「天(ウーラノス)の裔(すえ)の神々のなかでも とりわけ愛らしい子供たちを生まれた(ヘーシオドス 神統記)」レートー.
神統記によれば,ゼウスの正式な妻の一人であり,Theoi Projectのサイトでも次のように記載されています
http://www.theoi.com/Titan/TitanisLeto.html
「レートーは,Titanides(女性のティーターン)の一人で,ゼウスの花嫁.そして,双子の神々アポローンとアルテミスの母(拙訳)」
LETO was one of the Titanides (female Titans), a bride of Zeus, and the mother of the twin gods Apollon and Artemis.
Leto - Ancient Greek Vase Painting
「レートー,ラテンネームはラートーナ,はヘーシオドスによればティターンのコイオスとポイベーの娘でアステリアーの姉妹,そして,アポローンとアルテミスの母,父はゼウス.ゼウスとはへーラーの前に結婚しました」
LETO (Lêtô), in Latin LATONA, according to Hesiod (Theog. 406, 921), a daughter of the Titan Coeus and Phoebe, a sister of Asteria, and the mother of Apollo and Artemis by Zeus, to whom she was married before Hera.(Dictionary of Greek and Roman Biography and Mythology)
しかし,ヘーシオドスより後のギリシャ神話の著作者たちは,レートーをゼウスの妻とは描きませんでした.
「後の作家たちは,(ヘーシオドスやホメーロスの物語の)要素を変化させ,装飾していき,レートーをゼウスの正式な妻としては描かず,身ごもっている間中,へーラーによって苦しめられた,単なる内縁の妻として描きました
」
In later writers these elements of her story are variously worked out and embellished, for they do not describe her as the lawful wife of Zeus, but merely as a concubine, who was persecuted during her pregnancy by Hera. (Apollod. i. 4, § 1; Callim. Hymn. in Del. 61, &c.; Schol. ad Eurip. Phoen. 232, &c.; Hygin. Fab. 140.)
このような後の作家の作品の代表の一つに,アポローンへの賛歌(ホメーロス風讃歌の一つ)があります.
その一部を転載させてもらいます.
今日は冒頭部分.
四つのギリシャ神話―『ホメーロス讃歌』より (岩波文庫 ) 文庫 逸身 喜一郎・ 片山 英男 訳.
遠矢射るアポローンを,私はいつも心に想い,けっして忘れることあるまい.
ゼウスの館に近づくこの神を前にして,神々は震えおののく.さらに神が間近に迫り輝く弓を絞るとき,一同,席から立ち上がる.
しかし母レートーだけがひとり,稲妻楽しむゼウスのそばを動かない.女神は弓の弦を緩め,えびらに蓋をしてやったのち,その手でアポローンの逞(たくま)しい肩から弓をはずしては,父ゼウスが背にする柱の黄金の釘をかけ,それから,席に案内し座らせる.
父神は息子をあたたかく迎え,ネクタルの入った黄金の杯に与える.
そこで他の神々が着席する.女神レートーは,弓矢もつ力つよい息子を産んだことに心なごませる.
ようこそ,至福なるレートー,あなたこそ名高い子供の母.
主アポローンと矢を降りそそがせるアルテミスを,娘はオルテュギアーの島で,息子は岩なすデーロスの高い峰,つまりキュントス山にもたれ,イーノーボスの流れに沿ったシュロの木のすぐそばで産んだのだから.