わし座4 カウカーソスの鷲もわし座候補とされています.“そしてゼウスは 策に長けたプロメテウスを縛りつけた---- そして 彼に 翼長い鷲をけしかけられた この鷲は 彼の不滅の肝臓を日毎喰ったが 肝臓は 同じ分量だけ生え出すのだった 夜のまに 翼長い鳥が昼のまに喰ったのと同じ分量だけ.(ヘシオドス "神統記” 岩波文庫)

わし座のギリシャ神話

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星座図鑑・わし座

the Theoi project のサイトでは,わし座の候補が,六つ挙げられています.

 

アプロディーテーの鷲 EAGLE OF APHRODITE

② プロメーテウスの鷲 EAGLE OF PROMETHEUS

③ ゼウスの鷲1 EAGLE OF ZEUS 1 

(ハンサムなトロイの王子ガニュメーデースを天に掴み取るために送った鷲. The eagle which Zeus sent to snatch the handsome Trojan youth Ganymedes up to heaven.)

④ ゼウスの鷲2 EAGLE OF ZEUS 2

ティターンとの戦いを始めるにあたって,祭壇に生贄捧げたとき,吉兆としてゼウスの前に現れた鷲. An eagle which appeared to Zeus as a sign of good omen when he was sacrificing on an altar prior to the commencement of his war against the Titans.)

⑤ ゼウスの鷲3 EAGLE OF ZEUS 3

(ヘルメースがアプロディーテーに求愛し,彼女はそれをはねつけました.ゼウスは息子ヘルメースをかわいそうに思い,鷲を送って彼女の履き物をつかみとらせ,その履き物をヘルメースに与えます.その履き物を取引に使って,彼女の好意を得ました.)When Hermes was wooing the goddess Aphrodite she spurned his advances. Zeus, pitying his son, sent an eagle which snatched away her sandal and delivered it the god, which he used to barter for her favours.)

⑥ メラプス(?) MEROPES

 

この六つの候補のうち,物語として最もよく知られているのは,②のプロメーテウスの鷲.

この鷲は,カウカーソスコーカサスの鷲THE AETOS KAUKASIOS (Caucasian Eagle) と呼ばれています.

(カウカーソスは英語コーカサス,ロシア語カフカースに対応する古代ギリシャ語)

 

the Theoi projectのサイトにCaucasian Eagleの項目が立てられ,次のような解説が.

 CAUCASIAN EAGLE (Aetos Kaukasios) - Giant Eagle of Greek Mythology

カウカーソスの鷹は,ティターン・プロメーテウスの永遠に再生し続ける肝臓をついばむように,ゼウスによって送り込まれた巨大な鷲.プロメーテウスは神々から火を盗んだことをとがめられ,カウカーソス山の頂上に縛りつけられていました.

この鷲は,様々に説明されています.ヘーパイストスによってつくられたブロンズのオートマトン(自動人形),もしくは,drakina(蛇の怪物?)エキドナが産み落とした怖ろしい被造物.

ヘーラクレースがプロメーテウスの縄を解いたとき,彼は矢でこの鷲を撃ち落としました.その後,鷲は星座とされ,the Titan とArrow とともにわし座,the Kneeler(ヘラクレス座のギリシャ語名の意味),や座となっています.

THE AETOS KAUKASIOS (Caucasian Eagle) was a gigantic eagle sent by Zeus to feed upon the ever-regenerating liver of the Titan Prometheus after he was chained to a peak of the Kaukasos (Caucasus) Mountains as punishment for stealing fire from the gods.

The eagle was variously described as a bronze automaton constructed by the god Hephaistos (Hephaestus), or as a fell creature spawned by the drakaina Ekhidna (Echidna).

When Herakles set out to free Prometheus from his bonds, he felled the eagle with a volley of arrows. Afterwards the Eagle, as well as the Titan and Arrow, were placed all amongst the stars as the constellations Aquila, the Kneeler and Saggita.

 

プロメーテウスはギリシャ神話のトリックスターとも言えるティターンティターン十二神の一人,イーアベトスの子として生まれます.

ティターノマキアではゼウスに味方し罪を免れたとされていますが,天上から火を盗み,人間に与えたため,ゼウスの怒りをかうことになりました.

ヘーシオドスは次のように記しています.

 

▽ヘシオドス "神統記” 廣川洋一訳 岩波文庫

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https://www.amazon.co.jp/

 

イアペトスの子

さて イアペトスは 足首優しい乙女 大洋(オケアノス)の娘

クリュネメを娶(めと)り ひとつ床に入った.

そして彼女は 彼に 剛毅な心の子 アトラスを生まれた.

また

栄あるメノイティオスと 入り組んだ さまざまな策に富むプロメテウスと

思慮浅いエピメテウスを生まれた.この者(エピメテウス)は

はじめから 穀物(パン)を喰う人間どもにとって禍いの因(もと)であったのだ

というのも ゼウスが創られた女性 乙女をはじめて受けとったのは 彼だったから.

さて 傲慢なるメノイティオスを 見はるかすゼウスは 燃えさかる雷電で撃ち 幽冥(エレポス)へと送り込まれた

彼の傲岸不遜な態度と度を越えた慢心のゆえに.

また アトラスは 強い強制(アナンケ)のもとに 広い天を支えている

大地の涯(果て) 声澄める黄昏の娘(ヘスペリス)の娘たちの面前で

疲れ知らぬ頭と腕で 立ったままの姿勢で.

この持ち分(モイラ)を 賢いゼウスが 彼に定められたからである.

そしてゼウスは 策に長けたプロメテウスを縛りつけた 桎梏(かせ) すなわち

冷酷な縄目でもって.桎梏縄を 太い柱のまん中に打ちこまれたのだ.

そして 彼に 翼長い鷲をけしかけられた この鷲は

彼の不滅の肝臓を日毎喰ったが 肝臓は 同じ分量だけ生え出すのだった

夜のまに 翼長い鳥が昼のまに喰ったのと同じ分量だけ.

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CAUCASIAN EAGLE (Aetos Kaukasios) - Giant Eagle of Greek Mythology

その鳥を 足首優しいアルクメネの雄々しい息子

ヘラクレスが退治した イアペトスの息子(プロメテウス)の酷(ひど)い苦悶を払い

苦痛から 彼を 救ったのだ.

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CAUCASIAN EAGLE (Aetos Kaukasios) - Giant Eagle of Greek Mythology

もっとも これは

高空に知ろしめすゼウスのご意向に 悖(もと)りはしない

テバイ生まれのヘラクレスの誉れが

数多(あまた)を養う大地の上で 以前にも優(まさ)っていや増すようにとのご意向に.

このように思案した彼(ゼウス)は 名にし負う息子(ヘラクレス)を 賛えられた

立腹はしていたが 彼は 以前(プロメテウスに)抱いていた その怒りを 鎮められたのだ

というのも 知略にかけては(プロメテウスが)尊大なクロノスの御子(みこ)と 互角に張り合うほどであったから.

 

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