プロメーテウス2 イソップ寓話集には,さまざまな教訓が,プロメーテウスによる人間の創造とからめて語られているようです.この様な重要な役目をゼウスに与えられたプロメーテウス.ティアターンとの戦いではゼウスに味方しますが,すんなりと味方になった訳でもない?そして,ゼウスに味方してからは重要な役割も果たした? アイスキュロス「縛られたプロメテウス」では,その時の様子が,縛られたプロメーテウス自身の言葉として語られています.

人間のために火を盗み,ゼウスの怒りをかったプロメーテウス.

f:id:yachikusakusaki:20180501010132j:plain

イソップの寓話集では,ゼウスの命をうけ人間をつくったのもプロメーテウスとされています.

昨日あげた寓話は,

「プロメーテウスが人間を造り上げたとき,彼が使った粘土は水ではなく涙で捏ねた.だから,全く涙なしで済まそうとしてはいけない.なぜなら,涙は不可避のものだから」

というものでした.

http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2018/05/01/011219

 

他にも,イソップ寓話集には,さまざまな教訓が,プロメーテウスによる人間の創造とからめて語られているようで,「the Theoi Project」のサイトにあげられた説話は計7つ.

PROMETHEUS - Greek Titan God of Forethought, Creator of Mankind

いずれも,人間の今があるのは,プロメーテウスが造ったときに由来するという寓話と言っていいようです.

 

全ての英語は訳しきれないので,もう1つだけここに記載させてもらいます.

 

プロメーテウスは私たちに二つのずた袋を与えた.一つの袋には,自分の欠点を入れて背中に掛け,他人の欠点を入れて重くなっていたもう1つの袋は,首の巻きつけて結んだ.これが,「なぜ私たちが自分の悪い習慣は見えず,他人の間違いをすぐに批判するのか」の理由だ.

"Prometheus has given us two sacks to carry. One sack, which is filled with our own faults, is slung across our back, while the other sack, heavy with the faults of others, is tied around our necks. This is the reason why we are blind to our own bad habits but still quick to criticize others for their mistakes."

Aesop, Fables 527 (from Chambry 303 and Phaedrus 4. 10)

PROMETHEUS - Greek Titan God of Forethought, Creator of Mankind

 

 

このように,プロメーテウスは,人間を造ったり(イソップ寓話集),装いを与え性質を決めること(プラトンプロタゴラス」)をゼウスから委託されたとされています.

 

しかし,昨日も記載したように,プロメーテウスはティターン十二神の一人イーアベトスの息子.

f:id:yachikusakusaki:20180829003621j:plain



広い意味ではティターン一属とされ,

兄弟のアトラースは有名なティーターノマキアー(ゼウス率いるオリュンポスの神々と、クロノス率いる巨神族ティーターンとの10年に及ぶ戦い)で父と一緒に闘い,敗れた後は世界の西の果てで天空を背負うという役目を負わされる事に.

f:id:yachikusakusaki:20180501225704j:plain

では,プロメーテウスは?

彼も,この時点で罰せられていておかしくないのですが,

「ゼウスに味方したため,罰を免れた」としているサイトが幾つか見られます.確かにその通りのようです.

しかし,すんなりと味方になった訳でもない?そして,ゼウスに味方してからは重要な役割も果たした?

 

ティーターノマキアーにおけるプロメーテウスの働きを描いている原典は少ないようですが,「the Theoi Project」のサイトがあげているのは

ギリシャ三大悲劇詩人のひとり,アイスキュロスによる「縛られたプロメテウス」.

PROMETHEUS - Greek Titan God of Forethought, Creator of Mankind

f:id:yachikusakusaki:20180502001230j:plain

Prometheus - Wikipedia

 

ティーターノマキアーにおけるプロメーテウスの働きを,縛られた彼自身の言葉として語らせています.

この話の中では,

プロメーテウスの母は,女神のテミスであり,ガイアでもある.彼女の予言を聞き,ティターン一属を説得しようとしたが受け入れられず,母とともにゼウスに味方した.とあります.

そして,クロノス達ティターン一味をタルタロスに閉じ込めることができたのも,自分の策によると.

 

神々が腹を立てて彼らのあいだに争いが始まるやいなや,さっそくある者はクロノスを王座から追い出して,実際にゼウスが支配するようにしようとし,またある者は,ゼウスが神々を支配することのないように,と反対側に躍起になった.

それで,この俺は最善の献策をしたのだが,ティターンたちを,あのウラノスとクトーンの子らを説得することができなかった.

かれらは,策略を蔑視して,自分らの力を頼みに,簡単に力づくで勝とうと思ったのだ.

しかし母のテミス-------またはガイア,名は多いが体は一つだ--------が,幾度となく.未来がいかようにして成るかということを.俺に予言してくれた.

権力を獲得する者は,力ではない.暴力ではない,策略によって支配するはずだと.

それらのことを,俺はくわしく説いて聞かせたけれど,彼らは馬鹿にして,全然眼もくれなかった.

それで俺には,目下の最善の策は,母を伴うて,自ら進んで迎えるゼウスの許に身を投ずることだと思われた.かくして俺の策によって,現在あの年老いたクロノスとその一味の奴らを.暗いタルタロスの深淵が覆うている.

かの神々の王は,かくのごとき恩恵を俺に負いながら,この非道なる報いをもって,俺に返報した.とにかくこれは,この友を信じないということは,専制政治につきものの病なのだ.

アイスキュロス全作品集 アイスキュロス著 内山敬二郎翻訳 キンドル版)