愛の神エロース /キューピット4 大地の女神ガイア 冥界の王ハーデース 光明神アポローン 美と愛の女神アフロディーテー.そして,神々の王ゼウスもエロースの矢で射られればじっとしてはいられません. 自身で傷つけてしまった事に始まる「クピド(エロース)とプシュケの物語」は広く愛され,メルヘンの一原型であり,愛の寓話,愛を通した成長を象徴する物語.

エロースの力が愛を導いた多くの神々.

ガイアを除いては矢で射貫かれて,または傷つけられて.

・大地の女神ガイア

・冥界の王ハーデース

・光明神アポローン

・美と愛の女神アフロディーテ

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もちろん,次の物語のように,神々の王ゼウスも例外ではありません.

 

▽エウローペ 山室静 ギリシャ神話

抜粋

エウローペ(ヨーロッパ)フェニキアのキュロスの王の娘だった.

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夜があけるとさっそく侍女たちをつれて浜辺へ出ていった.涼しい海風に吹かれながら,若い娘たちはさんざん走りまわったり,踊ったりした.

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オリンポスの上から下を見ていたゼウスがそれを見つけた.

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浮気者のゼウスだけれど,それでもこの時は,すぐにエウローペをどうしようというまでの考えはなかったという.ところが,いたずら者のクピド(エロースのローマでの名前,英語読みキューピット)が,彼の胸を射た,いくら大神のゼウスだって,じっとしてはいられない.

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彼はまず,雪のように真白い一頭の牡牛(三色まだらの牛ともいう)に姿を変えて,ゆっくり娘たちのところへ近づいて行った.

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Mythology: Olympian deities in classical Greek and Roman religion, Europa was a virgin Phoenician princess

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エウローペー - Wikipedia

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彼らはぶじクレタ島について結婚式をあげた.エウローペは幸福な生涯を送って,ゼウスのためにミノスとラダマンテスを生んだ.これがクレタ王家のはじまりだとされる.

 山室静 ギリシャ神話

 

概要は以下のサイトで.

ギリシャ神話|ゼウス:エウロペーの誘拐 絵画で学ぶギリシャ神話 – ゼウスとエウロペ(エウローペー)

 

 

「エロースとプシューケー」(「クピドとプシュケ」)

古代ローマ時代につくられた物語なので,ローマ風に「クピドとプシュケ」と書かれている場合の方が多いようです)

この物語では,エロース自身の愛も彼の矢の傷が後押しします.

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Psyche Revived by Cupid’s Kiss | Musée du Louvre

 

多くの人々に愛されてきた物語.

また,メルヘンの一原型,「愛は魂と結びついて本物の悦びを得る」という寓話といえます.

そして,近年では,愛を学ぶことを通して自己を見つめ成長することの象徴ともなっているようです.

 

メルヘンの原型の一つ

山室静 ギリシャ神話 では

 紀元二世紀のローマの詩人アプレイウスが書いている話だから,純粋な神話とはいえない.なにか神話あるいは民間の伝説にもとづいているのかも知れぬが,大方は彼自身の創作とみるべきだろう.それにしても大変美しい物語で,しかもヨーロッパに多い「いなくなった夫あるいは愛人を捜して遍歴する女」のメルヘン(昔話)の原型ともいうべき話で,一般にそのような話を「クピドとプシュケ」型と呼んでいるほど,広く親しまれている.

 

「愛は魂と結びついて本物の悦びを得る」という寓話

Novellaのウェブサイトhttps://novella.one/eros-psyche によれば,

エロス(欲望の愛)とは

「自己充足を求めて,自己を充たしてくれるものを無限に追求していく情熱(パトス)」.絶対的で無条件名な愛(アガペー)と違い,自分にとって価値あるもののみを愛し,価値がないものは愛さない,あくまで自己充足的な愛なのです.

エロスの愛(欲望)は,魂(プシュケ)と結びついて初めて本物の悦びを得るということを,この寓話は説いているのです.

 

愛を通した成長 

The myth of Psyche and Eros

プシューケーは,ギリシャ語の “psyche(魂)” の名をもっているように,魂の女神になります.近世では,プシューケーの物語は,本物の愛を学び,失い,継続させることを通して自己を見つめ,自己を成長させることの象徴となっています.

Psyche became, as Greek word “psyche” implies, the deity of soul. To modern days, the myth of Psyche symbolizes a self-search and personal growth through learning, losing, and saving the real love.

 

 

▽クピド(エロース,英語ではキューピット)とプシュケの物語 山室静 ギリシャ神話

前半の抜粋(概要は終わりに記載したウェブサイトにあります)

あるところに,三人の姫をもった王様がいた.姫は三人とも美しかったが,中にも末の娘プシュケ(英語読みならサイキで,心の意味)はずばぬけて美しく,まるで神のように見えた.その美貌の評判は国々に広まって,いたるところから人々は姫を眺めるためにやって来ては,この世の人とも思われないその美に感嘆するのだった.そしてみんなは彼女の美しさは美の女神ウェヌス(ヴィナス)をさえしのぐとして,争ってプシュケをたたえた.そんなわけで,ウェヌスの神殿はすっかりおろそかにされて,訪れるものもなくなった.

 

美の女神が,こんな侮辱にたえられるわけがない.そこで女神は,こんな場合にいつも助けを求める息子のクピドを呼んで,言いつけたー「いつものお前の弓矢で射て,あのいまいましい女を,この世で一番いやらしい醜い男に恋させておくれ」

クピドは羽根のはえた美しい若者で,弓で射ることがうまい.そして彼の矢にあたったものは,神様だろうと人間だろうと,のがれようもなく恋のとりこになってしまうのである.

母親の命令をうけたクピドは,さっそく悪い女をこらしめに出かけたが,プシュケを一目見たとたん,とんだことになってしまった.彼はどうやらプシュケの美しさにおどろいて,自分の矢で自分の胸を傷つけてしまったらしい.そして,そんな十分を恥じて,母親には何も言わず,身を隠してしまった.

さて,ウェヌスは,息子に言いつけておいたから,たちまちプシュケは卑しい男と恋をして破滅してしまうものと期待していたのに,ちっともその様子がない.彼女は誰をも好きにならず,ふしぎなことには,男たちは誰ひとり彼女に思いを寄せる者がいない.みんなは,彼女の美しさに驚嘆し,結婚しようなどとは思いもしないのだ.それは愛の神クピドが,自分で彼女に思いを寄せて,自分のものにしようと願っていたからだった.

 

二人の姉は,プシュケよりずっとみにくかったのに,それぞれ幸福な結婚をして王様のきさきになった.それなのに,一番美しいプシュケがいつまでも一人ぼっちでいて,誰も結婚を申し込む者がいない.こうなると両親は,ひどく心配した.とうとう父親は,はるばるとアポロン神の神殿に旅して,どうか末娘によい夫がえられますようにと神託をうかがった.

神託はあったが,おそろしいものだった.それは,クピドがすでにアポロンに自分の恋を話して,助けを求めていたからだった.

アポロンは王に告げたー「娘のプシュケは,喪服をまとわせて,岩山の頂上に一人で置くのじゃ.そうすれば,彼女の定められた夫の翼のあるすざましい蛇が来て,つれて行くだろう」

怖ろしい運命だったが,アポロンの神託とあっては,従わないわけにいかない.両親たちは泣く泣くプシュケを岩山の上につれて行った.しかし,プシュケは勇気のある娘だった.彼女はきっぱりいった.

「いまさら泣いても仕方がないではありませんか.わたしの美しさが,神々の妬みを受けたのですわ.さあ,お帰り下さい.わたしは喜んでわたしの運命を待ち受けましょう」

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山上に残されたプシュケの周囲には,早くも闇がひしひしと迫った.気丈な姫も,さすがに震えて,涙が頬をつたわった.ところが,とたんに気持ちよい西風が吹いてきたかと思うまに,涙が頬をつたわった.ところがとたんに気持ちよい西風が吹いてきたと思うまに,彼女の身体は軽やかに運ばれて,気がついた時には,香ばしい花の匂いにみちた草原の上にそっとおろされているのだった.深い平和がそこには立ちこめていた.あらゆる不安も怖れも消えて,彼女は安らかな眠りに落ちた.

やがて目がさめた時には,もはや明るい朝になっていた.傍らには清らかな川が流れていて,その岸に美しい城が建っている.黄金の柱,銀の壁,宝石をちりばめた床ーまるで神の住む宮殿だった.

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やがて夜になって,彼女が寝床にはいると,やさしく耳許でささやく声がして,誰かが彼女の隣に身を横たえた.姿を見ることはできなかったけれど,それが決して蛇でも怪物でもなく,彼女の待ちこがれていた夫であることを感じた.こうしてふしぎな結婚生活がはじまった.夫は昼間はどこかに姿を消してしまうが,夜になると彼女の隣に身を横たええて,やさしくプシュケを愛撫した.

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この前の訪問の時の妹との問答から,姉たちはすでに察していたーーきっと妹は,まだ夫の姿を見たことがないのに違いないと.

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「今夜は,寝床のそばに鋭いナイフとランプを隠しておいてね,夫が眠ってしまったら,ランプをともして正体を見届けるのです.そして相手が怖ろしい姿をしていたら,ひと思いに刺し殺してしまうのよ」

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やがて夫がぐっすり眠ったとき,彼女はそっと寝床を抜け出すと,ふるえる手でランプをともしてみた.

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File:Jacopo Zucchi - Amor and Psyche.jpg - Wikimedia Commons

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そこに横たわっていたのは,みにくい怪物どころが,彼女がかって見たこともないほど美しい若者だった.彼女はうっとりとその姿に見とれた.同時に,姉たちにおだてられて夫を裏切った悔恨が,はげしく胸をかんだ.

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ランプから熱い油がポトリと夫のむき出しにされた肩に落ちた.とたんに夫は目をさまして,ランプを手に自分をのぞきこんでいる妻をみとめると,無言ではねおきて,真暗な戸外に走り出ていった.

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「愛は信頼のないところでは生きていられないのだ」と.それきり彼の姿は消えて,声もきこえなくなった.

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プシュケは,いなくなった夫を捜して,さすらいの旅に出る.

一方クピドは,母のウェヌスの許に帰って,胸にうけた痛手を慰めてもらおうとした.しかし,ウェヌスは,息子が愛したのが憎いプシュケだと知ると,いよいよ嫉妬をもやして,あの女をこらしめてやらずにおくものかと考えた.

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The myth of Psyche and Eros

 

ギリシャローマ神話の書籍やウェブサイトには,ほぼ必ず掲載されていますので,通してご一読を.

 

山室静 ギリシャ神話(キンドル版)

トマス・ブルフィンチ ギリシアローマ神話(角川文庫)

ギリシャ神話|アフロディーテ:エロースとプシュケー1 

ギリシャ神話|アフロディーテ:エロースとプシュケー2 

ギリシャ神話|アフロディーテ:エロースとプシュケー3  

プシューケー - Wikipedia

エロス(クピド)とプシュケ 魂の昇華 │ Novella