「何も告げられないまま子どもをうめなくされたんで,ずっと今日に至るまで,毎日苦しい思いできたんで,うん----(涙)」,知能テストを受けました.まもなく,知的障害の子どもが集まる施設に入所しました.軽度の知的障害があるとされたからです.そして,16歳のあの日---.退院後,実家で両親が話すのを聞いて初めて,私は不妊手術を受けたと知りました.何一つ知らされないままの事でした.NHK ETV特集「私は産みたかった~旧優生保護法の下で~」1

NHK ETV特集「私は産みたかった~旧優生保護法の下で~」

7月21日土曜NHKEテレ1 午後11時00分~ 午前0時00分

再放送 7月26日木曜 午前0時(水曜深夜)

 

 

もしも,

もしも,16歳に戻れるなら---.

 

「人生返ってこないから,やっぱりくやしいよね」

 

私には,どんな未来があったんだろう?

16歳の時,私は子どもを産めない身体にされました.

 

(映像)(提訴記者会見の場)

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ETV特集 - NHK

「彼女が20年を越えて訴え続けてきた.それが今日,提訴できるという所まできたことは,非常に感慨深いものでございます」

「何も告げられないまま子どもをうめなくされたんで,ずっと今日に至るまで,毎日苦しい思いできたんで,うん----(涙)」

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 ETV特集 - NHK

 

今年5月,一人の女性が望まない不妊手術を受けたとして,裁判を起こしました.

その原因となったのは,旧優生保護法

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障害がある子どもが生まれないよう,障害者に対して不妊手術を強制するものでした.

(映像)(旧優生保護法 第一条 【 この法律の目的 】この法律は、優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する----)

 

 

優れた人間と劣った人間を分ける優生思想.

この考え方に後押しされ,世界中で障害者への不妊手術が行われていました.

 

それは戦後の日本でも.

手術を強制された人は,一万六千人以上に上ります.

 

当時不妊手術をした医師「麻酔をかけて開腹して(卵管)を縛って,全部でおそらく5分10分くらいで終わったと思う.そんなに抵抗がなかったというのがほんとかな」

児童相談所職員「予防的なね,そういうのを作らないことだっていう.でてくるの,生まれてくるのをそこで止めなきゃいかんって」

 

強制不妊手術はなぜ広がったのか?

優生保護法とは何だったのでしょうか?

 

NHK ETV特集「私は産みたかった~旧優生保護法の下で~」

(語り ayako_HaLo)

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 ETV特集 - NHK

 

宮城県仙台市

私は,もう20年,この街に暮らしています.

「これ夕べ漬けたばっかりだけど,漬かってるかね」

私の名前は飯塚淳子(仮名 70代).

 

16歳の時不妊手術を受けさせられました.

(映像)(ぬか漬けキュウリを洗う飯塚さん)

「うん,ちょうどよいかな.おいしい,自分でつくって,自分で褒めて」

 

結婚もしました,でも夫は出て行ってしまいました.

「嫁いでも子どもが産めないんで,優生手術の話,しなければよかったのかなって思いもあるし」

 

私のふるさとは,山あいの小さな集落.七人きょうだいの長女でした.

父は身体が弱く,母が山菜の行商で一家を支えていました.

家は貧しくて,学校にも余り通えませんでした.

ある日私は近所の民生委員に連れられ,児童相談所に行きました.そこで,知能テストを受けました.

それからまもなく,知的障害の子どもが集まる施設に入所しました.

軽度の知的障害があるとされたからです.

(映像)(判定意見欄 内因性軽度ろどん:当時の言葉)

 

そして,16歳のあの日.

「診療所,この辺にあったんです」

それは,診療所でした.なぜか,父親がいました.同じ年頃の女の子もいたように思います.

記憶はそれしかありません.

「麻酔かけられたのも覚えてないし,ただ,あの〜,麻酔が切れて,そこに水道があって,水飲みたくて飲もうとしたら,水飲んじゃだめだよって言われたんは覚えている」

 

退院後,実家で両親が話すのを聞いて初めて,私は不妊手術を受けたと知りました.

何一つ知らされないままの事でした.

 

(映像)(サクランボを洗う飯塚さん)

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ETV特集 - NHK

 

「いろいろやりたいことがあったり,夢もあったし,くやしいし,くやしいだけじゃすまない問題なんで」

「やっぱりできれば16歳にもどして欲しい.そこからやり直したいって思いがあるんで.でも戻れないんで」 

(続く)

 

付録

優生保護法 抜粋

 旧優生保護法

第一章 総則

第一条 【 この法律の目的 】

この法律は、優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するとともに、母性の生命健康を保護することを目的とする。

第二条【 定義 】

第一項

この法律で優生手術とは、生殖腺を除去することなしに、生殖を不能にする手術で命令をもつて定めるものをいう。

第二項

この法律で人工妊娠中絶とは、胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期に、人工的に、胎児及びその附属物を母体外に排出することをいう。

 

第二章 優生手術

第三条【 医師の認定による優生手術 】

第一項

医師は、左の各号の一に該当する者に対して、本人の同意並びに配偶者(届出をしないが事実上婚姻関係と同様な事情にある者を含む。以下同じ。)があるときはその同意を得て、優生手術を行うことができる。但し、未成年者、精神病者又は精神薄弱者については、この限りでない。

第一号 本人若しくは配偶者が遺伝性精神病質、遺伝性身体疾患若しくは遺伝性奇形を有し、又は配偶者が精神病若しくは精神薄弱を有しているもの

第二号 本人又は配偶者の四親等以内の血族関係にある者が、遺伝性精神病、遺伝性精神薄弱、

      遺伝性精神病質、遺伝性身体疾患又は遺伝性畸形を有しているもの

第三号 本人又は配偶者が、癩疾患に罹り、且つ子孫にこれが伝染する虞れのあるもの

第四号 妊娠又は分娩が、母体の生命に危険を及ぼす虞れのあるもの

第五号 現に数人の子を有し、且つ、分娩ごとに、母体の健康度を著しく低下する虞れのあるもの

第二項

前項第四号及び第五号に掲げる場合には、その配偶者についても同項の規定による優生手術を行うことができる。

第三項 第一項の同意は、配偶者が知れないとき又はその意思を表示することができないときは本人の同意だけで足りる。

 

第四条 【 審査を要件とする優生手術の申請 】

医師は、診断の結果、別表に掲げる疾患に罹つていることを確認した場合において、その者に対し、その疾患の遺伝を防止するため優生手術を行うことが公益上必要であると認めるときは、都道府県優生保護審査会に優生手術を行うことの適否に関する審査を申請しなければならない。

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第十二条【 精神病者等に対する優生手術 】

医師は、別表第一号又は第二号に掲げる遺伝性のもの以外の精神病又は精神薄弱に罹つている者について、精神保健法(昭和二十五年法律第百二十三号)第二十条(後見人、配偶者、親権を行う者又は扶養義務者が保護義務者となる場合)又は同法第二十一条(市町村長が保護義務者となる場合)に規定する保護義務者の同意があった場合には、都道府県優生保護審査会に優生手術を行うことの適否に関する審査を申請することができる。

附則

第三十五条【 施行期日 】
この法律は、公布の日から起算して六十日を経過した日(昭和二十三年九月十一日)から、これを施行する。
第三十六条【 関係法律の廃止 】
国民優生法(昭和十五年法律第百七号)は、これを廃止する。

  

別表   (第四条、第十二条関係)

第一号 遺伝性精神病

      精神分裂病

      そううつ病

      てんかん

第二号 遺伝性精神薄弱

第三号 顕著な遺伝性精神病質

      顕著な性慾異常

      顕著な犯罪傾向

第四号 顕著な遺伝性身体疾患    

      ハンチントン氏舞踏病

      遺伝性脊髄性運動失調症

      遺伝性小脳性運動失調症

      神経性進行性筋い縮症

      進行性筋性筋栄養障がい症

      筋緊張病

      先天性筋緊張消失症

      先天性軟骨発育障がい

      臼児

      魚りんせん

      多発性軟性神経繊維しゆ

      結節性硬化症

      先天性表皮水ほう症

      先天性ポルフイリン尿症

      先天性手掌足しよ角化症

      遺伝性視神経い縮

      網膜色素変性

      全色盲

      先天性眼球震とう

      青色きよう膜

      遺伝性の難聴又はろう

      血友病

第五号 強度な遺伝性奇形    

      裂手、裂足

      先天性骨欠損症