この声をきみに(1):大森美香さんチョイスの詩・絵本・物語.これを朗読する俳優さん(竹野内豊さん麻生久美子さん---)方の美しい声・技に聞き惚れます.そしていったんハマると抜け出し難いNHKドラマ10 この声をきみに:第5回「キスはどうですか?」と第6回冒頭の一部再録です.第7回が待ち遠しい.

脚本家・大森美香が満を持して送るオリジナル作品,上質な大人のエンターテインメント。そんな彼女がラブストーリーの舞台に選んだのが朗読教室.

声の交流を通して,主人公が女教師と「愛」や「人生」のレッスンを重ね, 個性的な生徒たちと一緒に,成長をしていく姿をキュートに,ロマンチックに描きます.ドラマのみどころ | この声をきみに

 

NHKドラマ10 この声をきみに

作 大森美香  演出:笠浦友愛(1・2・5・8話) 樹下直美(3・4・7話) 上田明子(6話) 制作統括:磯智明

f:id:yachikusakusaki:20171103023254j:plain

ドラマのみどころ | この声をきみに あらすじ・予告編動画 | この声をきみに

第1回〜第4回(番組ウェブサイトより抜粋)

穂波孝(竹野内豊)は,偏屈な数学科の准教授.話すことが苦手で,学生からの人気もない.

愛想を尽かした妻・奈緒ミムラ)は,子供と一緒に出て行ってしまう.高校生向けの公開授業では,サービス精神のかけらもない講義をして,孝は話し方教室へ行くように命じられる.

孝(竹野内豊)は朗読教室で聞いた,京子先生(麻生久美子)の魅力的な声が忘れられない.再び教室を訪ねた孝は,主催者の佐久良先生(柴田恭兵)に温かく迎えられ,船乗りの邦夫(杉本哲太)や無口なOL・泰代(片桐はいり),声優志望の実鈴(大原櫻子)など個性的な生徒たちと出会う.

 

孝(竹野内豊)と妻・奈緒ミムラ)の離婚協議が始まった.

孝はこどもたちの機嫌を取ろうと,息子が大好きな「くじらぐも」を読み聞かせることを思いつき,朗読レッスンに打ち込む.

そして,龍太郎たちと会う日がやって来る.心配する京子先生(麻生久美子)は,孝がいる公園に足を運ぶ.すると,同じように様子をうかがう奈緒ミムラ)の姿を見つける.みんなが見守る中,孝の朗読が始まると,奇跡は起こった….

しかし,孝(竹野内豊)は,奈緒ミムラ)との離婚を決意した.

 

第5回「キスはどうですか?」

2017年10月20日(金)よる10時 【再放送】2017年10月26日(木)午前0時55分(水曜深夜)

孝(竹野内豊)の数学研究室:

「うーん,これは」

学生「あっ---すいません.三国志のゲームやって,小説読み始めたらはまっちゃって」

「うーん.それはいい.読書やゲームの想像世界も,いつか数学的空間の想像に役立つかもしれない.この間読んだ詩集の中に,『ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん』という表現が出てきて,僕はその柔らかい表現になぜかトポロジーを感じた.『ゆあーん』はホモトピーの変数Sが,0から1に進むとき.1から0に戻るときが『ゆよーん』.その反動で曲線がはずむ時が『ゆやゆよーん』となる訳だ」

(学生達の笑い声)(ドアからそっと覗く女性事務員.信じられないという表情)

「はずむだろ?」

学生達「ゆよーん」

f:id:yachikusakusaki:20171103031109j:plain

中原中也全詩集の通販/中原 中也 角川ソフィア文庫 - 紙の本:honto本の通販ストア

 

初めてゼミの生徒と飲みに行くことになった孝.

店に着いたその時,ナゾの車に連れ去られそうになる京子(麻生久美子)を偶然、見かける.

 

京子を追う孝.

「大丈夫ですか?」

「いや1729のナンバーの車が---」「えっ」

「つまり1729はなかなか珍しい数だ.タクシー数ともいわれる2つの立法数の和で,2通りに表される最小の数で---.あっ,いや私はあのプライベートを詮索するつもりはないが」

京子「そうですね.数字のことは分かりませんけど,プライベートはお互い深く知らない方が良いでしょうね」[心の声「なに言ってんの私.自分はあんなとこまで見に行っておいて(孝の子どもたちへの朗読をそっと聞きに行った自分を思い浮かべて--)

「あ,はあ」[心の声「まただ.教室の外で会う先生は,いつも大概,声がとがっている」

-----

京子「昨日の夜は休んでしまってすいませんでした」

「あっ,いや,僕もあの電話の後.すぐに帰った」「えっ」

「離婚を決めたんだ.で,弁護士と話があって」

京子「そうですか」心の声:「子どもたちに上手に朗読をして,それで良い方向に行くはずなんじゃなかったの?」

-----

京子「あのー.私は穂波さんの声が好きです.温かくて落ち着いていて,きっとお子さん達にも穂波さんの気持ちは伝わったと思います.だから朗読を嫌いにならないで下さいね」

孝:心の声「先生の声が,いつもの優しい声に戻ってる」

立ち去る京子

-----

 

居酒屋

ヒモをもちあって『ゆあーん』『ゆよーん』『ゆやゆよーん』で盛り上がる学生達.

孝(笑顔で)「そうだ.トポロジーだ」[心の声「僕はなるべく家に帰りたくなかった」]

-----

孝の自宅

〈この部屋に家族が二度と戻ってくることがないという現実となるべく向かい合いたくなかった〉

-----

 

朗読教室で

佐久良先生(柴田恭兵「今日も京子先生はお休みです」

 

f:id:yachikusakusaki:20171103030851j:plain

心に太陽を持て 改版の通販/山本 有三 新潮文庫 - 紙の本:honto本の通販ストア

朗読

「心に太陽をもて あらしがふこうと ふぶきがこようと 天には黒雲」

 

〈「声には不思議な力がある」〉

 

「いつも 心に太陽をもて」

 

〈人の声を聞くこと.そして自分も声を出すことは,僕の気持ちを少し楽にした〉

 

「祈るように願う」 

「悲しみの海は深くはないと あの人が気づきますように」

「祈るように願う」

「何度でもやり直せることを あの人が 気づきますように」

「祈るように願う」

 

孝の回想:京子「私,人と人のつながりは信じていません.でも,この声のつながりだけは信じられる」

 

「祈るように願う」

「今 悩んでいる その場所から」

「心だけは 飛び出すことができることを」

「あの人が」

-----

朗読教室の仲間皆に気を使われる孝.

柏原(堀内敬子「あの〜.これね.子育て支援のコミュニティーなんかで,何度か読み聞かせしている本なの.男の人にプレゼントしたことはないけど受け取って」「気に入らなかったら誰かにあげちゃっても良いから」

『今日(訳:伊藤比呂美/絵:下田昌克)』を手渡す.

-----

 

 

ホームの父親(平泉成)を見舞う孝.

椅子で眠る父親.

〈もしかして,父さんにも(心の)ぽっかりが---〉

施設職員「お父様,足の具合はもう大分良いようです.予定通り,ご自宅に戻られるかどうか,ご本人とも,一度お話ししていただけませんか?」

------

実家の団地の部屋.

散らかったままの部屋.枯れた植木.

「母さんがいたときはあんなにきれいだったのにな」「母さんがいなくなってもう3年か」

------

 

孝の自宅

〈僕は佐久良先生が薦めてくれた本を読んでみることにした.どれも今まで興味を持ったこともない本ばかりだったが,話に浸り始めると現実を忘れた〉

ミラノ 霧の風景 須賀 敦子』を読む孝

------

〈僕の頭の中は数日のうちにイタリアやマカオニューデリー,-----

そして,日に何度かは本の中にあるどうと言う事のないフレーズを見つけては,家族のことを思い出した〉

------

『今日(訳:伊藤比呂美/絵:下田昌克)』を手に取る孝.

------

 

弁護士の手紙を読む孝の妻・奈緒ミムラ

弁護士の手紙〈本日孝さんの代理人から預かりました.孝さんからだそうです〉

f:id:yachikusakusaki:20171103030359j:plain

今日の通販/伊藤 比呂美/下田 昌克 - 紙の本:honto本の通販ストア

 

奈緒「今日 

私はお皿を洗わなかった

昨日こぼした食べかすが 

床の上から 私を 見ている

窓ガラスは よごれすぎて アートみたい

雨が降るまで このままだとおもう

人に見られたら なんていわれるか

ひどいねえとか だらしないとか

今日一日 なにをしていたの? とか

(遊ぶ子どもたちの声・映像)

わたしは この子が眠るまで 

おっぱいをやっていた

わたしは この子が泣きやむまで

ずっと だっこしていた

わたしは この子と かくれんぼした

わたしは ぶらんこをゆすり 歌をうたった

ほんとに いったい 一日 何をしていたのかな

たいしたことは しなかったね

でも こう考えれば いいんじゃない

今日一日 わたしは

澄んだ眼をした 髪のふわふわな この子のために

すごく大切なことを していたんだって

そして もし そっちのほうが ほんとなら

わたしは ちゃーんと やったわけだ」

 

f:id:yachikusakusaki:20171217005220j:plain

http://www.nhk.or.jp/drama10/myvoice/special/book.html

奈緒「でも--- どうして----.」

-----

-----

-----

〈佐久良先生に勧められた古本屋を探して道に迷っていたら,偶然磯崎さんに会った〉

 

磯崎「お目当ての古本屋さんはあそこよ.じゃあごゆっくり」

-----

古本屋の店内

(くしゃみ)

目を合わす孝と京子先生(マスクをつけている).顔を背ける京子.本棚を見る孝.孝の横をそっとすり抜ける京子.足早に店を出る.呆然と見送る孝.

(くしゃみ)

孝(店を出て)「先生!待って下さいよ.先生」

京子(振り返って,マスクを外し)「やだ,また遭うなんて」

「やっぱり先生---」

京子「先生,先生って,こんなとこで言わないで.教室に行けなかった理由,分かったでしょう.もう,構わないで」「いや,でも---」「あっ」

転んでしまう京子.レジ袋の中身がほとんど路上にばらまかれる.

集めながら,咳き込む京子.手伝う孝.

「計画性なく,健康なものと不健康なものを買いまくったという感じに見える」

孝が手にしたものを怒ったように取りあげ袋に入れる京子.

「ひょっとして一人暮らしですか?」「悪い?」「いいや.別に.何も悪いとは----」「なら構わないで下さい」「いやしかし」「来ないで!」(咳き込む京子)「いい?これ以上,深入りしないで」「臆病なんですね.いや別にせめてるわけじゃない.僕もそうだから」

倒れる京子.

「大丈夫?」「大丈夫です」

また倒れる京子.

-----

京子をオンブして歩く孝.

京子「子供の頃,良く空想してました-----」

-----

ベットに横になる京子.

京子「すみませんでした.結局ここまで」「ああ---.病院は?」「僕は本来お節介な方じゃないが,この状況は気になる.このまま帰って良いのかどうか」「お帰り下さい」「そうですね.では,お大事に」

京子(帰ろうとする孝の背中から)「ひとつだけ.本を読んでくれません?」「本?」「眠れないの,ずっと----.いろいろ怖くて」「怖い?」「ううん.怖くない.やっぱり怖くなんてないわ(せきこむ)」[心の声:「もうやだ---.こんな事頼むなんて]」

「どの本が?」「ありがとう.どれでも」

特に選びもせず,一冊取りあげてページを開く孝.

 

f:id:yachikusakusaki:20171103031446j:plain

回転ドアは、順番にの通販/穂村 弘/東 直子 ちくま文庫 - 紙の本:honto本の通販ストア

「遠くから来る自転車をさがしてた 春の陽 瞳 まぶしい どなた」

京子「ふふふ なつかしい」「これは---詩?詩集?それとも--うん?歌の歌詞か」「いいえ.短歌です.五七五七七の.男女で交互に詠んでるんです.青い字が男性で,赤い字が女性で」「なるほど.睡眠には適さないな---(本を閉じる)」「いえ.それでいい.読んで下さい」

「観覧車 上るよ 君はストローをくわえて 僕は氷を噛んで」

京子「隕石で 手をあたためていましたが こぼれてしまう これはなんなの」

「暗記してる?」「そうみたい.夢中で読んでた---.15年くらい前かな(起き上がって孝の前に来て)まだ私が,江崎京子じゃなかったころ」「それは---」「たしか次の歌は『隕石の』」

「隕石の」

二人「ひかりまみれの手で抱けば きみはささやく これはなんなの」

(見つめ合う二人)

孝:心の声「なんとなく これ以上読むのは,危険な気がした.しかし---]

(孝の横に座る京子)

f:id:yachikusakusaki:20171103030231j:plain

あらすじ・予告編動画 | この声をきみに

 

京子「花束の花が次々枯れてゆく 抱き合ったまま朝をゆられて」

「くちびるでなぞるかたちのあたたかさ 闇へと水が落ちてゆく音」

京子「空よそらよ わたしはじまる 沸点に達するまでの 淡い逡巡」

回転木馬 泡を噴きつつ目をむいて 静かに止まる夏の沸点」

くだものはなにがすきですか」「すいか がすきです」

「なしはどうですか」「なしも すきです」

「ももはどうですか」「ももも すきです」

「キスはどうですか」「キスは くだものじゃありません」

「ちがいますか」「はい でも」

「でも?」「キスも すきです」

京子「ひまわりの擬態を一晩したままで あなたを待っていました ここに」

「窓という窓から月は注がれて ホッチキスのごとき口づけ」

京子「冷蔵庫の扉を細く開けたまま すりっぱのまま抱き合う夜は」

(見つめ合う二人)

 

f:id:yachikusakusaki:20171217003435j:plain

http://www.nhk.or.jp/drama10/myvoice/special/book.html

 

第6回「もつれる2人」

2017年10月27日(金)よる10時【再放送】総合:2017年11月2日(木)午前0時10分(水曜深夜)

京子の部屋

本を片付ける孝

〈僕は混乱し,かつ満たされてもいた.この感覚には覚えがある.そう,メビウスの輪を作りまくっていた子供の頃.秘密を解明したいが,どうにも解けそうにない.はてしない迷宮に足を踏み入れた怖さと興奮〉

ふと棚にある壊れた腕時計をみつけ手に取る孝

孝:回想孝の結婚&京子の結婚のための教会での説明の場.隣り合わせる二人) 京子「私は連れが急な出張で海外に行ってしまって.どうせ一人なんです.(腕時計を見せて)これおわびの品ですって」]

眠る京子に近づき凝視する孝.静かに近づいてみつめ,そっと手を顔に近づけると)

京子「わっ.えっ?えっ?」「ビックリした」「何」「いや あの---その----あまりにもぐっすり寝ているので呼吸をしているのかと心配になった」「あっ---ああ---.もう大丈夫」

立ち上がりふらつく京子

京子「ごめんなさい」「いや---こっちこそ」

「あの〜心配はいらない.その---心配しなくても,寝て居る間に何かしたりはしていない」「そんな心配していません」「そう---.何もしていない.少し片付けた以外は」「ええ.そうですよね」「そうです」「そうですよ.私たち何もしていません」「あっ---.そう---」

京子:心の声「何?今の間---」

「そう.何もしていない」

孝:心の声「そういえば何もしていなかった」

京子「ですよね.本を読んだだけで---」

京子:心の声「ただ読んでいただけなのに--」

孝:心の声「だったらなぜだ?なぜこんなにきまずい?」

京子:心の声「なんでこんないきまずいのよ」

「そろそろ大学が」「そうですね」「はい」

〈ぼくらはまるで誤ってセックスでもしたかのような緊張感でその場を離れた

  

孝(竹野内豊)と一夜を明かした京子先生(麻生久美子)は、何事もなかったように朗読教室に現れる。そんなミステリアスな京子の魅力に、ますます取りつかれて行く孝。その一方で孝は、施設にいる父・定男(平泉成)の対応にも頭を悩ましていた。

朗読教室ではそれぞれの思いが行き交い---

実鈴(大原櫻子)が、雄一(戸塚祥太)に恋心を.しかし雄一は、自らがトランスジェンダーではないかと皆の前でのカミングアウト.

定男がいる施設の朗読会で,孝も参加した「おじさんのかさ」作・絵:佐野洋子の朗読.父子のわだかまりが和らぎ,父との同居を提案する孝.