「旧優生保護法」下の強制不妊手術に関わる報道が続いています. ▽「男性に興味」医師の判断で不妊.旧優生保護法下,資料に明記.▽強制不妊 法務当局も容認.厚生省に「身体拘束,麻酔も」.▽強制不妊手術.書面審査だけ決定12件確認.審査会省略.▽強制不妊手術.拒否した親に「無知と盲愛」 侮蔑の言葉.

優生保護法(1948~96年)下で障害者らへの強制的な不妊手術が行われていた問題

 

1月30日,知的障害を理由に不妊手術を強制された宮城県の60代女性が「重大な人権侵害なのに,立法による救済措置を怠った.旧法は憲法違反だ」として,国に1100万円の損害賠償を求める訴訟を,仙台地裁に起こしました.

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https://www.47news.jp/1430070.html

 

このブログでも,その内容について,簡単にまとめましたが

http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2018/01/31/024738

yachikusakusaki.hatenablog.com

以来,「旧優生保護法」に関わる報道が続いています.

 

国会もようやく重い腰を上げつつあるようです.

 

超党派議員連盟発足

この問題を考える超党派議員連盟が3月6日、国会内で設立総会を開きました.総会には自民、公明、立憲民主、共産、社民、維新、希望などから約20人が参加.

強制不妊手術:議連設立、20人参加 救済へ議員立法視野 - 毎日新聞

 

自民党の初期対応

自民党は当初は様子見だったが、尾辻秀久厚生労働相が会長に就くだけでなく、塩崎恭久厚労相が顧問となり、橋本岳党厚労部会長が出席。厚労分野に影響力を持つ各世代の議員の参加で、早期救済を急ぐ野党の独走を抑制し、政府が対応しやすい「着地点」を模索する思惑がにじむ”

強制不妊手術:自民、救済へ「着地点」模索 議連に重鎮 - 毎日新聞

  

▽その後,政府・与党が方針転換

政府・与党は全国的な被害の実態調査をする方針を決めました.自民、公明両党は救済策を協議するワーキングチーム(WT)の初会合を今月下旬に開き,国に調査実施を求める構え.厚生労働省はこれまで「当時は合法だった」として実態把握をしてこなかったが,被害救済を求める自治体の要望などを受けて方針を転換しました.

強制不妊手術:全国調査へ 政府・与党、方針転換 - 毎日新聞

 

そして,

当時の強制不妊手術について,数字以外の実態の一部が報道されています.

 

以下に次の四つの記事を転載させて頂きました.

「男性に興味」医師の判断で不妊.旧優生保護法下,資料に明記.

  共同通信社 2018/3/15

▽強制不妊 法務当局も容認.厚生省に「身体拘束,麻酔も」.

  東京新聞 2018年3月20日

▽強制不妊手術.書面審査だけ決定12件確認.審査会省略.

  毎日新聞2018年3月22日

▽強制不妊手術.拒否した親に「無知と盲愛」 侮蔑の言葉.

  毎日新聞2018年3月22日

 

 他にも幾つか注目すべき記事がいくつかあります.

 例えば,

取材帳から:今年を振り返って なぜこんな法律が /宮城 - 毎日新聞 

強制不妊手術:沈黙破る医師 「親の思いを受けた面が…」 - 毎日新聞

 

this.kiji.is

「男性に興味」医師の判断で不妊

優生保護法下,資料に明記


共同通信社 2018/3/15 19:243/15 19:25

https://this.kiji.is/346940338453546081?c=39546741839462401

 「不良な子孫の出生防止」を目的とした旧優生保護法1948年~96年)を巡る問題で,

知的障害者らが,「男性への興味」や「結婚の話がある」などの理由に基づき,本人同意のないまま予防的な対応として不妊手術の対象とされていたことが15日,共同通信が入手した都道府県現存の資料で分かった.

 

 優生思想を掲げた旧法の下,医師らの一方的な見解によって障害者らの人権が踏みにじられていた実態が浮き彫りになっている.

 旧法は知的障害や精神疾患などがある人には本人の同意がなくても医師が必要と判断すれば都道府県に設置の優生保護審査会の審査を経て不妊手術実施を認めていた.

 

 

www.tokyo-np.co.jp

強制不妊 法務当局も容認 

厚生省に「身体拘束,麻酔も」

東京新聞 2018年3月20日 朝刊

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201803/CK2018032002000147.html

 旧優生保護法下で障害者らへの不妊手術が繰り返された問題で,一九四九年に法務府(現法務省)が厚生省(当時)に対し,本人同意のない強制手術の手段として「真に必要やむを得ない限度で身体の拘束,麻酔,欺罔(ぎもう)の手段を用いることも許される」との見解を示していたことが十九日,愛知県が開示した資料で分かった.

旧厚生省も四九年に同様の通知を都道府県に出していたことが京都府の開示資料から判明.政府として強制手段を容認する姿勢が改めて明らかになった.

 

 愛知県が開示したのは「強制優生手術実施の手段について」とのタイトルで,法務府が局長名で四九年に厚生省公衆衛生局長に宛てた資料.

強制手術の手段について,厚生省が六二年に各都道府県知事に宛てた文書に,岐阜県の問い合わせに回答した際の文書が添付されていた.手書きで,公印は押されていない.

 

 手術を受ける者が拒否した場合,身体拘束や麻酔,だますなどの手段で拒否できなくすることが許されるかとの厚生省の質問に,

「最小限度であるべきはいうまでもない.具体的な場合に応じ,真にやむを得ない限度において許される場合があるものと解すべき」

と条件付きで容認した.

 

 この解釈について法務府は

基本的人権の制限を伴う」と認めながらも,

旧法には「不良な子孫の出生を防止する」という公益上の目的があるとした上で「意思に反して実施することも,なんら憲法の保障を裏切るものということはできない」と結論付けた.

 

 東大大学院の市野川容孝(やすたか)教授(医療社会学)は「愛知県の開示資料が強制手術の手段を定めたオリジナルの可能性がある.法務当局がお墨付きを与えていた格好で,通知に向けて国が準備を進めていたことがうかがえる」と話した.

 

 

mainichi.jp

強制不妊手術

書面審査だけ決定12件確認 審査会省略

毎日新聞2018322 0700(最終更新 322 0906分)

https://mainichi.jp/articles/20180322/k00/00m/040/138000c

優生保護法 違法審査,横行か 

 障害者らへの強制不妊手術の適否を判断するため,旧優生保護法(1948~96年)の施行令で開催が義務づけられていた審査会が省略され,「持ち回り審査」と呼ばれる書面審査だけで決定された手術が全国で少なくとも12人分確認された.

滋賀,岐阜,三重,福岡の4県が毎日新聞の開示請求や閲覧申請に開示した審査会議事録などの資料から判明した.いずれも,旧厚生省が53年に事務次官名で書面審査をやめるよう都道府県知事に通知した後に行われており,議事録には違法性を指摘する委員の意見も記録されていた.

 同法施行令は,「(審査会について)委員総数の2分の1以上の出席がなければ議事を開き議決することができない」「議事は出席委員の3分の2以上の賛成で決める」と定めていた.法令違反が横行していた疑いがあり,政府による全国調査の大きな焦点になりそうだ.

 岐阜県で63年1月に不妊手術の申請があった当時31歳の女性のケースでは,審査会を開く「いとまがないので便宜上書類をもって適否をご決定願いたい」と委員に要請.人工中絶に併せて強制手術の実施を求めたもので,委員6人全員が「適当」と判断していた.

 

 福岡県では81年3月~82年3月の1年間に書面審査が少なくとも6件あり,20~39歳の男女6人の手術を「適当」と判断した.議事資料には,審査会委員長名で書面審査を委員に諮る内容の決裁文書などがあり,「委員の都合上早期に開催できない」「早急な手術が必要」と理由を記していた.委員からは「不良な子孫の出生を防止するためやむを得ない」「育児能力がない」「貞操感がない」「公益上(手術が)必要である」などの所見があった.

 

 滋賀県では71~72年に3件確認され,いずれも「手術は適当」と決定されていた.71年2月作成の文書によると,当時「先天性精神薄弱」と診断された20代女性について「今回に限り持ち回り」審査を要請.翌72年2月の文書でも,20代と30代の女性2人について「諸般の事情」から持ち回り審査をしたいとしていた.

 

 三重県は70年5月,71年6月の2件で「持ち回り決裁いたしたい」と打診し,「手術の実施に早急を要する」と理由をあげていた.ところが,77年6月議事録では,持ち回り審査の打診に委員らが「審査会を開くとなっている」「持ち回り決裁は避けたほうがよい」などと違法性を指摘していた.【遠藤大志,田中功一,西嶋正法】

 

都道府県の優生保護審査会

  旧優生保護法は10人以内の委員で構成するよう定めていた.委員は,都道府県の所管部局幹部のほか,検察幹部や裁判所判事ら司法関係者,県医師会長や保健所長,民生委員らから選出されていた.

 

「厳正な手続きの下で」崩れる 

 旧厚生省は旧優生保護法の改正から3年後の1999年,調査や補償を求める当事者団体との交渉で「手術は合法的になされた.従って,調査は不要.人権は十分配慮されていた」と回答した.その後,国際機関や日本弁護士連合会の救済勧告にも「(手術は)厳正な手続きの下で行われた」などと突っぱねてきた.

 

 しかし,4県が開示した資料から判明した書面審査による手術の適否判定は,法令違反の疑いがあり,国の主張は土台から崩れた.

 

 厚生省は法施行5年後の53年6月,「(審査は)各委員が審査会に出席して行うべきであって,書類の持ち回りで行うことは適当でない」とする事務次官通知を都道府県知事に出している.その時点で法令違反が起きていたことを物語っているが,今回確認された書面審査12件は,事務次官通知の後だっただけに事態は深刻だ.

 

 さらに,今回は資料が保存され,「不都合な記録」も開示した4県で明らかになったが,資料が見つからなかったり,黒塗り開示の多かったりする他の都道府県でも,同様の違法行為が行われていた可能性は否定できない.

 

 厚生労働省母子保健課は「(書面審査が)どれくらい行われたのか把握していない」という.審査会の開催と議決が法令で義務付けられたのは,当時でも人権侵害との批判があった強制不妊手術に対する手続きの「厳正さ」を担保するためだった.国は「知らない」ではすまされない.【遠藤大志,岩崎歩】

 

 

mainichi.jp

強制不妊手術

拒否した親に「無知と盲愛」 侮蔑の言葉

 毎日新聞2018322 0715(最終更新 322 0906)

https://mainichi.jp/articles/20180322/k00/00m/040/139000c?fm=mnm

 

 

開示した審査会資料 行政の執拗な説得,記録に

  旧優生保護法の施行令に反し,強制不妊手術の適否を審議会で審議しないまま書面だけによる委員の「持ち回り審査」で決めていた問題.滋賀県毎日新聞に開示した審査会資料には,書面審査で女性の手術が認められた後,拒否した親の理由を「無知と盲愛のため」と侮蔑し,手術を受けさせるよう執拗(しつよう)に説得していた事実が記録されていた.【遠藤大志,岩崎歩,岡正勝】

 

 手術は本人や家族の同意を必要としない同法4条に基づいていたが,親の反対で手術の実施が困難となったため,「同意を強制」しようとした当時の県の姿が浮かび上がる.

 開示された文書や県への取材によると,

女性は20代で「先天性精神薄弱」と診断され,医師が強制手術を県審査会に申請した.しかし,審査会は開かれず,1971年2月20日の「持ち回り」審査で委員7人全員が個別に賛成し,手術が決定した.

 

 ところが,同3月16日付で,申請した医師が審査会に女性の手術中止届を提出.親が何らかの理由で手術に反対したためとみられ,開示資料によると,県は親に対し,手術を受けるよう何度も説得を試みていた.

 

 同6月30日の決裁文書によると,法律上必要のない親の同意書を「念のため徴取した」とした上で,女性の親が「無知と盲愛のため」に保健所などの説得を拒絶していると記述していた.「関係者の努力により,農繁期が終われば(手術を)受けることの約束を取り付けたが,またしても言を左右にして拒否し,やっと10月ごろにしてほしいと申し立てている」と書いていた.

 

 その上で「期日を延ばすことにより,結局は手術をのがれようとしていることが推量される.保護義務者のいうままにしていても時間を徒過するだけ」と指摘.県は同7月31日までに手術を受けさせるよう再度の通知送付を決定するなど,最後まで説得を続けたことを記録していた.

 

 一方,都道府県の優生保護審査会の決定に異議がある場合,国の中央優生保護審査会への不服申し立てを認められていた.しかし,滋賀県の開示資料から家族に説明されたことを示す記述はなかった.

 

 96年同法改正後の母体保護法を所管する県健康寿命推進課の担当者は「今から思うとひどい表現だと思う」としつつ,女性が実際に手術を受けたかどうかについては記録がないとしている.だが,開示資料にある女性や親の名前の欄は黒塗りされており,生存していれば本人への確認は可能とみられる.

 

 同課は,県独自の調査は現時点では考えていない,としている.