おとめ座(*新4)
1. アストライアー(Astraea)/ユースティティア(Iustitia)
2. デーメーテール(Demeter)/ケレース(Ceres)
3. エーリゴネー(Erigone)
4. テュケー (Tyche)/フォルトゥーナ(Fortuna)
5. パルテノス(Parthenos)
今日は2.デーメーテールの2回目.
「ペルセポネーの掠奪」でこのブログでも取り上げてきましたが,
改めて整理してみたいと思います.
2.デーメーテール (2)
古代メソポタミアの二つの星座,Furrow(穀物の穂を持った古代シュメールの豊穣の女神Shala)とFrond(手のひらに大きな葉をもった女神)を引き継いだ「おとめ座の女神」にも擬せられています.
2.デーメーテール (1) http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2019/04/13/003024
ギリシャ神話の女神の中で,その存在感は一二を争うもの.
農業・穀物の女神.彼女の力なくして実りはなく,地母神として多くの信仰を集めました.
父はティターンのクロノス;ゼウスの前の神々の王.
母はやはりティターンのレアー.ゼウスの姉でオリンポス12神の一人.
夫はいないが,子として,
・ゼウスとの間に娘ペルセポネー.冥界の王ハーデースの妻にして冥界の女王.
・イーアシオーンとの間に息子プルートス.富と収穫の神.
・ポセイドーンとの間にmagical horse,アレイオーン.
デーメーテールは,娘のペルセポネーとともに,ギリシャ各地で広く信仰を集めていました.
日本大百科全書(ニッポニカ)によれば,
娘のコレKore(「少女」の意.別名ペルセフォネ,ペルセポネー)とともに「ト・テオ」to theo(両女神)とよばれ,エレウシス(エレウシース)を中心にギリシア各地で崇拝された.
アテナイ(アテネ)など多くの地方では,豊作を祈って10月から11月にかけて、婦人だけが関与するものとして有名な「テスモフォリア」の祭りが両女神の神域で催された.
この二人の女神の性格を良く表しているとされるのが「ペルセポネーの掠奪」,見方を変えれば「エレウシースの秘教」の物語.
この物語を最も詳しく記述しているのが「デーメーテールへの讃歌」(「ホメーロス風讃歌」の一つ).
四つの章に分けられて,物語が語られています.
Ⅰ.「ハーデース(プルートー/プルート)がペルセポネー(プロスペリナ)を略奪する」
Ⅱ.「母の女神デーメーテール(ケレース/セレス)がペルセポネーを捜して諸国を放浪する」
Ⅲ.「ペルセポネーが帰還する」
Ⅳ.(ホメーロス風讃歌のみ)「デーメーテールによる農業と秘儀の伝授」
日本語翻訳書(四つのギリシャ神話 逸身 喜一郎,片山 英男 訳,岩波文庫)の前書きは次の通り.
デーメーテールとその娘ペルセポネーの役割が簡潔にまとめられているので,転載させて頂きます.上記ニッポニカの記載と重なりますが.
デーメーテール(ローマ神話ではケレース)は大地の実り,特に主食となる穀物を司(つかさど)る豊穣神で,古代にはその名自体がデー(=ゲー)(地)とメーテール(母)を表わす,文字通りの地母神と考えられていた.
その信仰の中心地は,アテーナイに隣接するエレウシースの地で,特に古く遡る起源を誇り,入信者にのみ死後の救済を約束する密儀宗教として,「エレウシースの秘儀」の名はあまねく知れ渡っていた.
穀物の実りを司る地母神が,その機能を広くあらゆる生物の生死全般にまで及ぼすのは当然の発展であり,ここから,生命が発し,また帰着する地下の世界(冥界)を治める神との密接な関係が生じる.
さらにギリシャ神話では,この地母神は母デーメーテールと娘ペルセポネー(その別称コレーは「若い娘」の意味)のふたりへと早くから分身しており,もっぱら娘のほうが,誕生ー死亡ー復活を繰り返す自然界の生命の一年の周期を体現する神となっている.
この讃歌は,娘神の死(冥界への誘拐)による母神の悲嘆と,娘神の復活(地上への帰還)を詳細に物語るもので,ヘーシオドスの『神統記』の中のわずかな言及と並んで,人口に膾炙(かいしゃ)したこの神話を伝える最古の資料である.
祭儀がすべてデーメーテール自身に由来することを示す縁起譚(たん)となるケレオスの歓待の挿話は,この主題とあいまって,エレウシースの秘儀を二重に根拠づけるものとなっている.
デーメーテール讃歌概要 エレウシスの秘儀 - Wikipedia
( Ⅰ )
草原で花を摘んでいたペルセポネーは,ゼウスの企みに従ったハーデースによって連れ去られる.
娘の叫び声がデーメーテールに届き,母神は松明を掲げて大地をさまよい歩いた.10日目に,ヘカテーがデーメーテールの前に現れ,何者かがペルセポネーを奪い去ったと告げた.デーメーテールはヘカテーを伴ってヘーリオスのもとを訪れ,ペルセポネーをさらったのはゼウスの許しを得たハーデースだということを知る(第1行 - 第90行).
( Ⅱ )
怒ったデーメーテールはオリュンポスから離れ,老婆に身をやつして地上の街や畑を巡り歩いた.
女神は放浪の末にエレウシスにたどり着き,ケレオスの館に迎えられる.館ではケレオスとその妃メタネイラの子供デーモポーンが誕生しており,デーメーテールはデーモポーンの養育を引き受ける.女神は子供を不老不死にしようとして,昼にはアンブロシアを肌にすり込んで甘い息を吹きかけ,夜には両親に気づかれないように火の中に埋めて育てた.
ところが,子供の神にも似た成長ぶりを不審に思ったメタネイラがこれを覗き見して叫び声を上げたため,デーメーテールは腹を立てて女神の姿を現し,アクロポリスの麓に神殿と祭壇を作るように命じた.ケレオスが言われたとおりにすると,デーメーテールは神殿にこもった(第91行 - 第304行).
( Ⅲ )
穀物の女神が姿を隠したために,大地は実りを失った.
ゼウスは女神の怒りを宥めようと,イーリスをはじめとして神々を遣わしたが,デーメーテールは一切聞き入れなかった.やむなくゼウスはヘルメースを冥府に遣わし,ハーデースを説得してペルセポネーを地上に連れ戻すように命じた.
こうして,ついに母娘は再会を果たした.
しかし,ハーデースはペルセポネーを還す前にザクロの種を食べさせていたため,冥府の食べ物を口にしたことにより,ペルセポネーは1年のうち三分の一は冥界で過ごし,残りの三分の二は地上で暮らすこととなった(第305行 - 第469行).
( Ⅳ )
大地は実りを取り戻した.
デーメーテールはトリプトレモス,ディオクレース,エウモルポス,ケレオスに祭儀の執行を教え,またトリプトレモス,ポリュクセイノス,ディオクレースには秘儀を明かすと,ペルセポネーとともにオリュンポスに赴き,再び神々の列に加わった(第470行 - 第495行).