優生保護法(1948~96年)の前身で,ナチス・ドイツの断種法をモデルにした国民優生法(40~48年)の法制化を積極的に進めた日本民族衛生学会(現・日本健康学会,渡辺知保理事長)が,法案作成への関与やその後の対応について検証を始めた.毎日新聞2018年6月7日 東京朝刊 

優生保護法

優生推進,学会が検証 障害者不妊 戦前,法制定へ運動

 

毎日新聞2018年6月7日 東京朝刊

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 優生保護法(1948~96年)の前身で,ナチス・ドイツの断種法をモデルにした国民優生法(40~48年)の法制化を積極的に進めた日本民族衛生学会(現・日本健康学会,渡辺知保理事長)が,法案作成への関与やその後の対応について検証を始めた.

年内をめどに資料などの調査を終え,見解をまとめる.「優生」に関わった国内の学会のうち,自らの関与を検証する試みは初めて.他の学会にも影響を与えそうだ.

 

 民族衛生学会は30年,東京帝国大教授で生理学者の永井潜氏を中心に創設.世俗的な優生思想を学問的な優生学に高めることを目指し,「遺伝性疾患」を不妊手術の対象とする断種法の制定運動も展開した.

議員提案された法案を起草し,障害者らを対象にした不妊手術を推進する国民優生法の成立につながった.

 

 戦後は活動内容の方向性が変わり,不妊手術の対象を拡大した優生保護法の制定には関わっていないとされる.

現在は公衆衛生学や保健学,環境学などから人々の健康を探る学術団体として活動.昨春,健康学会に改称.最近の強制手術の被害者救済の動きから,「優生」に関与した歴史の検証が必要だと判断した.

 

 理事の一人は「健康が絶対視されすぎると不健康な人を排除する方向に向かいかねない.負の歴史を繰り返さないための重要な作業だ」と話した.

【千葉紀和,上東麻子】