生のワサビをすり下ろして食べると本当に美味しいのですが,家で口に入ることはほとんどありません.
チューブ入りのワサビが食卓の定番.
それでもだんだん美味しくなってきていて,役目は十分果たしているように思います.
先日買いもとめたものは,S&B“本生 本わさび”.
今.盛んに宣伝しています.
「きめ細かいなめらかさ、清涼感のある風味、辛みが特徴の高級タイプ」
「使用するわさびは100%本わさび」
が売り文句.
「本わさび100%」ということは---
そうではない商品のほうが多いということですね.
S&Bのわさび商品の表示基準は,
“原料わさびのうち本わさびの量が50%以上にあっては「本わさび使用」,
50%未満にあっては「本わさび入り」と表示出来ることにしています.”
とのこと.
わさび・からしに関するQ&A | S&B エスビー食品株式会社
本わさび以外のワサビといえば,西洋わさびということになります.
既に製造を中止した商品の表示には,“わさび(西洋わさび、本わさび)”とありました.
本わさびは,
アブラナ科Brassicaceae,ワサビ属 Eutrema,ワサビ E. japonicum.
西洋ワサビはホースラディッシュのこと.
アブラナ科Brassicaceae,セイヨウワサビ属 Armoracia,ホースラディッシュ(セイヨウワサビ)A. rusticana
S&Bのサイトでは,ホースラディッシュについて,次のように説明しています.
わさび・からしに関するQ&A | S&B エスビー食品株式会社
ホースラディッシュは同じアブラナ科のからし,わさび,大根によく似た辛さを持ち,特に鼻にツーンとぬける刺激的な辛さは共通しています.
それもそのはずで,
ホースラディッシュの辛味成分はアリル芥子油(アリルイソチオシアネート)*)という揮発性の精油成分で,和からしやわさびと同じです.
しかしその形はものにもよりますが細身の大根のようで,わさびとは趣が大分違います.
色も白く,すってもわさびのような緑色はしていません.
原産地もわさびが東洋であるのに対して,ホースラディッシュは東ヨーロッパで違いがあります.
ホースラディッシュは欧米では肉料理に欠かせない香辛料で,ローストビーフ,ビーフステーキ,ボイルドビーフなどによく使われます.
また牡蠣,魚料理の薬味としても使われており,ホースラディッシュソースやホースラディッシュクリーム,カクテルソースなどのソース類にもよく用いられています.
*)辛みのもとになるのは、「シニグリン」という成分ですが、これ自体は辛みを感じさせません.生のワサビをすりおろすことでミロシナーゼという加水分解酵素が働き、アリル芥子油(アリルイソチオシアネート)になります.
ホースラディッシュもすてたものではありません.しかし,辛味の主成分は同じといっても,日本の本わさびは別格.
チューブ入りでもそのおいしさを実感できるように,企業は日々努力しています.
とはいっても,おろしたての生ワサビは本当に美味しいので,その再現はなかなか難しいでしょう.
それでも,つい最近まで,着色した西洋ワサビ主体の粉ワサビが食卓にあったことを考えると企業努力も並大抵ではないと思います.
なお,味の違いだけではなく,この二つのワサビは,同じアブラナ科といっても,系統樹の上でかなり離れた位置に分類されています.