コロナと不寛容 前川喜平
東京新聞 本音のコラム 2020年3月15日
新型コロナウィルスの拡大に伴い社会全体に不寛容が広がっている.
十三日の本紙「発言」欄に中学生の投書が載っていた.
花粉症の彼女はバスに乗るとくしゃみが出る.マスクをし,手で押さえていたが,高齢男性に「コロナじゃないの?次のバス停は病院だから降りろ」と言われた.
東京の私立学校の先生から私にメールが届いた.
国の指導どおり休校にしなかったため,心ない批判がSNS上で多発.
制服で電車通学する生徒が「他の乗客の視線が痛い」と漏らした.
認定NPO法人フローレンスが行った緊急アンケートに届いた声.
子どもと連れてスーパーに行ったら「子どもは出歩くなって言われてるでしょ!」と怒鳴られた.
子どもだけで出歩いたら教育委員会に通報され,子どもがまるで病原菌のように扱われる.
子どもがゴミを出しただけ,バットの素振りをしただけで,知らないおじさんに「なんで外にいるんだ」と怒鳴られた.
近所からの苦情を学校が鵜呑みにし,教員が近所を見回って帰宅を促している.
不寛容は恐怖から生じる.恐怖は不安から生じる.不安は無知から生じる.
不寛容を払拭するのは,科学的根拠に基づく正確な情報を,わかりやすく人々に伝えることが必要だ.
科学的根拠のない独断的な対策の乱発は,不寛容を増幅させるだけである.
(現代教育行政研究会代表)
新型コロナ なぜ一斉休校しないのか? 英国の首席科学顧問がお答えします イランでは長さ90mの墓穴(木村正人) - 個人 - Yahoo!ニュース
パトリック・ヴァランス英国政府首席科学顧問
「休校の効果はあるものの最小限です.効果を上げるのは13~16週間以上の休校が必要になります.しかし子供に友達と会ってもダメ,おしゃべりしてもダメと言っても実行できる可能性はゼロであることぐらい最先端の数学者でなくても分かるでしょう」
ジョンソン英国首相
「一斉休校は効果より害の方が大きい」と説明.
(状況が変わって特別なアドバイスがあれば休校するという選択肢は残している)
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http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/03/01/122816
WHO=世界保健機関などの専門家チームが行った共同調査の報告書より
(2月20日までに中国で感染が確認された5万5924人のデータについて分析)
☆子ども
症状は比較的軽い,重症化する人はごくわずか
感染例は少ない:19歳未満の感染者は全体の2.4%
・その多くは家庭内での濃厚接触者を調べる過程で見つかった
・子どもから大人に感染したと話す人はいなかった (聞き取りを行った範囲で)
・現在のところ,“子どもが罹患しにくい”とは言い切れない.
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http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/03/02/000500
朝日新聞デジタル 2020年2月28日 7時00分
岡部信彦・川崎市健康安全研究所長
「専門家会議でも休校は諮問されず,提言もしていない」
「全国一律の休校が効果的であるとするには科学的根拠は乏しい」
「新型コロナウイルスに限って全国休校という大きな措置をとることはそれによるマイナスの負荷が大きい」
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http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/03/03/000500
毎日新聞2020年2月29日 18時28分(最終更新 3月1日 00時18分)
“小児の発症,重症化が少ない中で,学校だけ休むのは合理的ではありません.小児患者が発生している北海道は理解できなくもありませんが.
休校を正当化するならば,その方策がもたらすゴールをはっきりさせる必要があります.
休校で感染をゼロにするとか,1日何人まで減らすとか.そういう目標設定がちゃんとあり,その背後に根拠があれば,事後的に政策の成否が分かります.
それなしに,ただ「やる」と言われても,その成否は事後的に判然としません.クルーズ船のときと同じ,「みんながんばったね」が残るだけです.
ゴールが見えず,ただ場当たり的に政治的判断がなされており,「科学よりも政治」という,またしても悪い前例となってしまいました.”
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http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/03/04/000929
東京新聞2020年(令和2年)3月3日(火曜日)夕刊D版
全国障害者問題研究会
「全国一律の休校要請は,科学的根拠と十分な検討のない施策」「障害のある子と家族に深刻な問題をもたらす」
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http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/03/06/020644
東京新聞 2020年3月5日 夕刊
イタリア政府関係者
「科学的な根拠がないことは明白」「政治的には,できることは何でもしなければならない」
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http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/03/08/000500
毎日新聞 2020年3月7日 東京朝刊
青野由利
「09年の新型インフルエンザ.実はスペイン風邪のウイルスだった」「50代より上の人にはある程度免疫があった.一方,若い世代には免疫がなかったので,学校で集団感染が起きた. これを一斉休校で抑えこむことで,最初の流行を一旦終息させることができた」
「今回の新型コロナはどうなのか.どの世代にとっても未経験のウイルスなので誰にも免疫がない. 学校で集団感染が起きている様子も今のところない. それを思うと09年の一斉休校の「成功」がそのままあてはまるとは思えない.」