「黒猫」(2) イギリス編:ヨーロッパでは黒猫の人気がうなぎ登り.イギリス各地で黒猫のアイドルが生まれています.chief mouser:主席ネズミ捕獲官パーマストン,猫カフェのビクター,老舗パブのネルソン.「今でも黒猫の里親捜しは,他の猫よりも格段に大変なんです」とはいうものの,魔女狩りと黒猫への迫害の嵐はイギリスでは比較的穏やか.19世紀を迎えると更に風向きが変わってきました.

NHKドキュメンタリー - ヨーロッパ 黒猫物語~愛しきネコたちの不思議な運命~」から,今日は,イギリスの黒猫です.

 

▽(イタリア編 http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2017/09/01/032214

▽(昨日このイギリス編をほぼまとめ終わったのですが---.クラッシュしたため,なくなく途中で中止し,改めて書き直しました.

ファイルがクラッシュ!今日は,この写真を載せて,終了させていただきます. - yachikusakusaki's blog

始まりは一緒です.)

 

 「黒猫」(2) イギリス編 

イギリスでは,沢山のエピソードが紹介されていたので,どこまで整理できるか---

 

イギリスではロンドンッ子タチアナさんが番組の案内を,そして,音声の吹き替えはももいろクローバーZ佐々木彩夏さんが.

そのまま書き写したいのですが,長くなりますので,概略の記録にとどめます.佐々木彩夏さんが吹き替えたセリフはほんの一部再録.

 初回 2017年6月28日(水) 午後9時,再放送 2017年8月16日(水)午後4時

www.nhk.or.jp

今,ヨーロッパでは黒猫の人気がうなぎ登り.各地で黒猫のアイドルが生まれています.

 

ダウニング街

タチアナさんが始めにやって来たのはロンドンの中心地ダウニング街.一般の人は入れないよう,厳重に警備されています.中には首相官邸や外務省など.

ここでは猫が公務員として働いているんです.

肩書きは「chief mouser:主席ネズミ捕獲官」.建物が古くネズミが多いため1924年から正式に雇用されているそうです.

首相官邸ネズミ捕獲長 - Wikipedia

現在首相官邸の主席ネズミ捕獲官はラリーという茶と白のしま猫.六年前からこの任につき,かなりの人気だったのですが---

昨年来外務省,財務省内閣府に続けざまに任命された黒猫たちが国民の話題をさらっていったとのこと.

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首相官邸ネズミ捕獲長 - Wikipedia Larry the Cat (@Number10cat) | Twitter Palmerston (@DiploMog) | Twitter

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Gladstone(@TreasuryMog)さん | Twitter

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Evie & Ossie (@CabOfficeMogs) | Twitter

(なお,この猫たちは,皆,もとは捨て猫.バターシード・ドックス&キャッツ・ホームから里子としてもらわれてきました)

 

 

猫カフェ

次に,タチアナさんがやって来たのは,猫カフェ「Lady Dinah's Cat Emporium」.

イギリスでも次々にオープンして大人気の猫カフェ.ここは,3年前,その先駆けとなったイギリスで最初のお店.12匹の猫たちに囲まれてまったりした時間を過ごしながら,本格的なアフタヌーンティーを楽しめます.

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猫カフェと本気のアフタヌーンティーが融合した優雅すぎる空間「Lady Dinah’s Cat Emporium」 GIGAZINE

この店で一番人気は,ハンサム黒猫「ビクター」1歳半.週末には取り合いに.

「とても優しい性格で,一番の甘えん坊」

ビクター以外にも姉妹の黒猫;目立ちたがり屋の「リジー」とおもちゃ大好き「アリス」.共に人気上昇中.

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https://www.yelp.co.uk/biz/lady-dinahs-cat-emporium-london Google Maps: Report Inappropriate Image 

「黒猫,好きですか?」

「もちろん,大好きよ」「ロンドンのような都会では,なかなかペットが飼えないから.こうしたお店は最高ですね」

 

 

 イギリスといえばパブ.

ロンドンにある老舗のパブ:North London’s Tapping the Admiral.

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Tapping The Admiral | Londonist

今話題の黒猫がいます.店の看板猫,ネルソン.

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Local hero: meet Nelson, the pub cat | Royal Canin cats | The Guardian

「ネルソンは,会いに来たみんなを,幸せな気分にしてくれるから.それにネズミも追い払ってくれるしね.僕たちにとって,幸運の猫だよ」

ネルソンのように手足の先が白い猫は,タキシードキャットと呼ばれています.まさにパブにぴったり.

 

古都ヨーク

黒猫ブームはロンドンだけではありません.

ロンドンから北へ,列車で2時間.イングランドの古都ヨーク.古代ローマ時代からの城壁に囲まれ,中世からの雰囲気が今なお残っている町.

今,黒猫でも有名に.屋根や壁,町の色々なところに黒猫の像が潜んでいます.

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Cat Statues of York – York, England - Atlas Obscura York Cat Trail (England): What to Know Before You Go - TripAdvisor York Lucky Cat Trail | York Lucky Cats

およそ100年前,ある建築家が,魔除けの意味で,猫の像を飾ったのが始まりだとか.

専用の地図が用意され,お店などでもらえるそうです.全部で22匹いる黒猫を探して歩くのが,観光客に大人気.

黒猫グッズのお土産も,ブームにあやかって黒猫で町おこし?

 

なぜ,今,黒猫がこんなにも人々を惹きつけているのか?

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アマゾンイメージ

話題の本「Catopedia」の著者,ペット研究家ジャスティン・ハンキングさん

「元々イヌは,富裕層に飼われていました.狩りに連れて行くステータスの象徴でした.ところが,猫はまるで違います.

馬小屋にいてネズミを獲る係.ステータスがずっと低く,いわゆるペットでもなかったんです.

人々が町に住み始め,ライフスタイルが変化すると,犬よりも猫を飼うようになったんです.

現代の生活様式には猫の方が合っているからかもしれませんね

 

ところが,ハンキングさんの口から,思いも寄らない話が飛び出しました.

 「今は一見,黒猫の人気が広がったようですが,必ずしもそうとばかりは言い切れないことに注意して下さい.

バターシード・ドックス&キャッツ・ホームでは,黒猫の里親捜しは,他の猫よりも格段に大変なんです」

 

 バターシード・ドックス&キャッツ・ホームは,ロンドン南部にある動物保護施設.創立1860年

捨て猫や野良犬,飼い主のいなくなった犬・猫などを収容し,手厚く保護しています.歯石も取っているんですよ.徹底した健康チェック.

獣医師「黒猫は他の猫に比べると,明らかに人気がありませんね.茶色とか違った毛並みの猫が人気なんです.

猫の性格にもよるんですけどね.

黒猫だから他の毛並みより飼いにくい,といったことは,ないんですがね」

 

なぜ黒猫のもらい手が少ないのか?

イギリス北部コーンウォール州ボスキャッスル.アーサー王伝説ゆかりの地として知られています.ここに,魔女博物館(THE MUSEUM of WITCHCRAFT IN CORNWALL)があります.著名な魔術研究家セシル・ウィリアムソンによっておよそ60年前に設立.

中には,魔女と呼ばれた人たちが実際に用いた道具や,魔術に関する資料が.

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魔法博物館: ミチナルセカイ+ 【イギリス】まるでハリーポッターの世界!? コーンウォールの魔法博物館へ (TravelBook) WITCHCRAFT IN CORNWALL - THE MUSEUM OF WITCHCRAFT BOSCASTLE CORNWALL - YouTube

魔女を自称するカサンドラ・ラザム・ジョーンズさんが案内.

「これをみて,黒猫と魔術との密接な関係がよく分かるものよ」と見せたのが猫のミイラ.

昔は生きた黒猫を建物の壁に塗り込んでいた,今でも建物から猫のミイラが出てくる.とのことがあるとか.

「魔女の生き霊が黒猫に乗り移り,隣の家の人を監視したり魔法をかけたりすることがあると信じられていたの.それを防ぐため,こんなことをしたんです」

 

(イタリア編 http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2017/09/01/032214

再びイギリスの黒猫

 

イギリスでは魔女と黒猫の迫害は比較的穏やかだった

中世ヨーロッパでの魔女狩りと黒猫への迫害の嵐.

しかし,イギリスでは他の国と比較すると,迫害は少なく,早期に終了したとのこと.

魔女についての専門書も出している,ヨーク大学シャープ教授のもとを訪ねました.

ジェームズ・アンソニー・シャープさん

「イギリスでも,魔女の処刑はありましたが,イギリス国教会のもと,そもそも,他のヨーロッパに比べると,それほど大きな迫害は行われなかったのです.イギリスでは,17世紀後期にもなると,高等教育を受けたエリートたちにとって,魔女はもはや大きな問題ではなくなりました.イギリスでは18世紀初頭には,すでに魔女の迫害は,終了していたのです」

 

 魔女と共に迫害された暗黒の時代をイギリスで幸運にも生き延びることができた黒猫たち.

 

19世紀を迎えると更に風向きが変わってきた.

それが何か?

 

 ▽ウィットビージェットWHITBY JET の人気の中で注目された黒猫

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Ebor Whitby Jet Works

19世紀,ビクトリア女王(1837年6月20日 - 1901年1月22日)が身につけていたものに注目が集まり,ウィットビージェットが人気に.ジェットとは,「黒玉」.古代の植物からできた宝石です.

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Victoria black WHITBY JET - Google 検索

サンドラさん(吹き替え佐々木彩夏さん)ヴィクトリア女王1861年,42歳で夫のアルバートを病気で亡くした.以来ずっと喪服で暮らしたたそうなの.洋服からアクセサリーまで,黒で統一された気品のある出で立ち.その姿に憬れて黒がヨーロッパ中の一大ブームになったんですって.

そして,そんな黒のブームの中で注目されたのが,そう,吾等が黒猫だったというわけ」

 

▽黒猫と幸運

Savoy Hotel

玄関の気になる植木が.実は黒猫をかたどっている.

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The Savoy Hotel London with Kids. | Roam the Gnome The Story Of The Poshest Cat In London | Londonist

ゲストルームには黒猫の像.木製で名前はカスパー

 1898年,或実業家が13人で会食.しかし,その3週間後,その実業家は拳銃で射殺された.この事件を受けて,ホテル側は,,人間の代わりになる魔除けの彫刻をつくることに.それ以来,13人のテーブルがあると,キチンとナプキンつけたカスパーが同席することに.

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 Kaspar the Savoy hotel cat honoured after warding off bad luck for 86 years | UK news | The Guardian

 

このカスパーを気に入っていたウィンストン・チャーチル

ディナーの後,カスパーをいつも連れて行きたがったチャーチルが再び黒猫との話題に登場.

 

 

イギリス海軍の黒猫

第二次世界大戦で使われた軽巡洋艦ベルファスト

今はテムズ川に係留され,博物館に.IWM London | Imperial War Museums 猫がネズミを捕まえている像も展示されています.

実は大航海時代の昔から,船の積荷や食糧をネズミから守るため,猫を乗せていたんです.更に天気を予知する能力があるとも信じられていました.

船乗りたちは猫を幸運のお守りのように考えてきたそうです.第二次世界大戦の時にも引き継がれ,船員たちのハンモックに並んで猫用の小さなハンモックも.一人前の船乗り扱い.大切な仲間だった.

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ベルファスト (軽巡洋艦) - Wikipedia http://www.iwm.org.uk/collections/item/object/205185505

 

そして,国民の人気者になる黒猫が登場します.

 

黒猫サイモン

1949年揚子江事件の際,怪我をしたにもかかわらず,ねずみ取りの任務を続け,士気を高めたために勲章をもらいました.

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http://www.nickcooper.org.uk/moggies/simon/simon.htm

 

プリンスオブウェールズの黒猫ブラッキー

1942年,時の首相チャーチルルーズベルト大統領に会いにカナダに行ったとき,前を横切って映像に.まるでチャーチルと挨拶を交わしているよな姿で,一躍人気者に!

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Ship's cat - Wikipedia

 

こうしたことを通じて,イギリスでの黒猫のイメージアップは確かな足取りですすんでいきました.

 

(フランス/ベルギー編へ続く 

「黒猫」(3) フランス・ベルギー編 1881年モンマルトルにオープンしたキャバレー,シャ・ノワール(CHAT NOIR).ズバリ「黒猫」.yachikusakusaki's blog

(過去記事

「黒猫」(1): イタリア編 - yachikusakusaki's blog