“三浦祐介訳・注釈 口語訳古事記[完全版]文藝春秋” をテキストとした “植物をたどって古事記を読む”シリーズ.
今日とりあげるのは
カヤ 萱
日本国語大辞典によれば,カヤはススキの意味で用いられることもあるものの,もともとは.“屋根を葺くのに用いるイネ科,カヤツリグサ科の大形草本の総称”.
古事記はこのカヤが初めて記された書物.したがって,「総称」として用いられていることになります.もちろん実際にはススキ出会った可能性も大ですが----
かや【茅・萱】 日本国語大辞典
①屋根を葺くのに用いるイネ科,カヤツリグサ科の大形草本の総称.主としてススキ,チガヤ,スゲなどが用いられる.
②すすき(薄)の異名
ススキとは - 育て方図鑑 森林総合研究所/チガヤ カサスゲ
古事記でカヤが登場するのは,前回とりあげたタケと同じく,神代編・其の六;ホヲリ(アマツヒコヒコホホデミ・ヤマサチビコ)とホデリ(ウミサチビコ)の物語.
兄ホデリの釣り針を探してワタツミの宮に来たホヲリ.
ワタツミの娘トヨタマビメを妻として三年もの間その国に住みついてしまいます.
ワタツミの宮に来たわけを思い出し,釣り針を探し当てて,ワニ(フカ/サメ)に送られて上の国に戻ったホヲリ.
ワタツミは,釣り針の返し方,その後の行動について知恵を授けますが,その教えに従ったところ,ホデリは「夜も昼も守り人となってお仕えいたそう」と謝ります.
そして,葦原の中つ国を支配することになったホヲリの元にやって来たトヨタマビメ.
既に身ごもっていると告げます,
神代編 其の六
さてある時,ワタツミの娘のトヨタマビメがひとりでホヲリのもとにやってきての,
「わたしは,すでに身ごもっておりましたが,今まさに,子が生まれる時になりました.これを考えますに,天つ神の御子は,海原で生むことなどできません.それで,はるばると上の国に出て参りました」と,こう申し上げたのじゃった.
そこですぐさま,海辺の渚に鵜の羽根を萱(かや)の替わりに屋根と壁とに葺いて,産屋(うぶや)をつくったのじゃ.ところが,その産殿(うぶどの)がまだできあがらないうちに,トヨタマビメの腹があわただしくなってきての,耐えられぬほどになってしもうたのじゃ.それでトヨタマビメは,まだ出来あがらぬ前に産殿に入ってしもうた.