英語の秋田先生.英語の授業がなくなり,雑務係に.「英語を勉強したい」と声をかけたら,英和辞書と一緒に,グリムとアンデルセンの童話集.「英文を訳して誰にも分からないように持ってきなさい」.憧れて入った学校は,兵器を作る工場に.働きづめの殺伐とした毎日.新しい物語を読むたびに,その世界にのめり込み,ノートを開いているときだけは,夢心地.空襲警報が鳴り響きました.私がとっさにつかんだのは,辞書と「アンデルセン」の童話.NHKスペシャル #あちこちのすずさん~教えてください あなたの戦争~(2)

NHKスペシャル

#あちこちのすずさん~教えてください あなたの戦争~ (2)

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【キャスター】千原ジュニア,【リポーター】八乙女光,伊野尾慧,【出演】広瀬すず片渕須直,【アナウンサー】近江友里恵,【語り】松嶋菜々子

 

#あちこちのすずさん~教えてください あなたの戦争~(1)

戦争中といってもパーマをかけたがるお客さんは,いっぱいいました.

空襲がくる!と山に避難して,警戒が解けて戻ると,もうお客さんが列になっているんです.

たいていの人は,頭にシラミがいて,パラパラと落ちてくる.

パーマをかける1時間半.お客さんはいろんな思いを吐き出します.息子が戦死したの.気持ちを張らなければ家事もできないわ.母は,時に涙を浮かべながらうなずいていました.NHKスペシャル

http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2019/08/17/001000

 

#あちこちのすずさん 戦争とおしゃれごころ 

大阪10代女性風化さん「祖母は木炭パーマをした次の日に川で泳いだら,すぐにとれてしまったらしい」

 

東京50代女性坂本みえ子さん「『♪パーマネントをかけすぎて,お前の母ちゃんつるっぱげ』と父が歌っていたそうです」

 

広島40代女性はつちよさん「木炭パーマ,祖母もやったそうです.もんぺの裏地を派手な色にしたりとか」

 

京都80代女性ロッパさん「母は防空ずきんにリボンをつけたが『この非常時に』と先生が引きちぎり大泣き」

 

長野60代女性ジュンちゃん天花粉をお化粧がわりにした母.男子に今日はキレイだねと言われ,頬を赤らめた」

 

「おしゃれも規制されていたわけなんですが,他にも戦争中,規制されていたものがありました.

英語です.

 

横浜市のなつさん,28歳の方からの投稿です.

「祖母によると,野球でストライクはまん中,ヒットはあたり,に変えられたとか」

「ボールはなんなんでしょう?」

「ボールってなんでしょうね?」「『外れ』とか?じゃあ,『千原ジュニア』はどうしたらええんやろね?」

「『千原こども』さんとか,言ったらいいんですかね?」

 

「ちょっと,写真見ていただきたいものがありまして,

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http://giantsplayer.seesaa.net/index-6.html

 

こちら,当時,人気選手のスタルヒン選手という方がいらっしゃいました.この方は,こう言った呼び名になりました.須田 博 選手」

「え〜.スタルヒンなんや.今のサッカー選手の方なんかの当て字と変わらないですね」

「ちょっと,似たとこもありますが,こういったように規制もあったんですよね」「そうなんだ」

「続いては英語が規制されている中,それでも英語を勉強したいと思っていた女性のエピソードをご紹介します.アルバムをお借りしてきました.こちらの方です.

東京都の刀根(とね)雅江さん.89歳です.では,この方からのエピソードを広瀬すずさんに朗読していただきます」

 

ある日,私は学校の購買部に向かいました.

そこにいたのは英語の秋田先生.戦争の影響で英語の授業がなくなり,雑務係になっていたのです.

「私,英語を勉強したい」と声をかけたら,みるみるうれしそうな顔をされました.

英和辞書と一緒に渡してくれたのは,グリムとアンデルセンの童話集でした.

「この童話の英文を訳して誰にも分からないように持ってきなさい」と言われました.

万が一,このことが周りにばれたら----,きっとスパイと思われ,捕らえられてしまう.私は英文と翻訳を書いたノートを新聞紙に隠して運び,素早く先生に渡しました.

翌日返されたノートは,先生のアドバイスで真っ赤でした.

このころ,英語の教科書はすでになく,頼みの綱は,辞書と想像力だけ.憧れて入った学校は,兵器を作る工場に様変わりしてました.朝から晩まで,働きづめの殺伐とした毎日.

それでも,「人魚姫」「マッチ売りの少女」「はだかの王様」「雪の女王」---新しい物語を読むたびに,その世界にのめり込み,ノートを開いているときだけは,夢心地でいられました.

1945年,東京は何度も空襲を受け,学校の友達も命を落としました.

朝のあいさつは,「いってまいります」から,「さようなら」に変わりました.

ある夜,眠っていたところに,空襲警報が鳴り響きました.私がとっさにつかんだのは,辞書と「アンデルセン」の童話でした.けたたましい爆撃の中,私はこう思ったのです.

「これは,現実じゃない.本当の世界はもっと楽しくて,美しいはずだ」

 

 

「監督,この『“いってまいります”から,”さようなら”に変わった』というのは,どういうことなんでしょう」

片渕監督「本当に,だから,毎日の生活が,命の危機にさらされてるということだと思うんですけれど.

そういう中で,心の中に何か拠り所をね.当時,しゃべってはいけないと言われていた英語に求めてる,というお話なんですよね.

沢山の人がいて,戦争中の人って,みんなおんなじなのかな,当然違うわけなんですよね.僕らが千差万別のように,戦争中の人にも,“自分は英語が好きだ” “自分は算数が好き” いろんな人がいたはずなんですけど,たまたま,英語の先生は仕事がなくなってしまうし,英語が好きだった子は,ノートを隠さなければいけなくなってしまったりするわけですよ.

でも,それは,さっきのパーマのお話もそうなんですけど,誰が,上の人が,お達しが来たのかっていうと,本当にそうだったのか,ちょっと分からないんですよ.

誰が言いだしたのか,よく分からないんだけど,戦争中という雰囲気の中で,いつかね,そういう『パーマかけたい』『英語が好きだ』っていうのが,やっちゃいけないという風潮になっていくんですよね.

戦争って言うのは,そういうふうに,一人一人の,個人の,個性みたいなものを踏みにじるところが,何かあるような気がするんですね.それが何か.今,映像作ってて,自分たちもちょっと泣いてたんですけど

 

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