大根基本情報2 大根は,カブ,サトイモ,ナス,ネギなどともに,平安時代になくてはならない野菜.朝廷で作られていたようです.そして,練馬大根,三浦大根,守口大根,宮重大根,聖護院大根,桜島大根など多くの品種が生まれたのが江戸時代.

平安期,大根は朝廷にも供給されていた

大根が,”おほね”として,古事記日本書紀仁徳天皇の歌に歌われていることはよく知られています.大根が古来より日本人の食生活に欠かせない野菜であった根拠の一つですね.

http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2019/01/24/021914

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https://www.sakataseed.co.jp/product/search/code00925002.html ダイコン [大根] - みんなの花図鑑(掲載数:3,406件)

 

大根の歴史に関する記事で,次によく引用されるのが,平安時代に編纂された法令集延喜式』.

朝廷に供給されていた野菜の名前が記されています.

法令集なのになぜ?と思いますが----⇒**

 

 

挙げられている野菜は次のようなもので,

大根は,カブ,サトイモ,ナス,ネギなどと共にしっかり記載されています.

延喜式にみる野菜 千里ニュータウン+万博+∞…=吹田市立博物館!/ウェブリブログ https://www.thcu.ac.jp/research/pdf/bulletin/bulletin11_01.pdf

 

アザミ*, アララギ, イモガラ*, エダマメ,

カブナ*, ギシギシ*, ククタチ*, コウサイ,

ササゲ, サトイモ*, サンショウ, ショウガ, シロウリ*, セリ*,

ダイコン*, タケノコ*, タデ, チシャ* ,

ナギ, ナズナ, ナスビ*, ニラ, ニンニク*, ネギ*,

ハハコグサ, ヒユ, フキ*, フユアオイ*, マクワウリ

 

上記の名前のうち,アステリスクをつけたものは,「正倉院文書」を中心とする関根真隆氏の研究から,奈良時代に食べられていた野菜としても挙げられているもの.

https://www.thcu.ac.jp/research/pdf/bulletin/bulletin11_01.pdf

大根はここにもしっかり含まれています!

 

それにしても,平安時代にも沢山の野菜を食べていたんですね.

しかし,現代では,雑草でしかないギシギシ,ナズナ, ハハコグサ, ヒユなども栽培して供給していたとは.

 

 

様々な大根の品種が生まれた江戸時代 

日本大百科全書(ニッポニカ) ダイコン(だいこん)とは - コトバンク より

 

大根と書いて今日のようにダイコンと読むようになったのは室町時代中期.

『節用集(せつようしゅう)』(15世紀)の記載から分かるとのことです.

 

現在も引き継がれている沢山の品種が現れたのは江戸時代.

『成形図説』(1804)には,

 関東地方に練馬(ねりま)など,

 東海地方に守口,宮重(みやしげ)など,

 九州地方の桜島など

の品種が記載されているそうです.

聖護院,亀戸,三浦,大蔵,美濃早生,理想,方領(ほうりょう),阿波(あわ)などの分化も江戸時代.

 

そして,切り干し大根,凍(し)み大根,沢庵などの加工技術開発も江戸時代の産物.

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 http://www.city.nerima.tokyo.jp/annai/fukei/daikon/index.html 守口大根 守口大根|JAぎふの農産物|JAぎふ 宮重大根 | gene bank 桜島大根(さくらじまだいこん)

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近畿農政局/聖護院だいこん 聖護院大根 しょうごいん大根 丸大根 |大根

http://www.mikuni-marunouchi.jp/yasai/kameidoradish/index.html  http://nipponsyokuiku.net/syokuzai/data/043.html http://www.gotokyo.org/jp/tourists/topics_event/topics/131216/topics.html

 

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延喜式は,法体系だけではなく,平安時代儀礼・文化を知る上で重要な文献でよく引用されます.

どのようなものか?

少し長くなりますが,ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の延喜式解説の書き出しの部分をそのまま引用しておきます.

 

延喜式(読み)えんぎしき

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

延喜式(えんぎしき)とは - コトバンク

平安時代法令集. 50巻.三代式の一つ.

延喜5 (905) 年,左大臣藤原忠平らが醍醐天皇の命令により編集.延長5 (927) 年完成。『弘仁式』『貞観式』をはじめ,古代政府の根本法令を補う形でその後発布された施行細則を集大成したもの.実際に頒布されたのは,40年後の康保4 (967) 年.

当時の法令の編集が,行政上の必要からなされるよりも,その時代の文化的事業として編集され,一つの記念事業としての意味が強かったからであろうと思われる.

内容は律令制社会の全般に及んでいる.

たとえば巻9, 10の神名式は,一名『延喜神名帳』ともいわれ,全国の神社が国郡ごとに連記されているので,当時の地方行政区画を知ることもできる.

また,巻 23の民部式ほかからは当時の各国の特産物を,

巻 26の主税式からは諸国の国力を相対的に知ることができる.

巻 37の典薬式には,諸国に産出する薬草が詳記されていて便利である.

 

大根が記載されているのは,巻39の内膳司の巻.

宮内省に供給する蔬菜の種類と数量などが記録されています(内膳司供奉雑菜条)

延喜式には,京北園・山科園や奈良園・泉園など朝廷の畑の名と栽培方法(耕作のための人数,牛・すきの数,蒔く種の量など)も記載され,朝廷の園地で栽培が行われていたようです.

延喜式にみる野菜 千里ニュータウン+万博+∞…=吹田市立博物館!/ウェブリブログ https://www.thcu.ac.jp/research/pdf/bulletin/bulletin11_01.pdf