鏡餅:松飾りと共に正月定番の供え物.これも「ただの供え物でなく歳神の依代(よりしろ)」だそうです.

先日のブログで門松を取りあげました.行事やしきたりには全く疎く,知らないことばかり.

http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2017/12/29/001919

yachikusakusaki.hatenablog.com

松飾りと共に正月定番といえば鏡餅

f:id:yachikusakusaki:20171231014802j:plain

正月行事について|探る|日本鏡餅組合

 

なぜ鏡餅を供えるのか?やはり知識ゼロ

こちらについても調べてみました.

 

松の時にもお世話になった本:神崎宣武「しきたりの日本文化(角川ソフィア文庫)」を中心に.

ネット上の沢山の解説からは,かなり信頼できそうな「日本鏡餅組合」の記事(監修 新谷 尚紀氏)正月行事について|探る|日本鏡餅組合 鏡餅の秘密を探る|探る|日本鏡餅組合そして,「日本鏡餅組合」の記事を脚注にあげている定番ウィキペディア鏡餅 - Wikipediaも参考にしながら---.

 

▽初詣とは異なる各家での「年祝い

鏡餅について説明する前に,各家で行われる正月の行事「年祝い」について,次のことを押さえておく必要があります.

「歳神(年神)様という神様が各家庭に降りてくると考えられ,その幸運を授けてもらうために,さまざまな習慣が定着した」

「正月に祀るカミは,その年をつかさどる歳神(としがみ)」

 

▽「正月の鏡餅は,ただの供え物でなく歳神の依代(よりしろ)である」

神様にお供えするお餅,というのが私の認識でしたが,単にお供えするのではなく,松と同じ依代となるのが鏡餅

「歳神もマツに依(よ)り憑(つ)き,しかるのちに鏡餅にも依り憑く」ということだそうです.

その背景には,

「米粒にはイネの霊力(稲魂 いなだま)が宿ると信じられ,その米粒を凝縮した餅や酒は,米のもつ神聖な力が特にこもった食べものとみなされてきた」

ことがあります.

 

普段食べるお餅より一回り大きな鏡餅は,そのようなお餅の象徴とも言える存在なんですね.

 

また,現在では床の間や普段の神棚に供えられる鏡餅

f:id:yachikusakusaki:20171231015003j:plain

鏡餅 - Wikipedia

しかし,以前は歳神様専用の神棚「年棚/歳棚」や床の間に「拝み松」を特別に仮設し,歳神様を待ったそうです.

歳神様は外からやってくる神様なので,普段の神棚とは別に居場所をしつらえたということですね.

また,鏡餅以外に種々の食材,たとえば,ダイダイ・ミカン・カキ・エビ・カズノコ・昆布などを供えるのが一般的で,一年の豊穣を祈念したとのこと.

現在はダイダイを置くことだけが残っていますが.

 

そして,鏡開きには,歳神の御魂を分け授けてもらい,福寿を願っておかげを食することになります.

 

鏡餅の名前と形の由来

鏡餅という名称は,昔の鏡(青銅製の丸形)に似ていることによるそうです.

この「鏡」という名前からも「カミの依代」であることがうかがえるとしているのが,神崎宣武氏で,次のように書いています.

「鏡は三種の神器のひとつに数えられる.古来,心霊は鏡に依り憑くとされた.神体が鏡となっている神社も少なくない.また,鏡山,鏡石,鏡池,鏡坂など,鏡という字を冠した地名のところは,なんらかのカミが天降りしたとされる聖地であるところが多い」

鏡餅は,その形状が丸い(=鏡の形)ことに意味がある.ある時代から,食用の餅がのし餅(角餅)として分布した東日本の各地でも,鏡餅にかぎってはすべて丸餅なのである」

 

一方,日本鏡餅協会の記事では

鏡餅の丸い形は心臓を象徴化したものといわれ,年神様に力を借りて魂の再生を図ったと伝えられています」とも.

ただし,神崎氏はこの説に懐疑的で,

「丸餅を重ねる.これは,一説には心臓をかたどたったもの,といわれる.もっとも,古代の日本人がどれほど心臓のかたちを明確にとらえていたかどうか.たぶん,のちの世に流布した俗説であろう」

としています.

 

 

なお,神崎氏の本は,古来から日本各地,特に農村で行われてきた伝統的な習慣を踏まえた記述です.

しかし,日本鏡餅協会の記事では

源氏物語に『歯固めの祝ひして、餅鏡をさへ取り寄せて』とあるため,「正月に餅を食べるのはこの儀式に由来している」としていました.

源氏物語の記述は平安貴族の館に鏡餅が既にあったことを示しています.しかし,これを根拠に,「全国にひろがっている餅を正月に食べるという習慣」が『歯固め』から来ている」とするのはかなり疑問.

「米のもつ神聖な力,米粒を凝縮した餅,その象徴としての鏡餅を歳神の依代とし,その歳神が宿った餅を食べる」という考え方に説得力があります.