ケイローン4 アキレウスとケイローン/ いて座のギリシャ神話5 ケイローンは多くの英雄を育てましたが,中でもアキレウスの養育は数多くの古代ギリシャ・ローマ原典に記され,古代ギリシャの壺絵や古代ローマのフレスコ画,さらには18-19世紀には新古典派・ロマン派の絵画にも描かれています.アキレウスを育てるようになった経緯は,偽アポロドーロス“ビブリオテーケー”に.“アルゴナウティカ”によれば,アキレウスの父ペーレウスは,その後アルゴー号に乗船しますが,その船出を見送るケイローンの傍らには幼子アキレウスが---

いて座のギリシャ神話5

 

弓を射る半人半馬が描かれる「いて座 Sagittarius(Sgr)」 

ギリシャ神話では,ケイローン/ケイロン(Chiron),または,クロトス(Crotus/Krotos)とされています.

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星座図鑑・いて座

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Star Myths | Theoi Greek Mythology 


ケイローン

ケイローンは,野蛮かつ好色とされるケンタウロスの一人でありながら,学識に優れ,とくに音楽,医術,狩猟,預言術に精通し,多くの神々の子や英雄たちの養育に携わったとされています.弟子として名前が挙げられた英雄は実に25名!ケイローンは,他のケンタウロスとは生まれが違い,神の直系/ゼウスの異母兄弟.死後星座とされますが,死の場面を描いているのは,偽アポロドーロス/ビブリオテーケー.

 

ケイローン

ケイローンの出生については,「アルゴナウティカ」の挿話に語られています.妻レアーの目を盗んでピュリラーとの情事にふけるクロノスは,妻に見つかり馬に姿を変えて逃げ出します----.「アルゴナウティカ」では,この挿話の前に,ペーレウスがアルゴ号の乗員を鼓舞する場面があります.ペーレウスの結婚にはケイローンの尽力があり,また息子アキレウスの教育を引き受けたのがケイローン.この挿話は,このような逸話を知る読者にとっては,ごく自然な流れ.

 

ケイローン

多くの神々の子や英雄たちの養育に携わったケイローン古代ギリシャローマ原典での記述が確認できたのは,養蜂の技術を発明したアリスタイオス.処女神アルテミスの入浴中の裸体を目撃してその怒りに触れて殺された狩人アクタイオーン.アルゴ船乗組員の指揮者として活躍したイアーソーン.酒と豊穣の神ディオニューソス.「イーリアス」の主人公でトロイア戦争の英雄アキレウス.そして,ギリシア神話の英雄で医術の神アスクレーピオス.

 

 

ケイローン4 アキレウスケイローン

ケイローンは多くの英雄を育てましたが,中でもアキレウスの養育は数多くの古代ギリシャ・ローマ原典に記され,古代ギリシャの壺絵や古代ローマフレスコ画にも描かれています.

 

ケイローンアキレウスを育てるようになった経緯は,偽アポロドーロス“ビブリオテーケー”に.

 

・偽アポロドーロス“ビブリオテーケー”

アポロドーロス/高津春繁訳 ギリシャ神話 岩波文庫

 

テティスがペーレウスによって赤児を得た時に,これを不死にせんものと,

ペーレウスに秘して,夜は火中に隠してその父より受け継いだ死すべき部分を破壊し,昼間はアムプロシアを塗った.

 しかしペーレウスは彼女を見張り,子供が火の上でもがいているのを見て声をたてた.

 テティスは自分の目的を果たすことをはばまれ,幼子を棄てて水のニムフたちの所に去った.

 ペーレウスはその子をケイローンの所に連れて行った.

 ケイローンは彼を受け取って獅子と野猪の臓腑および熊の随で養いアキレウスと名づけた.—それまで彼の名はリギュローンであった.というのは彼は乳房に唇をつけたことがなかった(*)からである.

(*俗解語源説 Achilleus<a(否定語)+ cheilos唇)

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CHIRON (Kheiron) - Elder Centaur of Greek Mythology

 

アキレウスの父ペーレウスは,その後アルゴー号に乗船し,あまたの英雄たちとともに黄金の羊皮を求める航海に出立しますが,その船出を見送るケイローンの傍らには幼子アキレウスが---

 

 

・アポロニオス  アルゴナウティカ(岡道男訳) 講談社 世界文学全集

 

船は進み,武具は炎のように陽光に輝いた.

長く引く航跡は,さながら緑の平野を横切るのが見える一筋の小道のように,たえ間なく白く光った.

あの日,天の高みからからすべての神々が船を,そして神の血を引く英雄の族(やから)を眺めた.かれらこそ,当時大海を航行した,勇猛無比のつわものであった.

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またピリュラの息子ケイロンは,山頂から海の近くに降りてきて,

灰色の波の砕けるあたりに足を浸し,

たくましい手をしきりに振って彼らを励まし,

旅立つ一行の帰国の無事を祈った.

かれとともに来た妻は,ペレウスの子アキレスを腕に抱き上げ,父親に愛児を示した.

 

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CHIRON (Kheiron) - Elder Centaur of Greek Mythology

 

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Chiron - Wikipedia

そして,18〜19世紀には,このアキレスとケイローンを題材とした新古典主義〜ロマン派絵画も生まれました.

 

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Achilles paintings search result at PaintingValley.com

 

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Chiron - Wikipedia