ワカメ3 軟らかいワカメを食べることができるようになったのは,1960年ごろから本格化した人工養殖と冷蔵法・加工法の進歩のおかげ.養殖ワカメの収穫量は,岩手,宮城,徳島の三県で全国の80%以上.ただ,思わぬところで,悪さをしている可能性が---.ワカメは,褐藻類の中では,コンブと近縁. ヒジキとは,系統的にやや離れているようです. 

ワカメは体長50センチメートルから1.5メートルになる大形海藻.

日本大百科全書(ニッポニカ)

f:id:yachikusakusaki:20191125224403j:plain

ワカメとは - コトバンク

しかし,軟らかいワカメを食べることができるようになったのは,つい最近.

 

古事記万葉集にも取り上げられ,また,奈良時代律令制下では,租税としても献上されていたワカメ.

食べられるようになったのは,更に遡って縄文後期

以前と推定できます.

http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2019/11/25/235630

 

しかし,現在の軟らかいワカメをふんだんに食べることができるようになったのは,近年,養殖技術が確立されてからのこと.

 

その経緯については,日本大百全書に,次のように記載されています.

 

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ワカメ

わかめ / 若布・和布

[学]Undaria pinnatifida Suringar

諸国からの貢納品を定めた大宝律令(たいほうりつりょう)(701)中にすでに名が出ており,『延喜式(えんぎしき)』(927)には今日の三重,愛知,島根,長崎,福島県などから大量に送られてきたことが記されている.

このようにきわめて古くから連綿と日本人に親しまれてきた食品であるから,その間に用法にもかなりの変遷があったはずだが,ことに近年は製品が多様化し著しい変革が起こった.

その起因は,1960年(昭和35)ごろから本格化した人工養殖と冷蔵法・加工法の進歩とにある.

養殖法確立以前には天然産だけで,産地や生産期は限られ,品質も堅いものなどがあった.養殖物ができると,新産地が増え,生産期も前後に延びて生産量が4~5倍になったうえに,柔らかいワカメが得られるようになった.

 

養殖ワカメの収穫量

わかめの養殖は日本各地で行われていますが,収穫量は,岩手,宮城,徳島が飛び抜けており,三県で日本産わかめの80%以上.

三陸わかめ,鳴門わかめが席巻しているということですね.

f:id:yachikusakusaki:20191126231851j:plain

海面漁業生産統計調査:農林水産省

 

ともに,歯ごたえのよさが売り文句になっています.

私の個人的な見解では:

肉厚が三陸,薄手が鳴門というイメージです.そして,確かにどちらもシャキシャキで,外国産はもとより,他県産をもかなり上回っている!

 

ネット上でのキャッチフレーズの一例:

鳴門わかめ

鳴門の渦潮を生み出す激しい激流で育った鳴門わかめは、シコシコとした歯ごたえと風味の良さが特徴です.

鳴門わかめ | 公益社団法人徳島県物産協会 公式ホームページ あるでよ徳島

 

三陸産わかめ

弾力としっかりとした歯ごたえがある.「ギュッとかみしめられるほど肉厚で、色もきれい」「炒めて一品料理にしてもほかの食材に負けません」など、品質に対する信頼の声が数多く寄せられてきました.

三陸産わかめ │ パルシステム神奈川ゆめコープ

 

日本でこのように発展したわかめ養殖.ところが,思わぬところで,悪さをしている可能性が---

国際自然保護連合(IUCN)の種の保全委員会が定めた世界の侵略的外来種ワースト100に選定されています.

世界の侵略的外来種ワースト100 - Wikipedia  http://www.iucngisd.org/gisd/100_worst.php

日本語版ウィキペディアに記載の選定理由は,どうも元の文章とは違う?

英文を以下に引用しておきます.今日は時間がないので,暇を見て拙訳を試みるつもりでいますが---

なお,97とあるのは,悪さの順序ではなく,学名のABC順で並べて,97番目ということ

 

100 of the World's Worst Invasive Alien Species

http://www.iucngisd.org/gisd/100_worst.php

97. Undaria pinnatifida(ワカメの学名)

The kelp (Undaria pinnatifida) is native to Japan where it is cultivated for human consumption. It is an opportunistic weed which spreads mainly by fouling ship hulls. It forms dense underwater forests, resulting in competition for light and space which may lead to the exclusion or displacement of native plant and animal species.

Common Names: apron-ribbon vegetable, Asian kelp, haijiecai, Japanese kelp, miyeuk, qundaicai, wakame

 

 

ワカメは,

不等毛植物門 Heterokontophyta

褐藻綱 Phaeophyceae

コンブ目 Laminariales

チガイソ科 Alariaceae

ワカメ属 Undaria

ワカメ U. pinnatifida

 

葉緑体をもっていますが,陸上植物とは系統分類的にかなり離れた存在.

葉緑体は共生をとおして,植物の間を移動しているため,葉緑体をもっていても近縁とは言えないそうです.

ちなみに,ワカメなど褐藻類(珪藻と一緒になって「不等毛植物」と呼ばれています)は,紅色植物(アサクサノリ等紅藻類を含む)が共生して葉緑体をもつようになった!

理解不十分ながら,進化って不思議ですね.

 

http://www.biol.tsukuba.ac.jp/~algae/BotanyWEB/plant.html

http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2017/01/19/022748

 

ワカメは,褐藻類の中では,コンブと近縁.

ヒジキとは,系統的にやや離れているようです.

f:id:yachikusakusaki:20191126232930j:plain

褐藻 - Wikipedia