「CDCっていうのは,半分軍隊のような組織」「CDCと同じものを作ることが日本の解決策とは思っていません」「必要な専門家を対策本部に動員し,一体化して対応できる体制が日本の将来の解決策なのではないか」「全ての危機は違う.感染症の流行も違う.必要な専門家も違う」「“政治家/自治体の長が専門家の意見を聞いて判断できるような体制”を今日からでも作る必要」押谷仁氏  BS1スペシャル「ウイルスVS人類~未知なる敵と闘うために~」3

BS1スペシャル「ウイルスVS人類~未知なる敵と闘うために~」3

2020年3月19日(木) 午後9時00分(50分),2020年3月28日(土) 午前0時20分(50分),2020年4月1日(水) 午後9時00分(50分)

 

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https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/2443/2416283/index.html

出演者ほか

【出演】東北大学大学院教授…押谷仁,国立環境研究所 室長…五箇公一,作家…瀬名秀明,【解説】中村幸司

 

 

人類は,どうやってパンデミックの危機と闘っていけばいいのか?

 

アメリカでは,一つの機関に権限を集中させることで,感染拡大を防ぐ対策をとっている.

CDC(Centers for Disease Control and Prevention,アメリ疾病対策センター

保険福祉省の傘下にあり,本部だけで7000人.世界62カ国に支部を持ち,一万人が働く巨大組織だ.

日本の国立感染症研究所の100倍にもなる7000億円という予算が投じられ,新たなワクチンの研究はもちろん,緊急時には司令塔として軍とも協力し,情報収集から国民への説明,検疫作業までを行う.

 

中国もCDCを持ち,トップダウン型の対策を徹底している.

人口1100万人の武漢市を完全に封鎖.人民解放軍を投入して,僅か10日間で感染症専門病院を建設.発生確認から3ヶ月.中国が報告する感染者数は激減している.

 

2003年にSARSへの対応を求められた香港やシンガポールは,感染症への対策が進んでいる.PCR検査など,ウイルスの検査態勢も整い,早期発見,早期治療が今のところ功を奏している.

 

台湾でもITを使って,マスクの在庫を見える化するなど,人々の不安を取り除く対策をとっている.

 

一方,日本にはCDCのような専門の司令塔は現在ない.

学校の休校やイベントの自粛が要請されたが,今後,誰が,どんな根拠に基づき,どういう決断を下していくのか.そのプロセスが問われている.

 

 

▽本当は,もう少しきちんとした準備をしておけば---

瀬名「日本では,今回ですね.僕なんかすごく驚いたのは,途中まで,ほとんど専門家の意見が,まあ,行政・政府の決断に反映されていなかったという,僕なんかは驚愕したわけですけども---」

押谷SARSの経験があるシンガポール,台湾,香港は,ここまでは非常にうまくやっていて,それは,やっぱり,きちんとした対応する体制ができている.

病院も,シンガポールは全ての病院でPCRができる.

日本の地方衛生研究所のネットワークというのは,非常にすぐれたネットワークなんですけれども,残念ながら,そのPCRをするキャパシティーは限られていたと.今,急速によくなっていますけれど.

日本は人口規模も違うし,難しい面が色々ありますけれども,本当は,もう少しきちんとした準備をしていれば,もう少しちゃんとこのウイルスに対処できてきた可能性はあります」

 

▽「CDCと同じものを作ることが日本の解決策とは思っていません」「必要な専門家を対策本部に動員し,一体化して対応できる体制が日本の将来の解決策なのではないか」

瀬名「一部では,日本でもアメリカのCDCのような司令塔をつく他方がいいんじゃないか,という議論も出ているようですけれども」

押谷「CDCっていうのは,半分軍隊のような組織で,CDCを作る,CDCと同じもの作ることが,日本の解決策だと,私は思っていません.

CDCのミッションというのは,アメリカを守ることです.世界を守ることではなくて,アメリカを守ることです.

そういうものを,日本は作るのか.

それを作るとすると,自衛隊に作るしかない.

だから,感染症研究所の機能というのは強化されなきゃいけないですけれども,恐らく日本がこういう問題に,将来,立ち向かっていくためにはですね,今,少しずつ出来ている,かなりの数の専門家が,今,対策本部の中に入って,感染症研究所とも協力しながらやっています.

こういう形が,感染症研究所がリーダーシップをとって,政府がリーダーシップをとって,必要な専門家をそこに動員できる,そこが一体化して対応にあたるっていうようなことが,おそらく,日本の将来の解決策なんじゃないかと」

 

▽「全ての危機は違う.感染症の流行も違う.必要な専門家も違う」「“政治家/自治体の長が専門家の意見を聞いて判断できるような体制”を今日からでも作る必要」

瀬名リスクマネージメントというものの考え方は,国によってもいろいろ違うと思うんですが,日本ならではのですね,今後の未来のあり方っていうことを,やっぱり,そろそろ真剣にちゃんと考えていかなければいけない--」

押谷感染症だけではないと思いますけど,全ての危機は違うんですね.全ての感染症の流行も違うんです.必要な専門家というのも違うんですよね.全てを感染症研究所が担うというのは,多分,難しいので,この部分ではITとかが非常に有効なところもあってですね,そういう所は ITの人たちに入ってもらう---」

五箇「分野横断というのは,よく言われるんですけど,残念ながら,日本はそういった部分に関して,歴史的にそういった体制を作るのが下手な国なんで--」

押谷「これから,恐らく日本でも非常に厳しい局面を迎えることは十分に予想されて,その時に最終判断をするのは政治家であったり,自治体の長であったりするんだと思います.

ただ,そこに,きちんと専門家の意見が反映されて,で,専門家の意見--,まあいろんな専門家の意見の中でも意見が割れています,割れることもあります.で,そういうことも含めて,きちんと判断した上で,そういう人たちが決断をできる,そういう体制を,今,今日からも作らないと,これからも誤った方向に向かってしまう可能性があるので--」

五箇「あの,ちょっと,例えもおかしいですけど,『シン・ゴジラ』なんて映画の中では,あそこで,巨災対巨大不明生物特設災害対策本部)というグループを作ったときには,鼻つまみののばっかり集めたっていうんですね.

要は,最先端いってて,ちょっとアナーキーな連中の方が,いいアイデアが出るからって,各省庁と研究者からも,もう何か,何ていうか,荒くれ者を集めてやるっていう体制をとった.それぐらいの意気込みがないと,そういったもう本当に喫緊に迫る大きなリスクには立ち向かえないだろうと」