提言を読む三つのポイント ▽「オーバーシュート」のおそれ▽地域ごとの対応▽長期戦を覚悟 「いつ爆発的な感染が起きてもおかしくない”危機意識は共有」「今回の日本全体の評価に希望の光を見出して頂きたい」 海外からの輸入例の拡大対策「運用を皆さん必死に考えて下さっています」 地域での感染状況「一番感染の状況を知っているのは現場」「リンクが追えていない感染者は,都市部に多い」 地域独自のメッセージ「ケースに応じて連絡をとりながら」 新型コロナウイルス専門家会議3/19記者会見より(2)

新型コロナウイルスの対策について話し合う政府の専門家会議が3月19日、新たな提言を取りまとめ公表しました.

 「感染拡大地域では自粛検討を」専門家会議が提言【全文】|特設サイト 新型コロナウイルス|NHK NEWS WEB

この提言を読むためのポイント(NHKニュース7)とその後の記者会見の内容を,整理して掲載します.

なお,記者会見の様子はNHKライブ配信され,TBSニュースとして現在もYouTubeで見ることができます.

https://www.youtube.com/watch?v=fsp9KdQ_588 

 

専門家会議の提言2020/3/19 ポイント

NHKニュース7によるまとめ)

 

国内の状況

“持ちこたえているが,一部で感染拡大”

⇒これまでの対策の徹底を

 =「三条件」が揃う場所を徹底して避ける

  一人一人が感染しない感染させない意識を持って社会全体で対策を続ける

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「感染拡大地域では自粛検討を」専門家会議が提言【全文】|特設サイト 新型コロナウイルス|NHK NEWS WEB

提言を読む三つのポイント

▽「オーバーシュート」のおそれ

 オーバーシュート:数値が予想された状態より大きく跳ね上がること

 例えば:感染源不明な人があちこちから見つかる/感染者の数が爆発的に増える

▽地域ごとの対応

 感染状況は地域によって異なるので,それぞれの状況に応じた対応を

 次のようなカテゴリーが考えられるので,自治体・国で現状の検討と対策を

 ・拡大傾向の地域;外出など一律自粛の必要性を検討し,独自のメッセージを)

  (現状では,感染源不明な人の増大が見られる都市部が相当すると考えられる)

 ・収束傾向の地域;リスクの低い活動の解除を検討

  (現状では,北海道,和歌山の対策が今後もうまくいけば,このカテゴリーに相当)

 ・ 未確認の地域

  (現状では,青森,鹿児島-----)

▽長期戦を覚悟

 世界の状況を見ると,数ヶ月で収束する状況ではない.

 例え,いったん収まってもぶり返す恐れがある.

 基本的な対策は変わらない.

 =「三条件」が揃う場所を徹底して避ける

  一人一人が感染しない感染させない意識を持って社会全体で対策を続ける

 

 

記者会見まとめ(2)

 

現状認識

・オーバーシュートと希望の光

尾身氏「感染拡大,オーバーシュートという話,今のところ日本はイタリアなんかに比べてあれ(感染が拡大していないん)ですけど,いつ,爆発的な感染が起きてもおかしくない”という危機意識は.全ての委員が共有していたと思います」

西浦氏今回の日本全体の評価に関して,皆さんには,希望の光を見出して頂きたいと思っています.

この感染症に関しては,一度大規模な流行が起こると目を覆いたくなるような被害規模になることが予測されます.一定の規模で医療機関があふれてしまうような状態ができかねない,ということなんですけど.

一方で,ここ最近の三月上旬に入ってからの実効再生産数(感染症の流行が進行中の集団のある時刻における、1人の感染者が生み出した二次感染者数の平均値)は,1を割っています.

中国でも知られてきたことなんですけど,この感染症は,いわゆるsocial distancing社会的隔離をすることで一定の制御ができることが,どうも確からしいということを感じる結果でした.

どういうことかというと,例えば,クラスターの,大規模なメガクラスターが発生するのを避けるために大規模イベントを自粛したり,あるいは,皆さんができるだけ閉鎖空間で接触することを避けたりとか,(?)で接触することを減らす努力を皆さんして下さってきたと思うんです.

それには皆さんいろんな影響があって,科学者の端くれとして,大変ご不便をおかけしたことをお詫びしたいと思うんですけど.

その影響で,感染者数というのに減少があるかもしれないという,こういう対策をすると減少するかもしれないことが,少しだけ希望の光として見えたかもしれないと思っています.

今後,市民の皆さんに考えてもらいたいんですね.

今,減らせる大規模イベントをやめておく,今,減らせる接触を,皆で協力して減らすということをすることで,それが,長期間流行が持続しますので,長時間それを続けれるような,持続可能なものを見つけながら,社会経済活動の機能も最低限維持できるだけの(ものを),皆で見つけると,もしかすると切り抜けられるかもしれない.

なので,今,ここで一気に堰を切って接触をするのかどうか,一度皆さんで考えてもらいたい.そういう機会があるといいなと,科学的に個人的な意見ですけども,思っています.

今このままの状態で,せっかく希望の光をが見えた所なんですけども,分析のところでお話ししましたけど,欧州とアメリカと東南アジアで流行が拡大していますから,そこから,感染者は,これまでの中国とは比べものにならないレベルで日本にやって来ます.これはどうしても止めることができませんので,このまま丸腰で受けると大規模流行が起こります.

なので,あまり残されている時間はないんですけど,今までのものをもとに皆さんで,こっから,社会経済活動をもとに戻すのかどうかっていうのは,一度,皆向き合って考えてもらいたいなと.

憂慮すべき状態です.それをもとに考えてもらいたいなと思っています

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・海外からの輸入例の拡大について

西浦氏「入国してからの健康観察に関しては厚労省の新型ウイルス対策本部の検疫官の担当の方々が,必死にどのような運用をしていくのか,単に2週間のボランタリーな行動制限をするだけではなくて,例えば,連絡先を聞いていくだとか,どのようなチェックをするのだとか,運用を皆さん必死に考えて下さっていますので,そういった報告を待って頂ければと思います.

本来的には,流行を封じ込めるという目的があったら,渡航自体が止まってしまうと,もちろん,流行は起こらなくなるわけですけど,

今は,ここの文章でも書きましたとおり,封じ込めというのを目的にしているのではありません.

パンデミックが起こっていて,邦人の人は少なくとも帰って来なければならない状況になっていますから,その状態でみんなでできることを模索していかなくてはいけないというのが,私たちが直視しなくてはいけない現実です

 

 

大規模イベント/ 専門家会議内での意見の相違について

尾身氏「それで,多少に見方が違ったという所は,サイエンティフィックなコミティーとしては健全だと思いますけど,具体的に言えば今の大規模イベント,一部の人は,大規模イベントを今まで通りこのまましばらく,休止したほうがいいのではないかという意見もございました」

「(大規模イベントについては)厳しいクライテリアをつけて頂いて,そういうことを十分理解して頂いて,判断をどちらかして頂きたい.というのが今回の,あれ(統一見解)ですね」

西浦氏接触に関しては,避けて頂くに越したことはないんですけど,こと,大規模イベントの開催に関しては,尾身先生からも少し触れられたとおり,専門家間で意見が分かれました.

これ以上,これはダメですというお話ばかりしているばかりでは,皆さんの行動も伴わないし,我慢をすることも限界に近づいている部分も否定できない部分がある.

ということで,一定の,開催できるものは開催すればいいという意見はありましたし,

私個人としては,今,大規模イベントを開催してメガクラスターができてしまうと,一瞬にして今までの努力が水泡に帰してしまうという,その意見の隔たりというのは一定の規模があって,その中で皆さんで合意するプロセスを経てえられたというものが今日の提言です」

尾身氏「確認されていない地域でのイベントには,大規模イベントは含まれません.大規模イベントは特別で,いろんな所から来るし,不特定多数がいるし,起きたときのインパクトが---学校とは違いますよ」

 

 

三つのカテゴリー

尾身氏「地域を三つに分けたけど,なぜ,どの地域がどのカテゴリーかと言わないのかという話ですけど,我々の今回の提言の目的は--- 政府,自治体,あるいは国民の皆様に対し,一番最悪のオーバーシュートを防ぐという意味で大きな考え方を示すのが我々の目的(であるため).

と同時に,実は,隠そうとするとか言うことではなく,例えば,厚労省が持っているデータというのは,地元から来るんですよ.厚労省が天からもらってくるデータなんてないんで,全て現場の方から(来る).そういう意味では,一番感染の状況を知っているのは現場なんですよね.クラスタサーベイランスも現場でやってますから.

そういうことで,何故名前をいちいち出さないのかというのは,別に,意図的に隠そうとか,そんなことではなく,今回の我々の提言の目的は,こういう考え方で,一番レベルの高いところは,北海道のように非常事態宣言も出す.ああいうことで,今までより強い対応を,感染の認められない所は,---.

そういうことを示しただけで,各県の名前を隠したいとかいうことは全くないんで,考え方を示したと言うこと.その辺は理解して頂けますね」

 

地域での感染状況が確認/大都市圏でのリスク

脇田隆宇氏「えと,今,現状をかなり解析をして,明らかになってきた部分があって,こういった判断になっているということですから,まあ,それぞれの地域でどのような感染状況にあるのか,ということをお知らせするのは,さきほど西浦教授が言われたような方法がありうると思ってますけど,やはり厚生労働省自治体の情報の共有ですか,そういったものを通して,地域での流行状況を確認して頂くと,ことによって多分,地域の状況というのは確認できると,こういうふうに思ってます」

西浦氏「リンクが追えていない感染者の方っていうのは,都市部に多いです.

これ以外にも分析をすすめているんですけど,これらの感染者の実数が多いところが,大規模流行のリスクの高いところで,もし大規模流行が最初に起こるとすると,こういった大都市圏で最初に起こる可能性が高いというところで憂慮しているところで,見ている,監視している」

 

拡大傾向にある地域独自のメッセージ

尾身氏「(独自のメッセージが)北海道みたいなものかということでしたら,おっしゃるとおり」

西浦氏「(北海道の非常事態宣言について)宣言は北海道知事の決断でやって頂きました.程なくしたところで,専門家の意見を聞いて頂く機会を設けて頂いて,特に外出自粛に関しては明確なコミュニケーションをすることができました.

例えば,外出自粛っていうのをしたわけなんですけど,全て皆さんが一律に自粛をしても,屋内で何らかの接触の機会があってはいけないわけですから,自粛の間に複数のお友達と集まってはダメなんですよとか,そういう時は,食事会の機会ではないんですよとしっかり分かってもらうことだったり,もっと明確に屋外の話をさせて頂きましたけど,オープンエアで散歩をして頂くのは全く大丈夫なんです,お買い物も気をつけて行って頂けば大丈夫です,というような話が少しずつ通じていくというプロセスができたんです.

今までは,何らかの法律に基づいてやっているわけではなくて,一定のアドバイスを自主的に差し上げて,それに対してコミュニケーションが進むというプロセスで,とっても健康的にやらせて頂くことができたので,北海道庁の皆さんと北海道知事には大変感謝していますが,それは,北海道モデルと言うことで,緊急事態宣言の期間というのを終了して頂いたということなんですけども.

今後に関しては,個々のケースに応じて地方公共団体と連絡をとりながらやっていく.決まった形態,こういうことでやるっていう(のではなくて),個別の事例になると思う.固まめて何かがあるというわけではないです

 

 

 (続く)