葦4 葦は.様々な効用があり,ヨシ原を保全・復活させようとする動きが各地で見られます.頭が下がります. ヨシ(アシ)は,イネ科ヨシ属.英語ではREED.若の浦に潮満ち来れば潟を無み葦辺をさして鶴鳴き渡る (万葉集巻六・九一九) 山部赤人

葦の効用とヨシ原保全

昨日のブログ冒頭で,

「(葦は)日本各地の湖沼や河川の岸および水湿地に大群生」と書きましたが---

「かつては」とすべきだったようですね.

護岸整備や、砂利採取で河底が下がり、近年ではヨシ原はとても少なくなっているとのこと.

葦は.次のような効用があり,ヨシ原を復活させようとする動きが各地で見られます.

 ①多くの生き物のすみかになります

 ②水をきれいにします

 ③人の生活に役立ちます

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http://www.cbr.mlit.go.jp/toyohashi/yoshiue/pdf/2014yoshiue.pdf

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みんなで創る近江八幡松明祭り – Do It Ourselves! それ自分でやってみたら JAWAN(日本湿地ネットワーク) ヨシとは? - 公益財団法人淡海環境保全財団

 

現在葦の群生がみられる場所として,琵琶湖湖畔がよく知られていますが,ここも,葦群生の保全活動が活発に行われた結果.

活動に携わる方々には頭が下がります.

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葦の群生地 | びわ湖源流の郷(滋賀県高島市)、その魅力

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http://tyamaboushi.web.fc2.com/2008/080620biwako_nisinoko.htm

Google マップ

 

 

ヨシ(アシ 葦)は,イネ科ヨシ属

植物分類上の標準名はヨシが使われ,分類/学名は

イネ目 Poales,イネ科 Poaceae,ダンチク亜科 Arundinoideae,ヨシ属 Phragmites,

ヨシ P. australis,

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Poaceae - Wikipedia イネ科 - Wikipedia

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イネ目 - Wikipedia

日本に自生しているヨシ属としては,ヨシ,ツルヨシ,セイタカヨシがあって,大群落を作るのはヨシ.

ツルヨシは河川に多く,セイタカヨシは水辺よりすこし高いところに生えるとのこと.

 

ヨシは,日本のみならず,世界の温帯から熱帯(暖帯)の湿地帯に広く分布する植物で,英語ではreed(花言葉complaisance満足).

木管楽器の吹き口につけるリードは,もちろん葦から作られます.

ただ,英語でreedと呼ばれる植物は,葦のみではなく,葦に限定したい場合にはcommon reed.

従って,日本語で「葦」と訳されていても,葦そのものとは限りません.

 

「人間は考える葦である」の葦は, common reedと考えて良いようですが----

日本語訳(前田陽一,由木康(訳)『世界の名著24パスカル』「パンセ」)

人間は考える葦である人間はひとくきの葦にすぎない.自然のなかで最も弱いものである.だが,それは考える葦である.彼をおしつぶすために,宇宙全体が武装するには及ばない.蒸気や一適の水でも彼を殺すのに十分である.だが,たとい宇宙が彼をおしつぶしても,人間は彼を殺すよりも尊いだろう.なぜなら,彼は自分が死ぬことと,宇宙の自分に対する優勢とを知っているからである.宇宙は何も知らない.

https://www.klnet.pref.kanagawa.jp/information/pdf/g_books/pascal.pdf

英語訳

“Man is only a reed, the weakest in nature, but he is a thinking reed. There is no need for the whole universe to take up arms to crush him: a vapour, a drop of water is enough to kill him. but even if the universe were to crush him, man would still be nobler than his slayer, because he knows that he is dying and the advantage the universe has over him. The universe knows none of this.”

https://www.goodreads.com/quotes/394587-man-is-only-a-reed-the-weakest-in-nature-but

 

葦船は,エジプトではパピルス(カヤツリグサ科カヤツリグサ属)で作られ,チリのティティカカ湖の葦船はトトラ(カヤツリグサ科フトイ属)製.このトトラは家を建てるのにも使われています.

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http://enacademic.com/dic.nsf/enwiki/6699130

また,葦笛は,日本では,葦の葉で作ったものを思い浮かべることが多いでしょうが,アンデスの葦笛はイネ科のダンチクで作られるとのこと.

アシとは - コトバンク

 

 

葦2 万葉集

若の浦に,潮(しほ)満ち来れば,潟(かた)を無み,葦辺をさして,鶴(たづ)鳴き渡る

 

若の浦に潮満ち来れば潟を無み葦辺をさして鶴鳴き渡る (巻六・九一九) 山部赤人

 

大岡信ことば館

http://kotobakan.jp/makoto/makoto-1305

万葉集』巻六雑歌.神亀元年聖武天皇紀伊行幸随行した折作った長歌につけた反歌.「若の浦」はのち和歌の浦と書くようになった.「潟を無み」は,潮が満ちて干潟が無くなったので.力士名などに用いられる片男波は,このカカタヲナミが転じたもので,意味は無関係になっている.

冬の和歌山の海辺,満潮で干潟が無くなったため,葦の密生するあたりへと鶴の群が鳴きかわしながら移動するのだ.万葉歌人中屈指の叙景歌作者の,一代表作.

 

斎藤茂吉 万葉秀歌

 赤人の歌続き.「若の浦」は今は和歌の浦と書くが,弱浜とも書いた(続紀).また聖武天皇のこの行幸の時,明光の浦と命名せられた記事がある.「潟」は干潟の意である.

 一首の意は,若の浦にだんだん潮が満ちて来て,干潟が無くなるから,干潟に集まっていた沢山の鶴が,葦の生えて居る陸の方に飛んで行く,というのである.

 やはり此歌も清潔な感じのする赤人一流のもので,「葦べをさして鶴鳴きわたる」は写象鮮明で旨いものである.

また声調も流動的で,作者の気乗していることも想像するに難くはない.「潟をなみ」は,赤人の要求であっただろうが,微かな「理」が潜んでいて,もっと古いところの歌ならこうは云わない.例えば,既出の高市黒人作,「桜田へ鶴鳴きわたる年魚市潟潮干にけらし鶴鳴きわたる」(巻三・二七一)の如きである.つまり「潟をなみ」の第三句が弱いのである.これはもはや時代的の差違であろう.

この歌は,古来有名で,叙景歌の極地とも云われ,遂には男波・女波・片男波聯想にまで拡大して通俗化せられたが,そういう俗説を洗い去って見て,依然として後にのこる歌である.万葉集を通読して来て,注意すべき歌に標をつけるとしたら,従来の評判などを全く知らずにいるとしても,標のつかる性質のものである.一般にいってもそういういいところが赤人の歌に存じているのである.

ただこの歌に先行したのに,黒人の歌があるから黒人の影響乃至模倣ということを否定するわけには行かない.

 巻十五に,「鶴が鳴き葦辺をさして飛び渡るあなたづたづし独さ寝れば」(三六二六),「沖辺より潮満ち来らし韓の浦に求食りする鶴鳴きて騒ぎぬ」(三六四二)等の歌があり,共に赤人の此歌の模倣であるから,その頃から此歌は尊敬せられていたのであろう.