新型ウィルス ▽感染経路分からない患者の発症⇒他でも患者が発生している可能性 ▽症状の特徴は徐々に明らかになってきている.▽もしかしたら---?と思ったら⇒最初は“電話相談窓口”や“かかりつけの医療窓口”に電話相談.▽SARSと違って,非常に封じ込めが難しい.⇒感染拡大のスピードを抑える&重症者を救命.「3週間で軽い症状の人まで含めると,患者の数はおよそ300倍.その後3ヶ月程度増え続ける可能性も」「現在はみなさんが不安になる必要はないという状況」 NHK首都圏情報 ネタドリ! 

首都圏情報 ネタドリ!「感染拡大にどう向き合う 緊急報告 新型ウイルス肺炎」

2月14日金曜

NHK総合1 午後7時30分~ 午後7時57分

13日,神奈川県に住む女性が新型コロナウイルスに感染した人では国内で初めて死亡した.新型ウイルス認定から1か月.国内でも経路がはっきりしない感染が相次いでいる.こうした事態に,専門家は国内にも既に相当数の感染者がいると指摘する.新たな感染のフェーズに入ったとされる新型ウイルス肺炎.感染の拡大に私たちはどう向き合えばよいのか.視聴者の不安と疑問に生放送で答える.

【ゲスト】鈴木あきえ東北大学大学院教授…押谷仁,【キャスター】高橋みなみ松田利仁亜

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首都圏情報 ネタドリ! - NHK

抜粋

 

新たな感染者とその問題点

高橋みなみ「ニュースを見るたびに新しい情報が入ってくるので,どうしたら良いのか難しいですね」

松田「昨日(2月13日)国内で感染した人では初めて死亡が確認されました」

 

▽神奈川県の80代の女性 1月22日倦怠感/2月1日肺炎/2月13日死亡(死後感染確認)

▽都内に住む義理の息子(タクシー運転手) 1月18日,屋形船で開かれた新年会に参加.発熱した人,湖北省からの旅行者と接触した人も参加/2月3日肺炎診断/2月13日ウィルス感染確認 

▽東京都:屋形船の従業員の方,タクシー組合支部の方も感染していると公表

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▽千葉県会社員(20代) 最近の渡航歴なし2月2日発熱 千葉県内三つの医療機関を相次いで受診(2/3,2/5,2/6)/ 2月10日 別の病院に入院(肺炎)/ 2月13日ウィルス感染確認

⇒現段階で感染経路分からず.

他でも患者が発生している可能性がある東京医大濱田教授)

 

 

2月14日現在

クルーズ船乗員・乗客218人,チャーター機12人を含め250人余りの感染が確認されている.

「初期症状は体のだるさが中心で感染を疑いにくい」という問題がある.

 

東北大学大学院 押谷 仁 教授(WHOでSARSの封じ込めを指揮)

「昨日から今日にかけて見つかっているよりも以前のケースは,全てが中国からの渡航者か,もしくは渡航者におそらく接触していた人と言えていたんですけど,昨日から今日にかけて見えてきている感染者は,必ずしもそうではない.

そうなると,その感染源をおっかけていかなくてはいけないのですけれど,今の千葉の男性のように,もし感染源が見つからない人がいると,その周りにはかなりの感染者がいる可能性がある

 「その間に軽症の人が入ったりすると,(感染源を)追いかけていくのは非常に難しくなります.タクシーの運転手の屋形船という話が出てきましたけれど,1月の18日なんですよね.そうすると,もう一ヶ月近く前のことになりますので,そうすると,あれはもしかすると感染源が特定できる例かもしれないんですけど,あそこで感染した人たちが,周りにもっと広げている可能性があるので,それはあまりいい兆候ではない」

 

 

症状の特徴は徐々に明らかになってきている.

 国立国際医療センターで患者の治療を行っている忽那(くつな)賢志(さとし)医師へのインタビュー(2月5日)から

忽那医師「ひどい人でも酸素を少し吸うぐらいの肺炎ですね.思った以上に軽いという印象を今は持っています」

(⇒新型ウイルス 患者治療の医師「肺炎症状出た高齢者 悪化早い」

特設サイト 新型ウイルス肺炎|NHK NEWS WEB

http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/02/20/225608 )

 

 

忽那医師の診察から見えてきている“多くの患者がたどる経過”

・新型コロナウィルスは上気道から肺にかけて増殖

・最初に現れる症状:  鼻水・のどの炎症,体のだるさ

・その後: 発熱

 症状は比較的軽いものの,一週間以上続く

 一部の人では肺炎が見られる

 重症化していく多くは,高齢で糖尿病や高血圧などの持病があるケース.

(「大体4日目5日目位から,肺炎の症状が強くなると.7日目位からあっという間に呼吸状態が悪くなって,人工呼吸器を使わないといけないような病態になる」

特設サイト 新型ウイルス肺炎|NHK NEWS WEB

http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/02/20/225608 )

 

那医師「やっぱり持病のある方とか高齢者の方ですね.おそらく妊婦さんとかも,インフルエンザとかでは重症化しやすいので,そういう方々がかからないような対策をしっかり準備することが,これからは大事になるかと思います」

 

若くて健康な人でも,“サイトカインストーム”が起きて重症化する可能性がある.

東京大学医科学研究所一戸猛志准教授

「現在では,高齢者が死亡リスクが高いといわれていますけれど,若い人でもサイトカインストームが引き起こされて死亡するリスクがあるのではないかと考えられるので,十分な注意が必要」

起きる頻度は高くないという研究報告もあるが,SARSでも起きていたので注意深く見ていく必要がある. 

サイトカインストーム

感染症や薬剤投与などの原因により,血中サイトカイン(IL-1,IL-6,TNF-αなど)の異常上昇が起こり,その作用が全身に及ぶ結果,好中球の活性化,血液凝固機構活性化,血管拡張などを介して,ショック・播種性血管内凝固症候群(DIC)・多臓器不全にまで進行する.この状態をサイトカインストーム(cytokine storm)という. 実験医学増刊 Vol.31 No.12

サイトカインストーム:バイオキーワード集|実験医学online:羊土社

 

子どもはかかりにくい?

押谷 仁 教授「2003年にあったSARSでは,子どもの感染は比較的少なかったんですよね.

今回のやつは,これだけ広汎に広がったときに,どこまで子どもに感染するのか,そのあたりの詳しいデータは中国からも出てきていないで,どれくらい感染するかは分からない.(⇒**)

それは(SARSの場合は?)感染機会が少なかっただけかもしれないので,その辺は注意して見ていく必要があると思います」

 

 

新型コロナウィルス=肺炎というイメージについて

科学文化部出口記者「感染すると全員が肺炎になるということではない.一方で注意しないといけない人は,高血圧・糖尿病・心疾患・免疫低下した人は注意」

押谷教授

おそらく大多数の人にとっては,インフルエンザとそれほど大きく変わらないと思います.

けれど,

一部の人たちは確実に重症化している

重症化するとほとんどSARSと変わらない.

SARSはほとんどに人が重症化したんですけれども— 

 

季節性インフルエンザと一緒ということではなくて,

—季節性インフルエンザで多くの高齢者が亡くなりますけど,ほとんどの場合は寝たきりとか,いろんな持病がある方がなくなっています— 

今回の新型ウィルスは,50代60代でもかなり亡くなっていますし,30代40代での死亡というのもある

今回のウィルスは季節性インフルエンザと違って,直接ウィルスが肺の中に入って,ウィルス性肺炎という,非常にやっかいな病気を起こすので,そういうことを起こすと日本でも救命することが困難な例が今後増えてくる可能性がある.

決して侮ってはいけないウィルスだというふうに思います

 

 

もしかしたら感染した?と思ったら

科学文化部出口記者より

▽感染を広げる可能性がある.

   重傷者への適切な治療が行われなくなるおそれ.

   直接医療機関を訪れることはしない

 

“電話相談窓口”や“かかりつけの医療窓口”に電話して対応を相談してほしい”

 厚生労働省 0120-565653(午前9時〜午後9時)

 東京都 03-5320-4509(午前9時〜午後9時)

 神奈川県 045-285-0536(午前9時〜午後9時)

 

 

症状が出たら気をつけることは?

まず,コールセンター ですが---)

押谷教授

▽軽症の人に対して,病院でできることはほとんどない

「普通のインフルエンザとは違って,皆さんが医療機関に行っても,軽症の人に対しては,ほとんどすることがない.現状では.

 季節性のインフルエンザですと,皆さん,鼻から綿棒入れて,迅速診断キットというのがあって,インフルエンザかどうか調べられるんですけど.現状では,この新型ウィルスを診断する能力は限られているので,重症者にしか検査できない.

 しかも,インフルエンザであれば,抗インフルエンザ薬というのがあって,それを投与することができるんですけど,現状では(新型ウィルスに対する)薬はありません.

心配してお医者さんに行くということで,もしかするとそれはインフルエンザかもしれないですよね.

 病院に行って感染してしまうようなこともあり得るので,軽症の人にとっては,病院に行っても,現状ではすることがないので,そこは冷静に考えなければいけない.

自宅で,外の人にうつさないということを徹底するということの方が,今は大事.

 

▽重症化する可能性が高い方々

「咳が長引いたりして重症化する可能性がある人たちは,できるだけ早く病院に行く必要がある.

その辺の見極めをきちんとする必要があります」

 

 

病院へ行く見極め

キャスター

「症状もなく漠然とした不安では,電話応対する方々の負担を増してしまう怖れも---」

 

押谷教授

「一週間ぐらい風邪の症状があって,急激に悪くなる人がいると報告されてますので,咳が長く続いてひどくなるとか---

 そのあたりの詳しい情報は,おそらく厚生労働省あたりから出て来ると思いますけれど,

  ⇒*最下欄に相談する目安

    (厚生労働省取りまとめ 2月17日)

そういったものを参考にしながら,どういう症状があったら医療機関に行かなくてはいけないのか,を考えていただきたいと思います」

医療機関を混乱させてはいけない---.

今,医療機関がやらなくてはいけないことは,いかに重症者を救命するかということ.特に大きな病院は,そこに集中してもらわなくてはいけない

一般の国民の方々にも理解していただいて,むやみやたらに医療機関を受診することはないように.

 今,広がりつつある状況なので,今,どれ位の感染者がいるか(正確には)分かりませんが

 現在は,

 国民全体から見ると,感染している人の数は非常に少ない状況.

 従って,“みなさんが不安になる必要がないという状況”ではある

と思います

 

 

今後どんな対策が求められていく?

押谷教授

「このウィルスはSARSと違って,非常に封じ込めが難しい.

SARSの場合はほとんどの感染者が重症化し,典型的なウイルス肺炎を発症したので発症者のほとんどを見つけることができた.

今回のウイルスでは軽症者や無症候性感染者がかなりの割合でいると考えられ,感染者を徹底的に見つけることができない.

さらに,そのような軽症者や無症候性感染者が周囲に感染を広げる感染性を持っている可能性も否定できない

新型コロナウイルスに我々はどう対峙すべきなのか(押谷仁教授メッセージ) | 特集・インタビュー|東北大学大学院医学系研究科・医学部 

 

▽感染スピードを抑える

いったんこういう状況になってしまうと,この感染の拡大を完全に止めることはなかなか難しいと考えられるんですけども,感染拡大のスピードをある程度抑えることはできるはず.

皆さんがいろんなことに気をつけるということで,感染拡大のスピードをある程度抑えられると思います.

今,横浜港のクルーズ船とかでやってること,武漢が閉鎖されたということは,どっちかといえば19世紀に考えられてたことのような対策で,今,我々21世紀に生きてるので,もう少しスマートに,どういうことができるのか,例えば,東京オリンピックに向けていろんな会社で,在宅勤務とかいうことが考えられていて,そういうことをできるだけ早くやっていくと.今,どこに感染者がいるか分からない状況なので,このウィルスに先回りして,なるべく早く,そういう対策をしていく.

▽高齢者・基礎疾患のある方に感染を広げない

高齢者とか基礎疾患のある人たちに,いかに感染を広げないか.そのためには,例えば宅急便のシステムを使って,そういう人たちに処方箋のある薬を届けるとか,そういうことも考えられるので,いろんな工夫をしながら,先回りして感染の拡大を防いでいくことが必要だと思います」

 

 

想定されるシナリオ

北海道大学西浦浩教授は日本と中国での患者のデータを元に,今後の患者数をシミュレーションしました.

西浦浩教授「日本の流行曲線というのを仮想的に描いてシナリオを構築しています」

感染経路がたどれない患者が次々と出てきた場合,感染が劇的に広がる可能性を指摘します.

 

感染経路がたどれない患者が次々と出てきた場合の試算

▽3週間で,軽い症状の人まで含めると,患者の数はおよそ300倍.

▽その後,3ヶ月程度増え続ける

(現在の医療体制では対応が困難になるかもしれない)

 

しかし,

初期の段階で,感染のスピードを半分以下に抑えることができれば,

▽ピークを遅らせ,更にピーク時の患者数を三分の一にできる可能性があります.

そうすれば,現在の医療体制でも十分対応できるだろう.

 

西浦浩教授

「基礎疾患を持つ高齢者の人たちが重症化するのを防ぐために,

社会的対応による予防策

重症化したときの医療の対応,

その両側面で何ができるかというのを,具体的に練っていく必要がある」

 

押谷教授

感染している人が外の人に広げないというのが大事で,感染している人が手を洗うというのも大事だと思います.

ただ,手を洗ったからといって,感染が完全に防げるわけではないので--.検疫官の人がかかったという話しがありましたけど,ああいうプロの人,かなり緊張感持ってやってた人でもかかると.そういうものだということで,何をすれば絶対かからないというのはなかなか言えないところがある.

いろんな工夫をしながら,どうやって感染拡大のスピードを抑えていくのか,同時に医療機関ではいかに重症者を救命していくのかと,そういうことが求められているんだと思います」

 

感染スピードを抑えるには

・個人としてできることは徹底する:手洗い・咳エチケット

・今後は---出社制限,在宅勤務等を含め,感染する機会を減らす対策を社会全体で行う.

 

 

ワクチンは?

アメリカでは3−4ヶ月の間に臨床試験の見通し

・WHO見解:およそ一年半後.

 

 

鈴木あきえ「風邪かなっていう初期症状ということですけど,それですぐには病院に行かない.不安だったらコールセンターにする.1回ワンクッション入れて,自分で冷静にさせるっていうことも大事だなって思いましたね」

 

高橋みなみ「刻一刻,状況が変わっているので,今後は,正しい情報を持って対処して冷静にというのがとても大事なのかなって思いました」

 

 

www3.nhk.or.jp特設サイト 新型ウイルス肺炎|NHK NEWS WEB

新型コロナウイルスへの感染が拡大する中、15日に国内で新たに日本人12人の感染が確認されました。

厚生労働省などによりますと、新たに感染が確認されたのは、いずれも日本人で、
▽東京の40代から80代の男性6人と、50代と60代の女性2人
▽和歌山の50代と60代の男性2人と、50代の女性1人
▽愛知の60代の女性の合わせて12人です。

 

 

⇒*

 相談・受診の目安は?|特設サイト 新型ウイルス肺炎|NHK NEWS WEB

相談する目安

    かぜの症状や37度5分以上の発熱が4日以上続いている人

    解熱剤を飲み続けなければならない人

    強いだるさや息苦しさがある人

 

このような症状がある人は、全国の都道府県にある「帰国者・接触者相談センター」に相談するよう呼びかけています。

全国の「帰国者・接触者相談センター」 厚生労働省HP

 

早めの相談が必要な人は 

次の人たちは、重症化しやすいため、目安として示した症状が2日程度続く場合、「帰国者・接触者相談センター」に相談するよう呼びかけています。

 

    高齢者

    糖尿病、心不全、呼吸器疾患の基礎疾患がある人

    透析を受けている人

    免疫抑制剤抗がん剤を使用している人

    妊婦については念のため重症化しやすい人と同様に早めに相談を

 

⇒**

新型コロナウィルス 

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200229/k10012308111000.html

http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/03/01/122816

レポート本文 Report of the WHO-China Joint Mission on Coronavirus Disease 2019 (COVID-19)16-24 February 2020 https://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/who-china-joint-mission-on-covid-19-final-report.pdf

 

WHO=世界保健機関などの専門家チームが行った共同調査の報告書より

(2月20日までに中国で感染が確認された5万5924人のデータについて分析)

 

症状

▽感染すると平均で5日から6日後に症状が出る

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▽感染者のおよそ80%は症状が比較的軽く,肺炎の症状がみられない場合も

▽重症患者

 ☆呼吸困難などを伴う重症患者は全体の13.8%,

 ☆呼吸器の不全や敗血症,多臓器不全など命に関わる重篤な症状の患者は6.1%

 

年齢によるリスクの相違

 ☆60歳を超えた人のリスクは高い

 ☆高血圧,糖尿病,循環器,慢性の呼吸器の病気,がんなど

  持病を持った人⇒重症や死亡のリスクが高い

 ☆子ども

  症状は比較的軽い,重症化する人はごくわずか

  感染例は少ない:19歳未満の感染者は全体の2.4%

  ・その多くは家庭内での濃厚接触者を調べる過程で見つかった

  ・子どもから大人に感染したと話す人はいなかった    (聞き取りを行った範囲で)

  ・子どもがかかりにくいとは断定できない.

 

致死率

▽全体 3.8%

(5万5924人の感染者のうち死亡したのは2114人)

  湖北省武漢 5.8%

 その他の地域 0.7%

 

 1月1日から10日までに発病した患者の致死率 17.3%

 2月1日以降に発病した患者の致死率は0.7% 

  (感染拡大に伴って医療水準が向上した結果)

 

▽致死率は高齢になるほど高い:80歳を超えた感染者

 致死率は21.9%(5人に1人)

▽高血圧,糖尿病,循環器,慢性の呼吸器の病気,がんなど持病を持った感染者の致死率は高い

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