ゴボウ(3) ごぼうの花はアザミの花そっくり.実はひっつき虫にして,漢方生薬.でも「山ごぼう」は食べられますが,「ヤマゴボウ」は食べられないので注意!? 

ごぼうの花ってどんな花?

今が旬のごぼう.冷たい地面の下で,じっくり育ち,旬の美味しさを貯めこんでいます.

ごぼう(1) 茨城県行方(なめがた)市.岡崎さんがいただいた「ごぼう鍋」はとても美味しそうでした.yachikusakusaki's blog

ゴボウ(2) 旬のごぼうをもっと美味しくする技.+ゴボウの栄養・歴史 yachikusakusaki's blog

でも,野菜は花が咲く前に収穫するので,花を見る機会が少ないのが一般的.

ごぼうの花って?

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ゴボウ - Wikipedia

アザミそっくりなんですね.それもそのはず.ゴボウは

キク目 Asterales,キク科 Asteraceae,

アザミ亜科 Carduoieae,アザミ連Cynareae,

ゴボウ属 Arctium,ゴボウ A. lappa

キク科の中でも,アザミ,そしてヤグルマギクヤグルマソウ)や,最近時々見かけるアーティチョークチョウセンアザミ 蕾を食べます)と近縁.

 

そもそも,「平安時代に,アザミに取って代わって食べられるようになったhttp://www2.odn.ne.jp/shokuzai/A2003/Gobou.htm)」.

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 pixabay.com ノアザミ - Wikipedia モリアザミ - Wikipedia

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ヤグルマギク 新・花と緑の詳しい図鑑 アーティチョークとは|ヤサシイエンゲイ

 

ごぼうの実はひっつき虫.

それではゴボウの実はどんな実なのでしょう?

何と強力なひっつき虫.オナモミ型です.

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https://plantsam.com/arctium-lappa/ ひっつき虫

「くっついたら離れません!~野生のゴボウ~」のタイトルでも紹介されています.

すごい自然のショールーム --- くっついたら離れません!~野生のゴボウ~

そして,この記事には,以下のような紹介も.

「メストラル(スイスの発明家)は考えました.『ゴボウが付着する原理をヒントに,2枚の布を密着させれば,ワンタッチで取り外しができる!』

そして試行錯誤の末,1950年代半ばに特殊ナイロン糸を使用して,無数の鉤と輪で構成された面ファスナーを完成させました.バリバリっとはがすテープ,現在の「マジックテープ」の原型の誕生です」

 

ただ,細かいことを言えば---

参考にしたのは,日本人が食べているゴボウ(英語でgreater burdock)ではなく,近縁のlesser burdock( little burdock,学名Arctium minus)だったようです.

英語版ウィキペディアに詳細な紹介がありました.マジックテープの写真もつけて.

Hook and loop fastener - Wikipedia Arctium minus - Wikipedia George de Mestral - Wikipedia

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乾燥させたごぼうの果実(種子)は漢方生薬.

そして,この果実を乾燥させたものは,漢方薬として有名で,現在でも公式な薬として用いられています(=日本の薬局方にも掲載).

“「牛蒡子ゴボウシ」または「悪実アクジツ(果実の形が悪く、釣り針状の刺が多いため)」と呼び、消炎,解毒,解熱,排膿などの作用があり,駆風解毒散(さいこせいかんとう)、消風散(しょうふうさん)、柴胡清肝湯(サイコセイカントウ)などに配合されている.”

ゴボウ:武田薬品工業株式会社 京都薬用植物園 ゴボウ|薬用植物フォトライブラリー フォトライブラリー|武田薬報web

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ヤマゴボウという植物は毒で食べられませんが,山ごぼうの漬け物は売られている!?

ヤマゴボウ」という名前を持った植物があり,ヤマゴボウ属に分類されていますが---

なんと,いずれも毒を持っていて,食べられません.

ナデシコ目 Caryophyllales,ヤマゴボウ科 Phytolaccacea,ヤマゴボウ属 Phytolacca.

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自然毒のリスクプロファイル:ヨウシュヤマゴボウ |厚生労働省 ヨウシュヤマゴボウ - Wikipedia マルミノヤマゴボウ Phytolacca japonica  三河の植物観察

中でも,ヨウシュヤマゴボウは北アメリカ原産ながら,帰化植物として日本で身近に見ることができ,厚生労働省のサイトでも取りあげられています.

ヨウシュヤマゴボウ

:果実と根に有毒成分を含み,食べると 腹痛・ 嘔吐・下痢を起こし,ついで延髄に作用し,けいれんを起こして死亡する.皮膚に対しても刺激作用がある自然毒のリスクプロファイル:ヨウシュヤマゴボウ |厚生労働省

古株の根は全く似ていないのですが,若い根はゴボウに似ている.これで「ヤマゴボウ」の名前がついていたら,間違えそうですね.

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そして,やっかいなことに---

「山ごぼうの漬け物」が各地で売られている.

“「山ごぼうの漬物」として市販されているのは、モリアザミの根やゴボウの細い根を漬けたものです”とのこと.

漬物の山ごぼうとヨウシュヤマゴボウ(東京都薬用植物園)

 

食用山ごぼう?のモリアザミは古来から食べられていたようです,ただし都会では見かけることはないとのこと.

どのような香りと味がするのか?一回,生のモリアザミの根を料理して食べてみたいですね.

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最後に---

ヨーロッパではゴボウを食べていないと思っていましたが---

Arctium lappa - Wikipedia  Only in Japan? Controversial mystery vegetable  によれば,

ヨーロッパでも中世には食べられていた.そのためフランスでは“legumes oublies”(forgotten vegetables”:過去に食べられて今では食べられていない野菜)に数えられているとのこと.

そして,ポルトガル・イタリア・ブラジルでは稀にではあるが今でも食べられている.

とのことです.

 

なお,ベルギー、フランス、オランダ、ドイツなどで広く栽培されている,一見ゴボウに見える野菜に“スコルツォネラ”(ブラックサルシファイ、スパニッシュサルシファイ、ブラックオイスタープラント等とも呼ばれている)があります.日本名はキバナバラモンジンキバナバラモンジン - Wikipedia

 

根の外見はゴボウにそっくりでに見えます.

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この写真を見ると.日本語版ウィキペディアにかなり詳しく紹介していた「太平洋戦争時の捕虜虐待とゴボウ」の話:捕虜にゴボウを食べさせたところ,木材を食べさせたとして虐待の罪に問われた」,が,やや不思議に思えてきます.

というのも,「毒のあるヨウシュヤマゴボウを食べさせたと間違われ,虐待と思われた」と聞いたことがあったので---.

 

 

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