られ,免疫を獲得する.ウイルス自体を使う「生ワクチン」や,無毒化した「不活化ワクチン」という従来の方法では,一般的に開発着手から実用化まで10年程度かかるとされるほか,ウイルスの増殖にも時間がかかる.一方,DNAワクチンは早期開発と大量生産のメリットがあるほか,安全性も高いとされており,大きな期待を集めている.海外でもジカ熱などで複数の開発が進められているが,少なくとも国内での承認例はない.

 

 今回の知事の「フライング」発言には伏線があった.4月に府,市や公立大学法人,阪大などがワクチンの早期実用化などを視野に入れた連携協定を締結して以降,吉村知事は「7月に治験,9月に実用化,年内に10万~20万人単位で(予防接種を)実施」や「オール大阪でやっていく」とテレビ番組などで繰り返した.

新型コロナで社会全体が疲弊する中,「国内初のワクチン誕生」への期待が先走った結果,安全性確認のプロセスを軽視するかのような発言が続き,治験への言及につながったと言える.

 

「医療関係者が対象」拒否できるのか

 

 6月24日の定例記者会見で,治験に関する発言を指摘された吉村知事は「(治験の)目標を発表した.最終的には市大が決める」と釈明.アンジェスも「弊社から発表したものではない」と火消しに追われた.

 

 また,大阪市松井一郎市長は「市大病院の医療関係者が治験の対象になる」と発言.記者団の質問に「協定を結ぶ時に(市大側と)そういう話し合いをしていた」「市大のドクターがやりたいと言っている」などと曖昧な説明に終始した.

こうした弁明に,市大関係者は

「協定は協力していきましょうという意思確認的な意味合い.30日からやるとか,医療従事者でやるとか一行たりとも書いていない」と強く否定し,不快感を示す.

 

 最終的にアンジェスは治験対象を市大病院の医療従事者に限定していないが,大学運営に影響力の大きい首長の言動が市大内部に与えた影響は少なくない.研究倫理に詳しい一般社団法人「科学・政策と社会研究室」の榎木英介代表理事(病理学)は「医療従事者は拒否できるのかと,一時,疑問を持った.前のめりに政治主導で決めてしまう危うさを感じる」と指摘する.

医学研究に関する国際的な倫理指針「ヘルシンキ宣言」や,1960年代に製薬会社が新薬を社員に服用させて死者も出た問題を挙げ,「新型コロナ対策のために,と手続きを飛ばすようなことが起きてはいけない.暗黙の強制や有害事象の隠蔽(いんぺい)がないことを内外に示し,安全第一で治験を進めていくべきだ」と述べた.【近藤諭,宮川佐知子】

 

動物実験,安全性データ未公表

 

 期待と不安が高まる中,開発はどこまで進んでいるのか.

 

 アンジェスは大阪大発の製薬ベンチャーで1999年の設立.今回のDNAワクチンは,森下竜一阪大教授らとの共同開発で,体内に新型コロナウイルスの一部「スパイクたんぱく質」を作る遺伝子を投与する.DNAワクチンは抗体を作る効果が小さいとされるため,「アジュバント」と呼ばれる免疫補助剤が加えられる.

 

 アンジェスによると,治験は健康な成人30人が対象で,6月25日に業者を通じて対象者の募集を始めた.低用量と高用量のワクチンを各15人,筋肉に計2回接種し,1回目の投与から8週間までを短期間の評価とし,副作用の有無や頻度,重症度などを確かめる.

 

 治験の前段階として,アンジェスは3~6月,動物実験を実施した.5月にはマウスやラットで抗体ができたと発表し,安全性についても「確かめている」とした.しかし,証明するデータは「まとめるのは時間がかかる.小出しにすると細かい指摘や問い合わせがあり,混乱を引き起こす恐れがある」(同社)との理由で公表していない.

 

「悪玉抗体」の可能性も

 

 こうした経緯について,阪大免疫学フロンティア研究センターの宮坂昌之招へい教授(免疫学)は「安全性のデータを公表しないのは問題だ」と手厳しい.宮坂氏によると,抗体ができたとしても感染を抑える「中和抗体」とは限らず,逆に症状を悪化させる「悪玉抗体」の可能性もあるという.60年代には米国で,ワクチン投与で症状が悪化して子どもが死亡する事故もあった.宮坂氏は「国内でワクチンを開発することには大きな意義がある.『ウサギとカメ』のカメでいいので,安全性をしっかり確認した上でいいものを作ってほしい」と注文する.

 

 アンジェスは,秋には次の段階として数百人規模の治験を行う予定で,「来年の春以降に国の承認を受けることが目標」とするが,有効性などを確認する最終治験の計画は現時点では未定だ.最終治験を行わず,市販後に有効性を報告する「条件付き早期承認制度」を活用して早期流通を目指すとの見方もある.治験の実施が困難,または時間がかかる場合などに認められる手法で,同社の担当者も取材に対し,同制度に言及した.

 

 水谷哲也東京農工大教授(ウイルス学)は「DNAワクチンは,30年ほど前から動物での実験が行われるなどしてきたが,これまでヒトでは実用化していない技術だ.コロナ禍であるからこそ,新しい技術が脚光を浴びて,進展することもあるだろうが,有効性や安全性,実用化に社会が耐えうるかなどを慎重に見極める必要がある」と話している.【松本光樹,渡辺諒】