タンポポ近縁の植物1
タンポポと最も近縁(亜科・連・亜連の属)で,一年に一回はスーパーの食品売り場に並ぶ植物がコオニタビラコ.
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このコオニタビラコであるというのが定説になっているからです.
「仏座はコオニタビラコ」は,牧野富太郎博士が“貝原益軒の説”に従って「特定」した後に定説に.
「(コオニタビラコは)ときどき若芽を食用とするが,春の七種の一つであるホトケノザとは本種である」
『牧野新日本植物図鑑(北隆館 1962)』/有岡利幸『春の七草(法政大学出版)』
「黄瓜菜(たびらこ) 本邦人曰、七草ノ菜ノ内、仏座是ナリ。四五月黄花開く。民俗飯に加ヘ蒸食ス。又アヘモノトス。味美シ、無毒。」
七草の仏座がどの植物種を指すのか.
シソ科のホトケノザではないことは分かっていましたが----
長らく定説はなく,多くの植物がその候補とされていました.
『救荒本草通解』(岩崎常世 1815)で春の七草の一つであるホトケノザに該当するものとしてあげている草:
ハス,オオバコ,キランソウ,チドメグサ,タビラコ,オニタビラコ,レンゲソウ,フウリンサイ,カワガラシ,コカハラケ,臭蒿(しゅうこう クソニンジン),元寶草(げんぼうそう 現在のホトケノザ/シソ科オドリコソウ属)
『春の七草(法政大学出版)』
その議論に終止符を打ったのが牧野博士の一言----
しかし,ホトケノザがタビラコ/コオニタビラコという「定説」にはかなりの無理があることも広く指摘されています.
詳しい解説は他にゆずるとして(例えば有岡利幸『春の七草(法政大学出版)』
跡見群芳譜(野草譜 はるのななくさ)),ここでは一つだけ「反証」を取り上げてみましょう.
次の二つの和歌を比べてみて下さい.
①「七草の正歌」
芹 ごぎやう なづな たびらこ 仏座 すゞな すゞしろ これぞ七草 (蔵玉和歌集 伝二条良基撰 1388年頃)
②「“現在の七草”を詠った和歌」
せり なずな ごぎょう はこべら ほとけのざ すずな すずしろ これぞななくさ (年中故事要言 蔀遊燕著 1697)
②は,現在の七草が広く認められるきっかけになったとされる和歌.しかし,”ほとけのざ”の正体は不明でした.
①の和歌は,②が生まれるきっかけとなり,有岡利幸氏は「正歌」と呼んでいます.そして,この歌には“たびらこ“と“仏座”が,共に詠み込まれています.
これからわかることは---“仏座”は”たびらこ”ではない!???
このような有力な反証があるにもかかわらず,牧野説は定説となりました.
牧野博士の偉大さを誰もが認めているためでしょう.
そして,おそらく,他の候補より,手に入りやすく美味しかったからということもあったのでは?
牧野博士は,単にタビラコとはせずにコオニタビラコとまで言い切りました.オニタビラコを「たびらこ」と呼ぶ説もあったのに--
「(柏原益軒のいう)タビラコと云うは,鬼タビラコなり」(小野蘭山)
少なくともオニタビラコよりコオニタビラコの方が美味しそうです.我が家にもオニタビラコは沢山侵入してきていますが,例え若芽でも余り食べる気にはなりません.
一方のコオニタビラコ.
有岡利幸氏の郷里では,「ひな祭りのごちそうの一つにセリとタビラコとタニシの和え物があった」そうです.全国的にも普通の山菜だったのでしょう.
なお,タンポポと最も近縁といえる亜科・連・亜連の植物で,現在でも食べられている野菜に,ホソバワダンがあります.
沖縄で“ニガナ”と呼ばれている郷土野菜.和名でニガナという別の植物があって紛らわしいのですが.
特集:おきなわ旬食材レシピ! ~旬のおきなわ県産食材を楽しもう~:1月の旬食材:ニガナ/ンジャナ(別名:ホソバワダン) - 沖縄料理レシピなら おきレシ
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