相模原市の障害者入所施設で19人が殺害される事件が起きた.3年がたち,障害のある人は事件をどう思っているのか? 重傷を負った尾野一矢さん.ある決断を迫られている.「施設に戻ることは考えていない?」「ないです.ぜひ,一矢にも健常の人と同じようなね,暮らすことをさせてあげたいな」ここへは戻らないことにした尾野さん.実は2年前に取材したときには,全く逆の考えだった.NHKEテレ/バリバラ 障害者殺傷事件3年 まちで暮らす1 + NHK首都圏ネットワーク「やまゆり園」運営法人見直しへ

「バリバラ」バリアフリーバラエティ 始まるよ.

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NHK バリバラ | 番組紹介

 

障害者殺傷事件3年 まちで暮らす1

アンコール

初回放送 2019年7月25日(木)夜8:00

再放送 2019年7月28日(日)0:00(土曜深夜)

アンコール 2019年12月5日(木)夜8:00

アンコール再放送 2019年12月8日(日)0:00(土曜深夜)



今から3年前(2016年7月26日),相模原市の障害者入所施設で,19人が殺害される事件が起きた.

「障害者は不幸しか生まない」

元職員の男の言葉が,衝撃を与えた.

障害のある人は,事件をどう思っているのか?「バリバラ」は取材をしてきた.

被害者の一人,尾野一矢さん.首や腹を刺され,重傷を負った.

一矢さん「こわい」「うん,そうだね」

今は,仮の施設で,元気に暮らす一矢さん.事件から3年がたち,ある決断を迫られているという.

尾野剛志さん(一矢さんの父)「いただいた県からの資料があるんですけど--」

新しく建て替えることになった施設.

(映像 県のパンフレット 

 「施設規模は千木良66人,芹が谷66人とする」.

 「利用者の選択の傾向 千木良----芹が谷----GH他施設等(割合としては非常に少ない」

 

入所していた人たちは,そこに戻るかどうか,決めている最中だというのだ.

スタッフ「一矢さんは?」

剛志さん「このグループホーム(GH)他,ということですね」

スタッフ「施設に戻ることは考えていない?」

剛志さん「ないです.ぜひ,一矢にも健常の人と同じようなね,暮らすことをさせてあげたいな」

 

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http://www6.nhk.or.jp/baribara/lineup/single.html?i=1109

 

事件を機に,施設で集団生活を送る知的障害者の存在に注目が集まった.

誰もが,まちで当たり前に暮らしていくために,何が必要か?考える.

 

山本シュウ(番組MC/おせっかい運動推進中・ラジオDJ)「はい,相模原事件ね.記憶にありますか?もうね.障害者施設で起きた殺傷事件,あれから3年がたちます.あずみんなんかどうですか?」

東佳美(自立生活支援センター職員)「世間の人たちが,事件を起こした人の考えと同じっていう,ネットとかでいろいろ出てましたけど,それを受けて,私なんかは,外に出るのがすごい怖いなって思いました

山本シュウ「『みんなそう思てんのちゃうか』みたいな?」

東佳美「道行く人が,みんな,こう,障害者を見て,『あの人も同じことを考えてんちゃうか』『もう障害者なんていらん』『もう不幸しか生まへん』って,3年たつ今でも,根本的にはあんまり変わってないんやろなって思います」

 

大西瞳(番組MC/義足のパラリンンピアン)「番組にもですね.いくつかメールがよせられたんですけど,その内の一つをご紹介します.

『この事件や障害者の強制不妊手術の裁判で,“障害者にだって人権はある”という考えが世間に広まってきたと思ったら,川崎の無差別殺傷事件.

“犯人は精神障害者に違いない” “発達障害だったからでは” こんな声がネットに出回っています』(たうりんさん/統合失調症自閉症スペクトラム

 

玉木幸典(バリバラご意見番/障害者相談支援専門員)「障害のある人と一緒に暮らしていないから,誤解や偏見を生んでしまうから,『こわい』と思ってしまう気持ちも分からんこともない.

ただ,分からんからといって,横に置いといていいのかっていうと,そうではない.

そこをちょっと今日は,みんなで考えていけたらいいかなって思うな」

 

(映像 津久井やまゆり園 神奈川県相模原市

今年6月の津久井やまゆり園.

事件が起きた建物は壊され,同じ場所に新しく建て替える工事が始まろうとしていた.

 

ここへは戻らないことにした尾野一矢さん.

実は2年前に取材したときには,全く逆の考えだった.

 

2年前

父・尾野剛志さん「とにかく一度(もとに施設に)返して下さい.一矢が命をまっとうするまで,苦労なく暮らしてくれることが一番だから」

 

津久井やまゆり園は,重度障害者の保護を求める親たちの声の中で生まれた.(1964年創設)

3年前の事件の後も,神奈川県は家族などが望んでいるとして,立て替えを表明.

これに対し,障害者団体などは,「地域での暮らしに力を入れるべき」と反発した.

 

その中でも,施設にこだわった尾野さん.ある理由があった.

10歳をすぎると,大声や自傷など行動障害がひどくなり,近所から苦情も.(12歳の時)リハビリ施設に入所させることになった.

尾野剛志さん「6年目の秋の頃に,(施設の)先生が

『お父さん,一矢,たぶんね,これから一生,施設暮らしだから,覚悟しなきゃダメだよ.お父さんたちとは,多分,暮らせないよ』

って.それだけ,一矢は(障害が)重たいだよって」

成人した後も,津久井やまゆり園へ,20年以上,預けてきた.

 

今,施設から出すことにしたのは,ある映画との出会いからだ.

 

(映像 映画「道草」:

「ター」「お散歩やめよう.じゃあ」「ター」)

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(映画「道草」上映委員会)

http://www6.nhk.or.jp/baribara/lineup/single.html?i=1109

 

今年公開の映画「道草」(宍戸大裕監督)

主人公は,一矢さんと同じ重い知的障害のある.そんな彼らが,まちなかで,一人暮らしをしている様子を描いた映画だ.

こうした生活を可能にするのが,重度訪問介護という制度.

 

〈重度訪問介護

重度の知的・身体障害者らが,自宅などで生活できるよう,長時間ヘルパーを派遣し,費用を給付する国の制度〉

 

行動障害がある人にも,常にヘルパーが付き添い,行きたい場所へも自由に行けるのだ.

映画には,一矢さんも登場.

 

一矢さん「おじさ〜ん.こんにちは」

 

施設に戻るまでを撮りたいと始まった取材.そこで,監督から,一人暮らしができると聞かされたのだ.

 

尾野剛志さん「『一矢さんなら,絶対大丈夫.尾野さんどう?挑戦してみない?』って言われて.えっ.それこそ寝耳に水.頭たたかれた感じ.そんな制度,あるんだって」

 

続く

 

 

「やまゆり園」運営法人見直しへ

NHK首都圏ネットワーク 12月05日 18:10~18:52

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首都圏ネットワーク - NHK

神奈川 NEWS WEB 12月05日 18時03分

https://www3.nhk.or.jp/lnews/yokohama/20191205/1050008350.html

 

3年前に19人が殺害される事件が起きた相模原市知的障害者施設をめぐり,神奈川県の黒岩知事は5日の県議会で,施設の運営を委託している社会福祉法人に問題があるとして,委託する期間を短縮し,新たな運営主体を公募する意向を示しました.

 

相模原市にある県立の知的障害者施設「津久井やまゆり園」では,平成28年7月に入所者19人が次々と刃物で襲われて殺害され,殺人などの罪に問われている元職員の男の裁判が来月から始まります.

施設は,これまで指定管理者制度を使って厚木市社会福祉法人「かながわ共同会」に運営をゆだねてきましたが,ことし10月,法人の理事が女子児童に性的な暴行をしたとして逮捕されました.

5日の県議会で黒岩知事は「すべての人の尊厳を守るべき立場にある法人の道義的責任は看過できない」と強く批難しました.

さらに津久井やまゆり園でも,過去に利用者を車いすに長時間拘束していたとの情報などが寄せられたということで,黒岩知事は「他の施設に移った人たちが,希望に満ちあふれた表情でその人らしく暮らす姿に衝撃を受けた」と述べました.

そのうえで,令和6年度までとなっているこの法人に委託する期間を短縮したうえで,相模原市横浜市にそれぞれ新たに建設する施設については,公募によって新たに運営主体を決める意向を示しました.

 

県議会のあと,取材に応じた神奈川県の黒岩知事は「現役の理事が逮捕される信じられない事件に加え,3年前の事件の殺傷事件も元職員が起こした犯行で,法人の在り方についていろいろな声があった.利用者一人ひとりの気持ちに寄り添った事業者に運営を任せたい」と述べたうえで,利用者や家族にはみずから直接,判断の理由を説明していく考えを示しました.