東京新聞「こちら特報部」より 沖縄知事選挙に関連した話題二つ 1. 沖縄・辺野古新基地 政府の賠償請求示唆 故翁長氏憤り.県民への恫喝が放置されたままの異常な選挙を「本土メディア」はどう報じる. 2.惑わされぬ事実を 地元紙やNPOがフェイク監視.事実をゆがめようとする空気が,世界を満たしている. 

東京新聞こちら特報部」は,9月12日,13日の二日間連続して,13日告示の沖縄知事選挙に関連した話題を取り上げていました.

沖縄県知事に対するスラップ訴訟,県知事選を巡るフェイクニュースに関するものです.

東京新聞も,毎日新聞のように,記事の数の上限を設けて「購読申し込み」なしに読めればと思いますが---.

こちら特報部」限定の有料化(=切り売り)なども考えられないのでしょうか)

 

1.

〈2018年9月12日【特報】〉 

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沖縄・辺野古新基地 政府の賠償請求示唆 故翁長氏憤り

 沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設を巡り、菅義偉官房長官が亡くなった沖縄県知事の翁長雄志氏に放った「恫喝(どうかつ)」の言葉を覚えているだろうか。埋め立て承認を撤回した場合は、国が損害賠償請求をする可能性もあると語ったことだ。翁長氏は最期までこの揺さぶりを憂えていた。いよいよ始まる県知事選に、どのような影響を及ぼすのか。

(石井紀代美)

www.tokyo-np.co.jp

[一部抜粋]

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生前の翁長氏が口にした訴訟とは何なのか.それは名護市辺野古への新基地建設を巡り,政府が翁長氏にほのめかした「スラップ訴訟」だ.

 

スラップとは,英語表記の頭文字をとった言葉で,通常は国や大企業が力関係の弱い市民に対して行う.「市民参加に対抗する戦略的訴訟」とか,「恫喝訴訟」とも呼ばれる. (SLAP: strategic lawsuit against public participation)

 

翁長氏は昨年三月,仲井真弘多(ひろかず)前知事が承認した辺野古沿岸部の埋め立てについて「あらゆる手法をもって撤回を力強くやる」と明言した.

その言葉を受けて菅義偉(よしひで)官房長官は「国として損害賠償の請求権の行使を含め,所要の措置を講じる可能性がある」と翁長氏に対する賠償請求の可能性を示唆した.その金額は一日二千万円とされる.

 

翁長氏は「僕は政治家だから丸裸にされてもいいんだ」と動じなかった.

 

しかし,撤回が現実味を帯びてきた頃,翁長氏を苦しめる情報が入ってきた.

「国が一般職員にも損害賠償を求める可能性がある」というものだった.

翁長氏は「知事の命令で動いている職員を矢面に立たせるわけには,断じていかない」と激しい口調で憤ったという.

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デスクメモ

新基地建設に抵抗する民の声を封じるため,権力者が恫喝をくり返す.

二年前には反対運動のリーダー山城博治さんが微罪で捕らえられ五ヶ月も拘留されたが,彼も悪性リンパ腫を抱えた病人だった.

県民への恫喝が放置されたままの異常な選挙を「本土メディア」はどう報じる.

(直)

2018・9/12

 

 

2.

〈2018年9月13日【特報】〉

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デマ飛び交う 沖縄知事選きょう告示 新聞調査装い「ダブルスコアの情勢」

惑わされぬ事実を 地元紙やNPOがフェイク監視

 

 十三日告示、三十日投開票の沖縄県知事選を前に、悪質なデマが飛び交っている。前宜野湾市長の佐喜真淳氏(54)や自由党衆院議員玉城デニー氏(58)らの争いとなる見通しだが、偽の「世論調査」情報が複数流れているのだ。中傷ビラも出回り、県民には戸惑いが広がる。沖縄に対する虚偽のニュースは過去にも繰り返されており、有権者が冷静に判断するための検証の動きが始まっている。 

(大村歩、安藤恭子

www.tokyo-np.co.jp

[一部の概要を書き換えて箇条書き,見出しは付け足し]

▽架空の調査結果

 “朝日新聞世論調査によると「一方の立候補予定者の支持率は52%,もう一方は26%」”(フェイク)

“国民民主党による世論調査の結果として「ある立候補予定者がもう一方を13ポイントリードしている」”(フェイク)

 

取材に対し,

朝日新聞「これは事実無根.選挙前で調査をしていない」

国民民主党「調査をやったという話は確認できていない.承知していない」

不利とされた陣営の報道担当者「そういう情報が流れているのは知っているが,気にしていない」「今までは地上戦が中心だったが,告示以降は空中戦をやる」

有利とされた陣営「相手陣営の引き締めとこちらの緩みを誘うためのフェイクニュースでしょう」

佐藤学沖縄国際大学教授(政治学「ダブルスコアといった極端な結果になるとは考えられない.架空の調査結果には選挙戦をかく乱させる意図があるのではないか」

 

▽フェイク監視の動き

地元紙・琉球新聞は「ファクトチェックーフェイク監視」と題した企画を始めた.第一回として冒頭の世論調査情報の検証記事を「虚構のダブルスコア 偽知事選世論調査」の見出しで掲載した.

同紙の滝本匠・知事選取材班キャップ「きっかけは二月の名護市長選だった」

「例えば,名護市をキャンプ地とするプロ野球日本ハムが名護市から出て行くぞという話しがあった.

選挙結果にどう結びついたのか分からないが,デマを信じ込む人が想像以上に多いかもしれないと気づいて,悪質なデマを打ち消す報道をしなければと考えた」

 

沖縄県知事選のデマを検証する動きは本土でも起きている.NPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ )」(東京)で,昨年の衆議院に続き,十三日からファクトチェックを始める予定だ.

 

島袋純・琉球大教授(行政学「中国の脅威など不安をあおるデマや『売国奴』などの言説によって,日本の枠組みから外れるくらいなら政権の意向に従ったほうがいいという空気が生まれ,基地に反対する県民の民意が分断されてきた.

選挙戦では不気味な情報も飛び交うだろうが,市民は真実を読み解く力をつけ,投票に望んでほしい」

 

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デスクメモ

デマはドイツ語のデマゴギーの略.

最近は地震など災害でよく目にするが,もともと政治的なうその意味とされる.米大統領選で流れた「ローマ法王がトランプ氏を支持」といったデマが典型だが,見分けにくいものも多い.

事実をゆがめようとする空気が,世界を満たしている.

(本)

2018・9・13