障害者施設殺傷事件1年 過去に例を見ない今回の事件では,警察が犠牲者を匿名で発表する異例の対応がとられました. これまで思いを語ることがなかった,犠牲者の遺族が初めてその胸の内を明かしました.「明るくて周囲を笑わせたり,大切なことを教えてくれる人間でした.私たち遺族に『殺されてよかった』なんて思う人はだれ一人いません」「あまり泣いてばかりいても『お母さん,がんばって』って言うような気がして,一生懸命生きてます」 NHK おはよう日本 2017年7月26日

 社会に衝撃を与えた事件から,今日で1年です.相模原市知的障害者施設で46人が殺傷された事件についてです.

 NHK おはよう日本 2017年7月26日(水)

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おはよう日本 - NHK

被告,直前まで計画に賛同を求める

/障害者施設殺傷事件1年

事件から1年を前に,今月現場となった施設が初めて公開され,犠牲となった人たちの暮らしの名残りがかいま見られました.

この事件で,殺人などの罪で起訴された施設の元職員植松聖被告.事件を起こす直前まで,障害者を殺害する計画を知人に打ち明け,賛同を求め続けていたことが,捜査関係者への取材でわかりました.

 

事件の現場となった津久井やまゆり園です.

正門前には,おとといから献花台が設けられました.花を手向ける人の姿が後を絶ちません.

「少しでも家族の傷が早く癒えて欲しいなという,そういった思いですね.今は」

 

入所していた障害がある人たちが次々に刃物で刺されて,19人が殺害され,27人が重軽傷を負った事件.施設の元職員植松聖被告(27)が,殺人などの罪で起訴されています.捜査関係者への取材で,事件前日から直前までの詳しい行動が明らかになりました.

植松被告は,事件前日に自宅から凶器となった包丁を持ちだしたあと,都内のホームセンターで,職員を拘束するための結束バンドを購入したということです.そして,障害者を殺害する計画について,事件直前まで,東京新宿区の飲食店などで,知人等二人に打ち明け,賛同を求め続けていたことがわかりました.

 

調べに対し,植松被告は,

「事件の前日,計画を実行に移すことを決めた.周囲から邪魔されると思い,早く計画を実行しなければと思った」と供述しているということです.

調べに対し「障害者は不幸を作ることしかできない」と供述したという植松被告.その考えは,今も一貫して変わっていません.

 

 

初めて語る遺族の思いは /障害者施設殺傷事件1年

過去に例を見ない今回の事件では,警察が犠牲者を匿名で発表する異例の対応がとられました.

差別や偏見への不安が消えない中,これまで思いを語ることがなかった,犠牲者の遺族が初めてその胸の内を明かしました.

 

事件で犠牲になった,55歳の男性です.

感情表現が豊かで,周囲から好かれていたといいます.

家族が寄せた手記です.障害を理由に命を奪われた憤りが記されています.

「明るくて周囲を笑わせたり,大切なことを教えてくれる人間でした.私たち遺族に『殺されてよかった』なんて思う人はだれ一人いません」

 

事件から1年.26歳の娘の命を奪われた現実を,受け止めきれない母親もいます.

「(写真を見せながら)3歳ぐらい.二重あごになっているけどかわいい.ふふふふ.大好きだった.どんな命も大切な命.どうしてあんなことができるのか.納得いかない.許せない」

今も毎日,この写真に語りかけています.

「『今日はこれ作ったよ.一緒にたべよう』と.『おいしい?』って.そんな話をしている」

娘が3歳の時,自閉症と診断されましたが,身振りや態度で気持ちを伝えてくれたといいます.高校二年生の時,母親の長期入院したことをきっかけに,施設で暮らすようになりました.

母親は,施設から聞いた娘の様子を,メモに書き留めていました.

「『ブドウをおいしそうに食べ,公園でアイスクリームを食べ笑顔が多くなった』.ふふふ.元気で楽しい思いをしていたんだなと.(すすりなき)」

母親は,この一年間,ずっとある歌を聴いて過ごしてきました.

 

“君を忘れない 曲がりくねった道を行く 産まれたての太陽と〜”

 

娘が大好きだった歌(「チェリー」スピッツ)です.聞くたびに,娘がそばにいるように感じています.

「あまり泣いてばかりいても『お母さん,がんばって』って言うような気がして,一生懸命生きてます」

 

“〜いつかまた この場所で 君と巡り会いたい”

 

この26歳の女性の母親が,手記を寄せて下さいました.

手記にはこう書かれています.

「望んで障害者になった訳ではない.偏見をもたないで欲しい.いらない命はない.決して傷つけたり殺してはならない.絶対に」

 

今朝のクローズアップも,この相模原市の障害者施設殺傷事件についてです.

(以下続く 近日投稿予定)

 

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19人それぞれのエピソード 55歳の男性 | NHKオンライン

 

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19人それぞれのエピソード 26歳の女性 | NHKオンライン

www.nhk.or.jp

朝日新聞 天声人語 2017.7.26

前半部省略----

「彼は正気だった」.和光大名誉教授の最首悟(さいしゅさとる)さんが事件後にそう語っていた.「いまの日本社会の底には,生産能力のない者を社会の敵と見なす冷め切った風潮がある.この事件はその底流がボコッと表面に現れたもの」.障害のある娘と暮らすゆえの重い言葉であろう.

言語障害があるならあるまま,喋(しゃべ)れるなら喋れるまま,お互いの存在を認め合う関係を――.あのとき声を上げた一人である故・横田弘さんが著書で述べている.問われているのは,当たり前のことができるかどうかである.