真弓と聞いて,字を見て---何を思い浮かべますか?私は,聞いても見ても,まず,人の名前だと思ってしまいます.同音の真由美さんは,一世を風靡した,しかし,1位にはなれなかった悲運の?名前. 真弓は万葉集に実に12首で読まれていますが,「丸木弓」に用いられていたことからの枕詞が多い.音の響きが良い? 真弓 / 万葉集 葛城(かづらき)の,襲津彦(そつびこ)真弓(まゆみ),荒木(あらき)にも,頼めや君が,我が名(な)告(の)りけむ  作者不詳

マユミ(真弓)はニシキギ属の植物の名前.

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万葉集にも詠まれている.

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マユミの写真<2> - 育て方図鑑 | みんなの趣味の園芸

 

しかし,マユミと聞いて,また真弓の字を見て---何を思い浮かべますか?

私は,聞いてもみても,まず,人の名前だと思ってしまい,植物のマユミなど全く思いもよらないこと.

つい最近までマユミという植物があることすら知りませんでしたから.

一方,名前としてなら,真弓さんという名の女性が知り合いにいましたし,阪神タイガースの真弓選手/監督の姓が世の中広く行き渡っていますよね.

万葉集/植物の話の前に--,つい「女性の名としてのマユミ」が少し気になったので,調べてみました.

 

女性の名前マユミ:昭和期一世を風靡した「真由美」さん

「まゆみ」を漢字変換させると,ATOKデフォルトでは70以上の候補が出てきます.そのほとんどは名前として使われそうなもの.

では,まゆみさんはどれほどいるのでしょうか?

 

様々な場面で引かれる「明治安田生命」の名前ランキング明治安田生命 | 名前ランキング2016 - 生まれ年別名前ベスト10 - 女の子

を開いてみると----

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明治安田生命 | 名前ランキング2016 - 生まれ年別名前ベスト10 - 女の子 

たくさんの「まゆみ」さんの中では,なんといっても「真由美」さん(.一世を風靡しました.

ベストテン入りした期間はかなり長く19年間(1961〜1979年).しかも,第2位にランクインした年が4年もある!しかし,残念ながら?1位にはなれなかった悲運の?名前.

1位を阻んだのは,初めは同じ「由美」をもつ「由美子」さん.ベストテン初出が1950年でしたから,仕方がないと言えば仕方がない.

いよいよ次には1位と思ったら,彗星のように現れた「直美」さんがトップに躍り出ます(1968〜1970年).そして,満を期して今度こそと思われた時には「陽子」さん(1971〜1974年).

それでもしばらく3位で頑張っていましたが---.

陽子さんに加えて.久美子さん,智子さん,裕子さんが上位に(1973〜1976年).力尽きていきます.

同じ音の「まゆみ」さんがどれほどおられたかはわかりません.「まゆみ」さんすべてを合算すればトップの時があったかも?

それでも真由美さんは,由美さんと合わせればおそらくトップと思われた時期がありました.例えば1967年.このときはベストスリーが由美子・由美・真由美!⇒ 由美子<由美+真由美?

また,1位にならずとも,特に歴史的な偉業も?

明美・由美さんとともに,女性の名前の最後の「子」がなくなっていく過渡期:終わりは「美」,の中心的な名前であった点.

平成に入ると終わりが「美」もなくなっていきます---.

 

植物としてのマユミ(真弓)

マユミは

ニシキギ目 Celastrales,ニシキギ科 Celastraceae,ニシキギ属 Euonymus,マユミ E. hamiltonianus

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yachikusakusaki.hatenablog.com

 

そして,万葉集に実に12首で読まれています.

しかし,ニシキギはありません.ニシキギの名は,万葉時代にはなかった可能性がありますが,候補になる他の名前も見当たらないようです.見事な紅葉だけでは万葉人の好みとは一致しなかったのかもしれません.

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マユミの写真<2> - 育て方図鑑 | みんなの趣味の園芸 ニシキギ(錦木) - 庭木図鑑 植木ペディア

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樹木図鑑(マユミ) ニシキギ(錦木) - 庭木図鑑 植木ペディア

 

一方のマユミ(真弓).材としての特性から,当時丸木でつくる「丸木弓」の材料になった!

そして,万葉集では,植物自体を詠むのではなく,「弓を張る・引く・射る」ことから,「はる」「ひく」「い」等の枕詞として用いられたり,「弓」そのものの意味で用いられているようです.

枕詞がどのようにして用いられるようになったのか私は知りません.しかし,名前をつける時,意味と同時に大事な要素「音」と「字体」のうち,万葉の場合は音が重要な要素なのでは?などと素人判断していますが---.間違っているかもしれませんが,「まゆみ」という音は良い響きですよね.

 

真弓 / 万葉集

葛城(かづらき)の,襲津彦(そつびこ)真弓(まゆみ),荒木(あらき)にも,頼めや君が,我が名(な)告(の)りけむ  作者不詳 (巻十一 2639)

葛城の,襲津彦真弓,荒木にも,頼めや君が,我が名告りけむ

 

楽しい万葉集 

たのしい万葉集(2639): 葛城の襲津彦真弓荒木にも頼めや君が 

葛城(かづらき)の襲津彦(そつびこ)が持つ弓に使う荒木のように,頼もしいあなたが,私の名を告げたのでしょうか.

「葛城の襲津彦」は,新羅百済に渡って戦った勇猛な人として伝えられています.「荒木」は,弓を作るための木を指します.

 古代,男性が女性の名を口にすることは求婚を意味していました.

 補足  寄物陳思(きぶつちんし: 物に寄せて思いを陳べる歌)のひとつです.