正月に松飾りはつきもの.
年の瀬,小さなフラワーショップにも,松が売られています.
http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2017/12/28/001146
“たとえ他を省略しても,松だけは欠かさない” というお宅も多いように思います.
「松は一番縁起がいい」から?
日本にある二種の松:クロマツとアカマツ.クロマツ(黒松) - 庭木図鑑 植木ペディア 名木ガイド(岸澤邸のアカマツ)/東松山市ホームページ
松・竹・梅での等級づけになれている日本人のほとんどが「一番縁起がいい樹木」として松をあげるでしょう.
有岡利幸氏はその著書「花と樹木と日本人(八坂書房)」で,
「松は『めでたいこと』の譬(たと)えともなる.それは,松が長生きで,さらに一年中,青々とした緑の変えず保ち続けるところから,節操,長寿,繁茂などに譬えられる」
「我が国では縁起の良い木の第1にあげている」としています.
秦の始皇帝以来,松を優れた吉兆の樹木と評価してきた中国.その思想が日本につたわり,現在まで息づいているんですね.
しかし,松を正月に飾るのは,単に「一番縁起がよいから」,ではないようです.
松には他の飾り物にはない意味を持たせている---
「松は『神様が依りつく』もの」と日本人は考えてきた!
「松は常緑で,炎暑や風雪にも耐えて一年中その濃い緑色を保つので,古代から神聖・霊性の木,すなわち神の憑代(依代 よりしろ :祭りにあたって神霊が依りつくもの)とされてきており,現在の門松もこの意味で飾られます」 山田卓三「万葉植物つれづれ(大悠社)」
この文は,松ぼっくりに続いた話として一度引用させてもらいました.
yachikusakusaki.hatenablog.com
「憑代(依代)」としての役目を果たせるのは松だけ.他の植物や飾り物には与えられていないんですね.
神崎宣武「しきたりの日本文化(角川ソフィア文庫)」の一節も引用します.少し長くなりますが.
正月行事というと,今日では初詣ばかりが重視される傾向がある.がかつての日本では,各家で行われる年祝いこそが重要であった.
正月に祀るカミは,その年をつかさどる歳神(としがみ)である.
----(中略)
そのカミが山の彼方から「ゆずり葉」(ユズリハ)に乗ってやってくる.
----(中略)
そして.カミはユラユラと揺れながら降臨するのである.
----(中略)
歳神を迎えるには,まず家の中をきれいにかたづけなくてはならない.そこで,一年の埃をと煤(すす)を落とすために,「煤払い」をする.
----(中略)
煤(すす)払いが終わると,次に門松を立てる.
門松は,歳神がやってくるときの依代(よりしろ)である.
歳神がゆずり葉に乗ってやってくるのと同じように,マツ(松)にも乗ってやってくる,との見方ができる.
が,また,それを目標とし,それぞれの家に入る前にいったんとどまる仮宿的な依代,という見方もできる.これも,ひとつの説にしぼりこむこともない.
が,いずれにしても,カミの来訪のしるしであることにかわりなく,歳神を家に案内する役目をになっての依代なのである.したがって,門先でお役御免となり,飾られて立つことになるである.
門松は,いまではさまざまな形式が発達し,華美を競う傾向がみられる.また,それにつけて,なにやかやと理屈をつけて語られるようにもなった.たとえば,松・竹・梅をあしらえるのが云々.また,竹の切り方が云々とか,薦(こも)の巻き方が云々とか.
だが,本来,カミの依代としては,ただマツを立てるだけでよいのである.つまり,かたちではなく,マツそのものに意味があるのだ.
昨日のブログで取りあげた小さなフラワーショップには松の枝だけ並んでいました.門松の札がつけられて.
次に訪れた,高級フラワーショップ.
松の枝は立派.大王松というアメリカ産の松の長い葉も販売(どのように使うのでしょうか?)
松竹梅の盆栽も.
そして,
私が「これこそ門松.松だけは略式」と長らく思っていた門松も.