一気に広がり死のリスクが--- “介護クラスター”の怖ろしさ 課題1 施設での生活は3密を避けられない. 課題2 感染予防を徹底することが困難 課題3 クラスター発生後の負の連鎖から,介護崩壊寸前の状況に.課題4 軽症の入所者は,施設で診療と介護を続けざるを得ない.課題5 情報共有ができず, “クラスター”発生で地域全体で休業連鎖が起きた例も.最終的に市内の実に9割,58の事業所が自主的に休業・縮小.NHKクローズアップ現代「“介護クラスター” 高齢者の命をどう守る?」 1

介護施設での新型コロナ感染クラスターが大きな問題となっています.

6月2日のNHK総合クローズアップ現代「“介護クラスター” 高齢者の命をどう守る?」は,その現状と今後の課題を伝える好番組でした.

 

番組のダイジェストがネット上に公開されています(“介護クラスター” 高齢者の命をどう守る? - NHK クローズアップ現代+)ので,その内容の繰り返しになりますが,以下,改めてまとめてみました.一部は番組の音声部分の転載.また一部割愛したりまとめたりしてあります.また重要な図はダイジェストで公開されたものをお借りしてあります.

 

クローズアップ現代「“介護クラスター” 高齢者の命をどう守る?」 1

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https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4423/index.html

 

武田アナ「4月に集団感染=クラスターが発生した介護施設の現在の様子です.防護服を着た介護士が高齢者のケアを続けています.

感染した47人の内,5人が死亡.再び同じ事態を起こしてはいけないと,対策を進めています」

介護士「抵抗力の弱い高齢者は死亡してしまうリスクが高い.医療現場みたいに私たちも一生懸命,入居者の命を守る」

 

映像:富山の介護施設.北海道の介護施設.いずれも防護服を着た職員が介護に当たっている.

武田アナ「全国で相次ぐ介護クラスター.その対策は第2波に備える上で,もっとも重要な課題の一つです.

先日には,北九州の介護施設で,12人の感染が確認されました.広島県のある自治体では,介護事業所のクラスター発生をきっかけに,9割もの事業所が自主的に休業・縮小.地域の高齢者に必要なサービスが届かない事態も起きました.

利用者の家族「とても心配でした.何度も転倒していたし」

 

武田アナ「介護クラスターにどう備えるのか.クラスターが発生していた施設を徹底取材.命を落とすリスクを避けるカギが見えてきました.高齢者の命を守るために,今,何をすべきか考えます」

 

 

一気に広がり死のリスクが---

“介護クラスター”の怖ろしさ

 

介護クラスターをどう防ぐか.先週,富山市にある老人保健施設で行政や感染症の専門家による検証が行われました.

最初に感染が確認されたのは4月17日.その後も感染者が相次ぎ,これまでに入所者と職員合わせて59人が感染し,9人が亡くなりました.

 

課題1 施設での生活は3密を避けられない. 特に一堂に会した食事,週2回1日数十回ののぼる入浴介護.

課題2 入所者の3分の2に認知機能の低下が見られ,マスクや手洗いなど,感染予防を徹底することが困難

課題3 クラスター発生後の負の連鎖から=介護崩壊寸前の状況に.

介護士など,職員の感染/濃厚接触者となった職員の出勤停止/感染を恐れた職員の欠勤.⇒通常20人程度のところ,3人で50人以上のケアにあたる事態に

応援に入った山城清二医師「清拭もされていない.最低限の食事と水分摂取.着替えも下着ぐらい.(介護崩壊)ギリギリのところでやっていて,一人が倒れたりなんかすると,恐らく崩壊していただろう.」

課題4 重症者以外の入院が困難で,軽症の入所者は,施設で診療と介護を続けざるを得なかった.

富山市内では,2つある感染症の指定医療機関でも感染が相次ぎ,医療崩壊のリスクが高まっていました.重症者以外は受け入れる余裕がなく,施設側も医療スタッフへの感染を避けようと,入所者全員を入院させることを断念.

応援に入った山城清二医師「認知機能が落ちている方が3分の2いて,治療以外で介護の面で手がかかると.そこの中で一番心配しているのは,院内感染等のリスクが高くなるのではないか.できる限り施設でみていこうということにしました.」

 

 

 “クラスター”発生で地域全体で休業連鎖

広島県三次(みよし)市.地域内の一つの介護事業所でのクラスター発生に起因して,デイサービスや訪問介護などを担う事業者が次々に休業・縮小に追い込まれました.

クラスター発生の中心となった介護事業所Aでデイサービスを利用していた23人が感染.感染は他の事業所にも広がっていました.利用者がデイサービスや訪問介護など,複数の事業所のサービスを利用していたからです.

最終的には,4つの事業所の利用者と職員,その家族など,合わせて39人の感染が確認されました.

影響は,クラスターと直接関わりのない事業所にも急速に広がっていきました.デイサービスや訪問介護を行う事業所です.クラスター発生のニュースを知った直後に,サービスの中止を決めました.

介護事業所 藤原愛美専務「(クラスターが発生した施設の)利用者がどこを使っているかわからない.その方が どれだけ訪問介護をどこで受けているか伏せてあるので,わからないので,ストップする以外方法がない」

四つの事業所の内,AとDは事業所名を自主的に公表したものの,BとCは非公表でした.多くの利用者が複数の事業所を利用する中,感染者がどこに行き,誰と接触したのかなどの情報は他の事業所には分からなかったのです.

行政が情報を伝えることも難しかったと言います.感染者が出た事業所に,ひぼう中傷が続いていたことが理由の一つだとしています.

三次市 福祉保健部 牧原英敏部長「個人情報のことであったり,どこまで公表していいか.そのとき,まだ明確な判断ができない状況もございまして,早い情報提供が,もっと取り組んでおけばよかったと思う」

 

課題5 情報共有の難しさ

情報が共有されない中,最終的に市内の実に9割,58の事業所が自主的に休業・縮小する“休業連鎖”が起きたのです.

この地域の介護サービスの利用者や家族の暮らしには大きな影響がでました.

ひとり暮らしで認知症の症状がある,94歳の男性です.週5日・1回1時間利用していた訪問サービスが,週2日・1回30分に縮小されました.

サービスの縮小から2週間.心配した娘が東京から駆けつけました.

「とても心配でした.何度も転倒していたし.」

しかし,このことが思わぬ事態を招きます.感染が広がっていた東京から娘が来たことで,事業所がこの家に来るリスクを感じ,サービスが完全にストップしてしまったのです.

「ものすごく拒絶されたような感じです.とってもショックでした.」

 

介護クラスターの発生をどうすれば防げるのか,スタジオでさらに掘り下げます.