10月5日のブログでは,次のような記事を書きました.
“Sweet William” 及び
“Pink” (主なもので9種類)
と呼んでいるようです」
http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2017/10/05/021933
そして,「Pink」のお借りした画像を3つ掲載しました.
The Deptford pink: a plant on the verge | Life and style | The Guardian Maiden Pink, Dianthus deltoides - Flowers - NatureGate Dianthus carthusianorum "Clusterhead Pink" - Buy Online at Annie's Annuals
「どれも,『Pink』の名にふさわしい色」
「当然,この色から,これらの植物は『Pink』と名付けられた」
と思ったのですが---
その後,
「身近な花の知られざる生態 稲垣栄洋 PHP研究所」のダイアンサス(ナデシコ科)を開いてみると---
最後の一言:
「この花こそが,ピンクの語源なのである」
あわてて調べてみました.
pink | Definition of pink in English by Oxford Dictionaries
では,
pink [1]:形容詞(赤と白の中間色の 拙訳),名詞(ピンク色)
語源:
17世紀中頃,pinkから.初めはこの植物の花の色を表す形容詞として(拙訳)
Origin
Mid 17th century: from pink, the early use of the adjective being to describe the colour of the flowers of this plant.
そして,
pink[2](ユーラシアに分布する草本性植物--,ダイアンサス属=ナデシコ属-- 拙訳)
語源:
16世紀後半,おそらくpink eyeの短縮形.意味は「小さな半分閉じた眼」.---(拙訳)
origin
Late 16th century: perhaps short for pink eye, literally ‘small or half-shut eye’; compare with the synonymous French word oeillet, literally ‘little eye’.
pink | Origin and history of pink by Online Etymology Dictionary
では,もう少し詳しく記載がありましたが,基本的には同様の解説が.
pink 色と花の名前の関係をまとめると:
16世紀後半,ナデシコ属 Dianthusの幾つかの種が「pink」(おそらく小さく閉じた眼の略)と呼ばれるようになった.
⇒17世紀中頃,植物pinkの花と同じ色を持つ様々なものを「pinkの---」と表現するようになった.
⇒色そのものを「pink」と呼ぶようになった.
英語でも植物由来の色名があり,しかもPinkが!
驚きました.
日本では沢山あるだろうな,とは何となく思っていました.
実際,「植物由来の色の名前」で検索すると,沢山の記事が見つかります.トップの記事では,ざっと40以上の名前が挙がってきました.
実際はもっと多いと思います.
しかし,英語ではそれほどないのでは,となんとなく考えていたら---
「ピンク」という基本の色の名前が植物ダイアンサス由来!
しかもピンクが日本でも完全に市民権を得た色の名前なので,驚きも倍加.
(日本にも「ナデシコ色」はあるそうです.ほとんど使われていない気がしますが,別名「似桃色」「Rose Buvard」で,ピンク色の1種類
撫子色 (なでしこいろ) の色見本 | 日本の色名 - color-sample.com)
でも,よく考えれば「色の名前が後から」は当然ですね
オレンジは,果物のオレンジ由来だろうと多くの人が思っているでしょう.
実際,
orange | Definition of orange in English by Oxford Dictionaries
のオレンジ色の説明は
「熟したオレンジのような明るい赤みがかった黄色」
(当然,改めて「語源」など記載していません)
ピンクが植物由来だからといって,ビックリしている私がおかしい.
単に「ピンク」という植物を知らなかっただけ.
「色の名前が,身の回りの物の名前,例えば植物の名前がつけられた後からになるのは当然」と思うようになりました.
付録:
基本の色名
・言語研究から基本色(basic colour )として,次の11種類の名前があるとされているとのこと.
ブラック,ホワイト,レッド,イエロー,ブルー,ピンク,グレイ,ブラウン,オレンジ,パープル
black, white, red, green, yellow, blue, pink, gray, brown, orange and purple
Column: How colors get their names | PBS NewsHour
・ほとんどの言語は基本色のうちの2〜11色の色を表す言葉を持っているそうです.
(注:ヒトが認識できる色全体をカバーする言葉が2つであったり,11であったりするだけで,少ない色名しか持たない言語のスピーカーが少ない色しか認識できないということではありません.
ヒトが色を区別する=光の波長の違いを識別する能力はほぼ同じで,色を識別する眼の働きが通常と異なる病気が色覚異常)
Column: How colors get their names | PBS NewsHour 色覚異常 - 目の病気百科|参天製薬 日本眼科学会:目の病気 先天色覚異常
・「英語の色の名前は,インド・ヨーロッパ語族の諸言語に共通の祖先『インド・ヨーロッパ祖語Proto-Indo-European、PIE』にさかのぼることができる名前(ブラック,ホワイト,レッド 等)とそれ以外の色名がある」
ピンクは最も最近になって使用されるようになった色名の1つ.
https://gizmodo.com/how-the-colors-got-their-names-1510522700
追補 2022.5.13
改めて記事を当たってみたところ,「ダイアンサスを指すpinkが,色のピンクの語源である可能性がある」という言い方がより正確なようです.稲垣氏のような断定した書き方はネット上の英語辞典,語源辞典,さらには小学館ランダムハウス英語辞典には記載されていませんでした.
How the Colors Got Their Names も,Online Etymology Dictionary同様,使用された年代を比較して,植物pink(dianthus)の方が,かなり早くから使われていたといった記述です.