ビール8 ビールに用いられるホップの「毬花」は花ではなく,雌しべが落ちた後にその根元から成長した苞(花を付けた茎に出来る葉)のあつまり.この苞の茎部などにできた黄金色の粘り気のある顆粒ルプリン.このルプリンが持つ苦み質と香物質がビール独特の味・香りに欠かせません.ホップは日本にも生育していました.カラナハソウです.ホップと同種で現在は変種扱い.栽培種のホップは100品種以上あるそうです. 参考 松の雌花と雄花

ビールづくりに用いられるホップは,「毬花」と呼ばれる部位.

“きゅうか”とふりがなが付けられている場合がほとんどですが,“まり花”と書かれているサイトもありました.

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この毬花は,実は「花では無い」とのこと.

不思議な命名の仕方ですね.

 

ホップの栽培は,雌株だけで行われます.(受粉すると毬花の品質が落ちるとか)

雌株が花(毛花と呼ばれることがある)を咲かせ,

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Humulus lupulus (Common Hops): Minnesota Wildflowers

その雌花の雌しべが落ちて“苞(包葉)”が伸び形成されたものが「毬花」.

(松の場合,花は「毬花」,松ぼっくりは「毬果」と呼んでいるように思います.⇒最下欄

なぜ,ホップは雌しべがなくなっても=花が終わった状態になっても,「毬花」と呼ばれるのか?)

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(夏)ホップ畑 | 横手市

 

吉田学「ホップより  ホップ

ホップは春になると地中に残って越冬していた根から芽が出て,支柱(ワイヤー,ひも等)に  絡みつき蔓となって8~12mまで成長する.欧米での主流な棚の高さは6~7mである.

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(夏)ホップ畑 | 横手市

北半球では6月頃になると毬花の形成に先立ち,雌株にはめしべ(柱頭と呼ばれる)だけが目立つ花(毛花)が咲く.

近くに雄株があれば花粉により受精が行われるが,

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Humulus lupulus (Common Hops): Minnesota Wildflowers

ビール醸造には未受精のものが好んで使用されるためホップ畑に雄株は存在しない.

その後めしべの部分は枯れ,その根元から苞が伸び8月頃に毬花が形成され,収穫の時期を迎える(吉田学 ホップ

 

毬花は「苞(包葉)」から出来ている!

苞 :花序(花を付けた茎の部分)に出る葉.芽やつぼみをおおって花を保護する.残続性のあるものでは普通花や花柄の基部に残っている.包葉.(日本国語大辞典

 

毬花の構造

ホップの毬花は,苞で形づくられていますが,一つの包葉(外苞)が二つの小苞(内苞)を囲んだ形になっているそうです.

そして,重要なのがルプリン腺(Luprin gland).

ここで作られる精油と樹脂がビールづくりに欠かせない苦みや香の元となる物質を含んでいる!

中でも大切な苦み成分はα酸(フムロンなど)という物質だそうで,加熱により溶解度が増してビールに溶けてくるとのこと.

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Hops - Wikipedia https://www.researchgate.net/figure/Lupulin-glands-on-female-inflorescences-cones-of-the-hop-plant-Humulus-lupulus-L_fig1_24430300  Hops - Wikipedia

 

武田薬報webより 

ホップ|薬用植物フォトライブラリー フォトライブラリー|武田薬報web

雌株の花序は10節前後で,ジグザグ状中軸の節に2枚の外苞に包まれて4枚の内苞があり,内苞の茎部に各1個の小さい雌花が着いている.したがって,一つの花序は40個ほどの小花の集合体である.緑色の苞の外側に長い白い柱頭が伸び出ていて,全体がブラシのように見えるので,俗に「毛花」と呼ばれている.

花粉に巡り会えないままの毛花の柱頭はやがて枯れ落ち,代わって外苞や内苞が肥大・発育して,雌の花序は全体として緑色の松毬に似た形状を呈する.

これが毬花で,8月中旬~9月上旬に成熟すると,苞の茎部などに黄金色の粘り気のある顆粒が作られる.これが『ホップ腺(ルプリン)』で,フムロン(humulone C21H30O5),ルプロン(lupulon C26H38O4 )などの結晶性苦味質を含む樹脂およびフムレン(humulene C15H24),ミルセン(myrcene C10H16)などの精油を含有している.

これらの成分はホップ特有の苦味と香りをビールに与えると同時に,利尿作用も有している.また毬花の苞や中軸にはタンニン(ポリフェノール)を含み,これが雑菌の繁殖を抑えて腐敗を防ぎ,過剰なタンパク質を沈殿させて濁りを少なくし,泡立ちをよくする働きなどがある.さらに,鎮静作用もあり,他の鎮静剤との併用で作用が増強される可能性も指摘されている.

ホップ|薬用植物フォトライブラリー フォトライブラリー|武田薬報web

 

ホップは

バラ目 Rosales,アサ科 Cannabaceae,カラハナソウ属 Humulus,

ホップ H. lupulus

 

カワラハナソウ属は,アサ属のごく近縁(系統図参照)

ホップの日本名はセイヨウカラハナソウ(西洋唐花草).

カラハナソウ(山ホップ)は,日本にも生育してきたホップの同種(現在は変種扱い)

カラハナソウ - Wikipedia

日本にもホップが生育していたんですね.

 

一方,栽培種のホップは100種以上あり,北緯・南緯それぞれ35度〜55度の「ホップベルト」と呼ばれる地域で生産されているとのこと.

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ホップとは?|JAPAN HOP 日本産ホップでビールを楽しむ|地域社会への貢献|キリン

 

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参考 松の雄花と雌花

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マツの雄花と雌花-中学 | クリップ | NHK for School