季節外れの花が咲いていました.初夏に咲くバイカウツギ.春先に咲くスミレ.”狂い咲き”. こう書いて--- 「話し言葉ならま〜いいとしても,ブログに載せるのに,少し抵抗感がある. 他の言い回しはないのか?」 調べてみました.代替できる言葉として“返り咲き/返咲”が見つかりました.より古くから用いられ,英語reflorescence の日本語訳にもなっていました.これからこの言葉を使いたいのですが---理解してくれる方がどれ位いるのか?

昨日・今日は,本格的な秋晴れといってよい天候でした.

 

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我が家の庭の秋の定番,真っ盛りなのは

クジャクアスター

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パイナップルセージサルビア・エレガンス).

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二週間前に播いたビオラも芽を出してくれました

今年も,遅れに遅れた種まきでしたが---

時間が無い中での種まきだったので,この後間引きが必要.手間がかかります.

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柿や杏がすっかり葉を落としている下で,白く咲く何輪かの花.

初夏の花・バイカウツギが開花しています.

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そして,同じく時期はずれに咲いている花が.

スミレ.こちらは余り元気がありませんが----.

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”狂い咲き”.

こう書いて---

話し言葉ならま〜いいとしても,ブログに載せるのに,少し抵抗感がある.

他の言い回しはないのか?

 

調べてみました.

 

“狂い咲き/狂咲”

ネットで閲覧可能な多くの辞書/事典に掲載されている言葉.

例えば,

 

狂咲(くるいざき)とは - コトバンク

精選版 日本国語大辞典の解説

くるい‐ざき くるひ‥【狂咲】

〘名〙

① 花が時節はずれに咲くこと.特に,冬に時期はずれな花が咲くこと.また,その花.かえりざき.かえりばな,《季・冬》

浄瑠璃・栬狩剣本地(1714)四「霜の小菊の狂ひ咲き」

② 花が普通と違った形に咲くこと。珍しい咲き形。また、その花。

③ (比喩的に) ある物事が、その盛りの時期を過ぎてしまった頃、急に、わずかな期間だけ盛りの頃のような状態になること。くるいばな。

 

江戸時代の浄瑠璃に使用例が.

少なくとも300年の歴史を持つ言葉ということ.その歴史を考えれば,ためらわずに用いても大きな問題ではないと言えるでしょうが---.

現代の言葉として,しかも文章になると,使用するのに小さな抵抗感はぬぐえません.

「狂」という字は強すぎます.

 

 “かえりざき”(返り咲き/返咲)

日本国語大辞典に別の言い回しとして掲載されていた,“かえりざき”.

 

この言葉をこの意味で使用したり聞いたりした覚えが私にはありません.

大関に返り咲いた貴景勝」という場合の意味ではもちろん使用しますが.

 

“かえりざき”で検索してみると---

この言葉も多くの辞典/事典が載せていることが判明.

そして,この言葉の意味の第一は,“狂い咲き”の意味でした.

無知を改めて反省すると共に.「返り咲きは,狂い咲きの意味ではほとんど使われなくなっている?」と言い訳.

 

精選版 日本国語大辞典の解説

かえり‐ざき かへり‥【返咲】

〘名〙

① 草木の花がその時季でないのに咲くこと.多くは春咲く花が,初冬の頃小春日和が続いた時などに再び咲くことをいう.二度咲き,狂い咲き.返り花.《季・冬》

浮世草子西鶴置土産(1693)二「うへ野の桜かへり咲(サキ)して」

② おとろえたものが再び栄えること。力、人気、地位などを失ったものが、再びもとの状態にもどって勢いを得ること。

俳諧・小町踊(1665)春「花にいはば又来る春や返り咲」

※薗八節・口舌八景(小いな半兵衛)(1755頃)「尽きぬ縁(えにし)の返咲(ザ)き」

 

俳諧・小町踊(1665)春「花にいはば又来る春や返り咲」とありますから,狂い咲きより使用例がほんの少しだけ古い.

そして

この返り咲きには,“返り咲く”という動詞形が続けて掲載されていて---

その①は「花が,その時季でもないのに咲く」.

使用例は不木和歌抄(1310年頃)ですが,歌自体は平安末期の女流歌人・小侍従によるもの.江戸から一気に平安時代まで遡って使われていたことが判明.

 

かえり‐ざ・く かへり‥【返咲】

〘自カ四〙 (「かえりさく」とも)

① (花が)その時季でないのに咲く.狂い咲きをする.《季・冬》

※夫木(1310頃)四「散る花を吹きあげの浜の風ならば猶も木末にかへりさかせよ〈小侍従〉」

② 力、人気、地位などの衰えていたものが、もとの状態にもどって盛んとなる。

※浅草紅団(1929‐30)〈川端康成〉四三「この娘は〈略〉この頃映画に返(カヘ)り咲(サ)いた」

 

「我が家のバイカウツギやスミレが,返り咲きしている」

「我が家のバイカウツギやスミレが,返り咲いている」

 

出来ればこのように書き記したいと思いますが---.

残念ですが,これでは分かる人はとても少ないように思います.

でも,うんちく話をはさんで,使ってみましょうか---

 

 

ここまで調べた後,私と同じような疑問を持った方の丁寧なブログを発見.

 

「返り咲き/狂い咲きは,専門家には何と呼ばれているのか?」を知りたくなり,

「狂い咲き 植物学用語では?」と入れて検索した結果,次のサイトにたどり着きました,

返り咲き・狂い咲き | 房総の片隅に佇むものの詩 - 楽天ブログ

運営者のsasama_teaさんの結論は

▽「結論から申しますと、『返り咲き』『狂い咲き』『二度咲き』『不時開花』などの言葉全ては、植物学・園芸上では同一の意味を示す言葉として扱われるようです」

また,丁寧に事典の引用をされていて,次の園芸事典の記載がとても役に立ちました.

カマキリの卵鞘の高さと積雪の関係について 其の二 | 房総の片隅に佇むものの詩 - 楽天ブログ

▽園芸事典(朝倉書店)

返り咲き(現象) reflorescence

狂い咲き unseasonable blooming、unseasonable flowering、unseasonable reflorescence

 

sasama_teaさんの結論を,以下のように少し発展させてみました.

ただし,私は全くの素人.推測の域を出ません.

 

返り咲きと狂い咲きの英語訳から,返り咲きを現象として捉えたreflorescenceが専門用語として認められているのでは?

専門用語として認められているreflorescenceは,狂い咲きとは訳されず,返り咲きと訳された.

 

ランダムハウス大辞典

rè・floréscence

■n.

返り咲き,二度咲き.

 

 

▽従って以下のように言えるのではないでしょうか(推測)

「『返り咲き』『狂い咲き』『二度咲き』『不時開花』などの言葉全ては、植物学・園芸上では同一の意味を示す言葉として扱われる」sasama_teaさんの結論

ものの,

より専門的な言葉としては,例えば植物学の論文などでは,「返り咲き」がより好んで使用されているのではないか.

 

この内容を含め,続きはまた明日.