北極星(Polaris)をα星としてもつ,誰もが知っている星座.
もちろん,日本からはどの季節でも見ることが出来ますが,春の星座とされるのが一般的なようです.
古代ギリシャで星座となった
しかし,古代ギリシャでは三つの名前を持っていたようです
Star Myths | Theoi Greek Mythology
Arktos Mikra (こぐま the Little Bear) or Amaza (ワゴン the Wagon) or Kynosoura (犬の尻尾 the Dog's Tail)
このthe Theoi projectのサイトに,アッカド語やシュメール語の名前は掲載されていません.
Star Myths | Theoi Greek Mythology
従って古代ギリシャ時代に星座とされたと考えて良さそうです.
なぜこぐま座か?
この星座をこぐま座Ursa Minorと呼ぶ根拠となりそうなギリシャ神話,または,こぐまにかかわるギリシャ神話は,ヒュギーヌスが伝える「フェニキアの少女または熊が星座となった」(下記)という物語.
ほとんど知られていない物語です.
この物語にちなんでこぐま座とされたと考えるのやや無理がありそうです.
近くのおおぐま座とペアとするためにこぐま座と呼ばれたようになったとも思えますが---.断定は出来ません.
PHOENICE
Star Myths | Theoi Greek Mythology
フェニキアの少女,または熊が,こぐま座として星々の間におかれた.古代フェニキア人は,彼女の星に導かれて航海した.(ヒュギーヌス,ミトレスのタレス)
PHOENICE
A Phoenician girl or bear who was set amongst the stars as the constellation Ursa Minor. The ancient Phoenicians navigated by her stars. (Hyginus 2.2 on Thales of Miletus.) Star Myths | Theoi Greek Mythology
星座の主は”幼いゼウスを養育したニンフ”
神々の王ゼウスは,クロノスとレアーの末っ子として生まれます.
クロノスは支配権を奪われるのを恐れ,生まれてきた子供たちを次々のみ込んでしまうのですが,ゼウスだけは母レアーの機転によってのみ込まれることを免れ,クレータに匿われてニンフ(ニムフ/ニュンペー)に育てられました.
この”幼いゼウスを養育したニンフが,その功績をたたえて空に置かれた”というのが,この星座に関わる最も有名なギリシャ神話(ヒュギーヌス).
このニンフの名前を,偽アポロドーロス(ビブリオテーケー/日本語訳ギリシャ神話)は,アドラーステイアーとイーデーとしていますが,こぐま座には触れていません.
日本語版ウィキペディアには,こぐま座はイーデーで,アドラーステイアーがおおぐま座,と記載していますが,古代ギリシャ原典に基づくものではないようです.
アポロドーロス ギリシャ神話 高津春繁訳
大地(ゲー/ガイア)と天空(ウーラノス)とが彼(クロノス)に予言して,自分の子によって支配権を奪われるであろうと言ったので,彼は子供たちを呑み込むを常としていた.
先ず最初に生まれたヘスティアーを呑み,ついでデーメーテールとヘーラー,その後プルートーン(ハーデース)とポセイドーンを呑み込んだ.
これに怒ってレアーはゼウスを孕(はら)んだ時にクレータに赴(おもむ)き,ディクテーの洞穴でゼウスを生んだ.そしてムーレースたちおよびメリッセウスの娘でニムフなるアドラースティアーとイーデーにその子を育てるように与えた.
そこで彼女たちはアマルテイアの乳で子供を養い,クーレースたちは武装して洞穴中で嬰児(えいじ)を守りつつ,クロノスが子供の声を聞かないように,槍を以て盾を打ち鳴らした.
レアーは石を襁褓(むつき:おむつのこと)にくるんで生まれた子供のごとく見せかけ,クロノスに呑み込むように与えた.