アポローン(アポロン)2 愛したのは女性だけではありません.アポローンに愛された男性の中で,よく知られているのがヒュアキントスとキュパリッソス.円盤が当たって死んでしまったヒュアキントスの流した血から「ヒアシンス」が生まれます.大好きな鹿を殺してしまったキュパリッソスは,イトスギに変身しました.

ギリシャ神話の中でも,最も美しいアポローンギリシャ神話 山室静

沢山の恋人や配偶者がいて,英語版ウィキペディアには60人以上の名前が!Apollo - Wikipedia

昨日とりあげた月桂樹になったダフネもそのうちの一人.

http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2018/03/02/021323

yachikusakusaki.hatenablog.com

片思いの女性も多かったでしょう.

花のギリシャ神話では,

「海神オーケアノス(オケアノスOceanus)の娘,水の精クリュティエがアポローンに恋い焦がれてヒマワリになった」としています.

しかし,Clytie (Oceanid) - Wikipediaによれば

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ギリシャ神話でのもともとの太陽神へーリオス(ヘリオス)に片想いした」のが,真相?

へーリオスは,いつの間にかアポローンに太陽神の座を明け渡してしまった?神様です.

 

アポローンが愛したのは女性だけではありません

Apollo - Wikipediaには,13名の男性名が!

そのうち,よく知られているのが,ヒュアキントスとキュパリッソス.Apollo - Wikipedia APOLLO MYTHS 2 LOVES - Greek Mythology

 

アポローンとヒュアキントス 

ギリシアローマ神話(上) トマス・ブルフィンチ,大久保博 訳 角川文庫 より 

一部を以前にhttp://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2017/12/16/011927

で引用したお話しです)

アポローンはヒュアキントスという名の少年を非常にかわいがっていました.そこで,いろいろな運動にこの少年を連れて行きました.

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https://sites.google.com/a/syd.catholic.edu.au/boudica/

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ある日のこと,二人は円盤投げの遊びをしていました.

アポローンは円盤を頭上たかく振りあげ,力に技を加えて,それを高く遠くへとばしました.

ヒュアキントスは円盤の飛ぶ様子をじっと見つめていましたが,この遊びに心を躍らせて,つい自分も投げてみたい一心から,その円盤を捕らえようと駆け寄りました.

その時この円盤が地面からはねかえり,ヒュアキントスの額に当たったのです.

彼は気を失って倒れました.

アポローンは,少年と同じようにまっ青な顔をして,彼を抱きおこすと,その傷口から流れ出す血を止めて彼の去りゆく命を何とかとりもどそうと,自分のもっているあらゆる術を試みたのですが,すべて徒労に帰してしまいました.

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Hyakinthos – Wikipédia

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「 ---私はおまえに代わって死んでやりたい!

しかしそれもかなわぬことゆえ,おまえを記憶と歌との中で私といっしょに暮らせるようにしてあげよう.私の竪琴におまえを褒め讃えさせ,私の歌におまえの運命を語らせよう.

そしてまたおまえ自身は,私の嘆きを記した花にしてあげよう」

アポローンがこう話している間にも,どうでしょう,いままで地面に流れて草を染めていた血潮はもう血ではなくなってきました.

そしてテュロス染めの衣よりももっと美しい色をした花が咲きでてきたのです.その花は百合に似ていましたが,百合の花が銀白色であるのに,この花は深紅色をしていたのです.

そして,ポイボス(アポローンのこと;「光明神」と訳される)はこれだけでは満足せず,更に大きな名誉を与えるために,その花びらに「ああ!ああ!という文字(ギリシャ文字でαι αιと綴る)を書きしるしたのです.この花にはヒュアキントスという呼び名がついていて,毎年,春が巡ってくると,この少年の悲しい思い出をよみがえらせるのです.

 

一説には,ゼピュロス(西風の神)もこのヒュアキントスが好きだったのですが,少年がアポローンの方に惹かれるのを恨んで,あの円盤が針路をはずれてヒュアキントスにあたるようにわざと風を吹かせたのだとも言われています.

 

ヒュアキントスの血から生じた花はヒアシンス(ヒヤシンス)では無い!?

テュロス染め(帝王紫)の衣よりもっと美しい色」

「百合に似ていましたが,百合の花が銀白色であるのに,この花は深紅色」

ギリシャ文字でαι αιを書きしるした」

などの部分がヒアシンス(当時のものは淡い青紫色だったようです)とは合わないため,現在のヒアシンスとは異なる植物とされているようです.

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ヒアシンスとは - 植物図鑑 Weblio辞書

上記の物語を引用元「ギリシアローマ神話(上) トマス・ブルフィンチ,大久保博 訳 角川文庫」では,

「現在のヒアシンスではない」と断定.

「アヤメ科の一種か,さもなければ,ひえんそう,あるいは,パンジーの一種でしょう」としています.

また,

ランダムハウス英語辞典では,hyacinthの【4】として,

「美少年 Hyacinthus の血から生じたと伝えられる植物;アイリス,グラジオラス,ヒエンソウなど」

としています.

http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2017/12/16/011927

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 Iris (plant) - Wikipedia Gladiolus - Wikipedia http://www.okadanouen.com/zukan/hiensou.html

 

キュパリッソス 糸杉になった少年

ギリシャ神話|アポローン:キュパリッソス 糸杉になった少年

キュパリッソスは,まれにみる美少年.アポロン神からも愛されていました.

ケオス島のカルタイアの野のニンフに捧げられた金色のツノを持った大鹿がいました.

村人はみんなこの大鹿をかわいかって,頭をなぜてあげました.とりわけ,キュパリッソスはこの大鹿を誰よりもかわいがっていました.彼は大鹿を新しい草を食べさせに行ったり,澄んだ泉に水を飲みにも連れて行きました.花輪を編んではツノにかけたり,大鹿の背中に乗って遊んだりしていました.

ある暑い日,大鹿は木陰で休んでいました.キュパリッソスは間違って,持っていた槍で大鹿を突き刺してしまいました.死にかけている大鹿を見ていると,少年は自分も死にたいと思いました.

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Cyparissus - Wikipedia

「嘆きはそのくらいにして,あまり度を超すことがないようにしなさい」

アポロン神はできるだけの慰めの言葉をかけました.が,キュパリッソスはうめくばかりで,アポロン神に最後の願いとして,いつまでも嘆いていたいと言うのです.さすがのアポロン神さえ,もうどうすることもできません.

やがて,悲しみのために血もかれて,その体はひからびて緑色になりました.髪の毛は逆立ち,細い針のような葉となり,梢となり,空を仰ぐようになりました.糸杉になってしまったのです.

アポロン神は,最後に糸杉になったキュパリッソスに優しく声をかけました.

「お前への哀悼は,私がしよう.そのかわり,お前はほかの人々を悼み,悲嘆にくれている者たちの友となるのだ」

 以上はギリシャ神話|アポローン:キュパリッソス 糸杉になった少年

の記載です.

 

しかし別ヴァージョンもあるようで,英語版ウィキペディアでは,次のようになっています.Apollo - Wikipedia

 

アポローンが愛したもう一人(ヒュアキントス以外)の男性は,ヘラクレスの末裔のキュパリッソスです.

アポローンは彼に遊び相手としておとなしい鹿を贈りました.しかし,その鹿がやぶで眠っている時,キュパリッソスが誤って槍で殺してしまいました.

キュパリッソスは,涙をずっと流し続けさせてくれるよう,アポローンに哀願します.

アポローンは願いを聞き入れて,キュパリッソスから名前を付けたCypress(イトスギ)に彼を変身させました.イトスギの樹液は幹に涙のような水玉をつくるため,哀しみの樹と呼ばれるようになりました. (拙訳)

Another male lover was Cyparissus, a descendant of Heracles. Apollo gave him a tame deer as a companion but Cyparissus accidentally killed it with a javelin as it lay asleep in the undergrowth. Cyparissus asked Apollo to let his tears fall forever. Apollo granted the request by turning him into the Cypress named after him, which was said to be a sad tree because the sap forms droplets like tears on the trunk. Apollo - Wikipedia

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 Mediterranean Cypress

 

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