5月初旬.
太陽の日射しのもとで花を咲かせるのは,“園芸植物”だけではありません.
我が家の庭,そして道ばた,社寺の庭の片隅に.“雑草”たちも懸命に花を咲かせています.
雑草って?
連休中,友人たちとのメイルのやりとりで,タンポポが話題にのぼりました.「アメリカ人はタンポポが嫌いだ」ってホント?といったような.
やりとりの中で,雑草についてこんな説明をしました.
“アメリカ人は芝生をとても大事にするので,多くの場合,タンポポは憎むべき存在.
雑草かどうかはinvasive(侵入する)とみなすかどうかかと思います.
アメリカ人も,管理された場所に入ってきたらinvasive weed,野原に生えていたらwildfowerなどど呼んでいるのでは?”
ずっと以前,テレビ番組で,たしかターシャ・テューダーだったか?が,このような意味のことを言っていたことを思い出しつつ---
改めて,雑草がどのように説明されているかを調べてみました.
いくつかある内で,最も分かりやすいものの一つが次のような説明.少し長くなりますが---
雑草とは何か
http://lib.ruralnet.or.jp/boujo/za/za00301z.htm
雑草とかかわる人の立場によって雑草の定義は異なる.
作物生産という観点からは,作物以外に“勝手に”生えてくる植物はみな雑草とされる.
道ばたに生える植物の花を目にしたとき,散歩で通りがかった市民にとっては“野草”であろうが,路面を管理する事業者にとっては雑草である.
雑草とみなされる植物は,耕起や刈取りなど,常に何らかの人為的操作が加えられる立地で生育できる特性をいくつかそなえている.山林原野を開墾して農耕地にした場合,最初に出現する植物は原植生の雑灌木や多年生草本が多い.
その後,土壌改良を施し,耕起や施肥を繰り返すことで熟畑化が進む.そうするとしだいに原野の植物は姿を消し,一年生草本が主体の群落に推移する.この一年生草本が雑草である.
私が友人に話したことはおおよそ正しかったようですが,忘れていたのは「一年生草本」である点.
(この一年生草本は,多年生ではないという意味で,秋から春までの“二年生草本”も含まれると解釈できます.言い換えれば:「種から出芽して一年以内に枯れる草」)
しかし,特に大事なのは
「かかわる人の立場によって雑草の定義は異なる」という点.
畑・庭園など人が管理する場所で,目的とする植物以外に「勝手に生えてくる/勝手に侵入してくる」ものが“雑草”.
管理する人次第.管理する目的次第で何が雑草かは異なってくる.
言ってみれば「人間の勝手さが前面に出たとも言える」命名なんですね.
どんなに美しくても麦畑に生えてくる麦仙翁は雑草です.
先に書いた連休中のやりとりで,「庭に生えてきた草を決して抜かない」という友人がいました.
ゴルフ場の造成場面で,除草剤を一斉に撒いて芝を植える様子を見てから,タンポポ始め野草たちを大切にしているという『子供のころの体験に根差した自然派』.
「面倒くさいな」と草抜きをあまりしないものの,草ぼうぼうの庭を見て「ホントは抜いた方がいい」と思っている私とは違います.尊敬に値します.
日本に侵入した雑草
冒頭の写真の花々.勝手に生えていた「雑草」.
ところが,「雑草」と勝手に決めつけていますが.実は人間が勝手に日本へ持ち込んだ植物が大部分です.
ハルジオン(国立科学博物館 https://www.kahaku.go.jp/research/db/botany/wild_p100/spring/03_harugion.html 科学技術館メールマガジン:自然と友だち )
「1920年(大正のなかごろ)に日本にやって来た.はじめは,花がきれいなので,庭に植えられた.しかし,そのうちに,庭から逃げ出し,野生化して,帰化植物となった」
ナガミヒナゲシ(国立環境研究所 他
ナガミヒナゲシ / 国立環境研究所 侵入生物DB ナガミヒナゲシ - 外来植物図鑑 ナガミヒナゲシ )
移入元は不明ですが,原産は地中海沿岸.はじめは鑑賞用として導入されたとされています.年代は不明.
1960年に東京で確認後,「近年道路端や畑で急速に増加しており、リスク評価が必要である」とされています.
「風,動物,人間により伝播」とも「雨で濡れた車のタイヤに付いて運ばれ道路沿いに分布を広げた」とも書かれています.
カタバミは,日本原産のように思われているかもしれません.
しかし,「史前帰化植物=有史以前に稲や麦などの栽培植物とともに日本にもたらされた帰化植物 史前帰化植物 (しぜんきかしょくぶつ)とは - コトバンク 」が正解のようです.
http://had0.big.ous.ac.jp/ecologicaldic/s/sizenkikasyokubutsu.htm http://fieldsociety.la.coocan.jp/muryouju/106.pdf https://www.jstage.jst.go.jp/article/weed1962/21/2/21_2_49/_pdf
ムラサキカタバミは,「南アメリカ原産で,江戸時代に渡来し,初めは栽培されていたが,現在では関東地方以西の各地に帰化してやっかいな雑草の一つになっている」(ブリタニカ国際百科事典 ムラサキカタバミとは - コトバンク ムラサキカタバミ - 外来植物図鑑)https://www.env.go.jp/nature/intro/4document/data/sentei/plant05/mat02_3.pdf
イモカタバミ(フシネハナカタバミ)は,「日本へは戦後に渡来した. 現在では,栽培されていたものが逸出して各地で野生化し,道ばたなどに生える.イモカタバミ(フシネハナカタバミ) - みんなの花図鑑(掲載数:3,406件)」
ムラサキカタバミ(キキョウカタバミ) - みんなの花図鑑(掲載数:3,406件)
花の真ん中は淡い緑色をしている / 雄しべの葯の色が白
▽イモカタバミ
花の真ん中が濃い紫色 / 雄しべの葯の色が黄色
日本の在来種のタンポポとセイヨウタンポポは,「花の付け根が,反り返っているか?いないか?」で見分けることが出来ることはよく知られています.
Taraxacum japonicumとは - 植物図鑑 Weblio辞書 Taraxacum platycarpumとは - 薬用植物一覧 Weblio辞書
http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2018/10/14/005235
冒頭の写真のタンポポは付け根が反り返ったセイヨウタンポポでした.
セイヨウタンポポの侵入経路としては,
1.食用や飼料として意図的に導入と 2.非意図的移入(輸入物資や牧草に混入) が併記されています.
どちらもあったと考えられているようですね.
北海道では栽培種からの逸出が見られ,1904年に確認されたそうです.