ギリシャ神話では,や座の矢の持ち主とされているのは,とてもよく知られた弓の名手二人.
昨日に引き続いて「ヘーラクレースの矢」にまつわる物語.
今日は,
2. 「ヘーラクレースの矢」についての記載がある偽アポロドーロス「ビブリオテーケー」の日本語訳の抜粋
を以下に記載します.
HERACLES CULT 1 - Ancient Greek Religion
日本大百科全書(ニッポニカ)の解説から抜粋(一部改変)
ギリシア神話中最大の英雄.ペルセウスの玄孫(げんそん,やしゃご).母は,夫アムフィトリオン(アムピトリオーン)に化けたゼウスを受け入れたアルクメネ(アルクメーネー).
ゼウスは彼女の産が近づいたとき,今日生まれるペルセウスの子孫がアルゴリス(古代ギリシアにおけるペロポネソス半島北東部の地域でミケーネ文明の繁栄する中心地)の支配者となると宣言したが,
それを知ったゼウスの妻ヘラは双子の誕生を遅らせ,もう1人のペルセウスの子孫でまだ7か月のエウリステウス(エウリュステウス)を先に世に出した.
このため,ヘラクレスは後年エウリステウスに臣従することになる.
テバイ(テーベ)を敵国より救い,その功によって王女メガラを与えられて3子をもうけるが,ヘラに正気を失わさせられたヘラクレスは,わが子らを火中に投じて惨殺する.
神託により,エウリステウスに12年間仕え,次の12(はじめは10)の難業を果たせば不死となろう,といわれた.
(1)ネメアの不死身の獅子退治. (2)レルネのヒドラ(水蛇)退治.
(3)アルテミスの聖なる鹿(しか)の生け捕り.(4)エリマントス山の猪(いのしし)の捕縛.
(5)アウゲイアスの家畜小屋を,1日できれいにすること.(6)スティムファロス湖の猛禽(もうきん)退治.
(7)クレタの狂い牛の生け捕り.(8)ディオメデスの人食い馬の捕捉(ほそく).
(9)アマゾンの女王ヒッポリテの帯の獲得.(10)西の果ての島に住むゲリオンの牛の奪取.
(11)ヘスペリデスの園から黄金のリンゴを盗み出すこと.
(12)地獄の番犬ケルベロスを地上に連れ出すこと.
Heracles | Theoi Greek Mythology
12の難業や遠征の途中たくさんのパレルガ(副次的事業)を果たした.
コーカサス(カウカソス,カウカーソス)で磔(はりつけ)にされたプロメテウスの肝臓をついばむ大鷲(おおわし)を射落としたのも,そのひとつ.
CAUCASIAN EAGLE (Aetos Kaukasios) - Giant Eagle of Greek Mythology
偽アポロドーロス ビブリオテーケー
第二巻Ⅳ-12
----仕事(一番目ネメアーの獅子〜十番目の仕事ゲーリュオネースの牛)が8カ年と1ヶ月で完遂された時に,エウリュステウスは,アウゲイアースの家畜と水蛇(ヒュドラー)の仕事を除外して,第十一番目の仕事としてヘスペリデスたちから黄金のリンゴを持って来るようように命じた.
これは,一部の人々の言うようにリビアにあるのではなく,ヒュペルポレオス人の国の中のアトラースの上にあったのである.それを大地(ゲー;ガイアの別のギリシャ語呼称)がヘーラーと結婚したゼウスに与えたのである.
テューボーンとエキドナから生まれた不死の百頭竜がその番をしていた.彼はあらゆる種類のさまざまな言葉をはなしたのである.それとともにヘスペリアスたち,すなわと,アイグレアー,エリュテイア,ヘスペリアー,アレトゥーサが番をしていた.
HESPERIDES - Greek Goddess-Nymphs of the Evening & Sunsets
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イリュリアーを徒歩で通って,ユーリダノス河へと急ぎ,ゼウスとテミスとの間に生まれたニムフたちの所へ来た.
彼女らは彼にネーレウスを教えた.ヘーラクレースは眠っているところを捕え,あらゆる姿に変身するネーレウスを縛り,どこに林檎とヘスペリスたちがいるかを彼から教わるまで放さなかった.教わってから彼はリビアを通り過ぎた.-----
そしてリビアを通って外界に進み,太陽神(ヘーリオス)から盃を受けとって,向かい側の大陸に渡り,プロメーテウスの肝臓を食っている,エキドナとテューポーンから生まれた鷲をカウカサス山上で射落した.そしてオリーヴの縛めを自ら選んだ後,プロメーテウスを解き放ち,ゼウスに彼の代わりに不死でありながら死を欲したケイローンを呈した.
ヒュペリオス人の地のアトラースの所に来た時に,プロメーテウスがヘーラクレースに自分でリンゴを取りに行かないで,アトラースの蒼穹(そうきゅう)を引き受けて,彼を遣(つか)わせと言ったので,それに従って蒼穹を引きうけた(番をするへスペリオスはアトラースの娘/ニュクスの娘とする説もある).
アトラースはヘスペリスから三つの林檎をとって来て,ヘーラクレースの所へやって来た.
そして蒼穹を担うことを厭(いと)って,林檎は自分でエウリュステウスの所に持参すると言い,天空をば彼が代わりに支えるように命じた.しかし,ヘーラクレースはそうしようと言って,謀事(はかりごと)を用いてアトラースの肩に天空を置いた.
というのは,プロメーテウスの助言によって,円座を頭にのせるまで,天空を引きうけてくれと言ったからである.
これを聞いてアトラースは林檎を地上に置いて蒼穹を受取った.
このようにしてヘーラクレースは林檎を取って立ち去った.
しかし,一部の人々はアトラースから受取ったのではなくて,彼が番をしている蛇(原文のまま ⇒*)を殺し,林檎をもいだのであると言っている(⇒*).
林檎を持って行ってエウリュステウスに与えた.しかし,彼はそれを受取ってヘーラクレースに贈物とした.彼からアテーナーが受取って林檎をまた元に還(かえ)した.というのはそれをどこにおくのかも法に反していたからである.
⇒* 一般的には番をしているのはへスペリオスと百頭竜.そして,例えばヒュギーヌス・天文詩では,百頭竜の殺し方をプロメーテウスが教えたとしています.