ヒメウツギが咲きました.
低木で花も小さいのであまり目立ちませんが,近くで見ると花の白さやしっかりした花びら.なかなか美しい.5月には満開になります.
実はこの花は,園芸ショップでは「うの花」として売られていて,半分だまされて買い求めたもの.
「なぜ4月に咲くの?うの花(卯の花)なら旧暦の四月(卯月),初夏に咲くはず」⇒「ヒメウツギだ.これは」
うの花はヒメのない「ウツギ」.うの花は「卯の花」で「卯月に咲く花」という意味だそうです(日本国語大辞典).
そして,ウツギには「空木」「卯木」と二つの漢字が当てられていてややこしいです.
空木は木の中心が空洞であるため.
卯木は卯月の花.
万葉集にはどちらも出てこなくて,うのはな/卯の花.
以前はユキノシタ科でしたが,最新の分類ではアジサイ科ウツギ属.
ウツギとは - 育て方図鑑 | みんなの趣味の園芸 NHK出版 ヒメウツギ 新・花と緑の詳しい図鑑
ウツギという名前がついた樹木はたくさんあります.
基本は「空木」=中空の木につけられている名だそうですが---.すべてをチェックしたわけではありません.
似て非なるたくさんのウツギ.
植物分類上はバラバラながら,どれも「やや地味だけれどよく見れば美しい」という共通点があるように思います.配置よく組み合わせるとステキなガーデンになるという番組を見たことがありましたっけ.
http://www1.bbiq.jp/photo-gallery/sub-page110.htm
アジサイ科にはウツギ属以外にもアジサイ属に属する「ウツギ」があります.
ノリウツギとは - 育て方図鑑 | みんなの趣味の園芸 NHK出版 樹木図鑑(ガクウツギ)
品があって,茶花にも用いられるバイカウツギはアジサイ科バイカウツギ属.
友人が大好きで,わが庭にも植えました.咲くのが楽しみ.
バイカウツギとは - 育て方図鑑 | みんなの趣味の園芸 NHK出版 茶花1
以前はこのタニウツギが属していたスイカズラ科にはツクバネウツギ属の「ウツギ」が.属名Abeliaそのまま,“アベリア”という名で改良品種が多種つくられています.街路樹などにすでに多く用いられ,ガーデニングにもオススメとのこと.アベリアとは - 育て方図鑑 | みんなの趣味の園芸 NHK出版
ツクバネウツギ - Wikipedia ハナゾノツクバネウツギ
キンポウゲ目ドクウツギ科のドクウツギはトリカブト,ドクゼリと並んで日本三大有毒植物の一つとの記載もあります(医薬品情報21 » 2007 » 8月 » 17)がどこまで浸透しているかは不明.この文献を引用している別のサイトでは,近年では死亡事故は報告されていませんが,赤い実が美しく食べられるように見えるとのことです(日本三大毒草 前編 ― ドクウツギ、ドクゼリ ―).
ミツバウツギ - Wikipedia コゴメウツギ - Wikipedia
本当にたくさんありますね.
単に「空木」だから付けた名前とも思えなくなります.「うの花ウツギ」が万葉時代から愛されてきた証しのようにも思えるのですが----.
万葉集には,なんと24首も「卯の花」を詠んだ歌があります.
山田卓三先生の「万葉植物つれづれ(大悠社)」によると
「万葉集」の卯の花の歌には,ほととぎすが配されている歌が多くあります.小学唱歌の「夏は来ぬ」に,「卯の花のにおう垣根にほととぎす(不如帰)早やも来鳴きて---」とありますが,「万葉集」でも垣根と卯の花が何首も詠まれています.
卯の花はウツギの花のことですが,「万葉集」中には「うつぎ」という言葉は出てきません.同じ「う」でも空木はうつろな木の意で,「万葉集」の卯の花は卯月に咲く花から来ているので語源的に違います.
卯の花 / 万葉集
うのはなの, さきちるおかゆ, ほととぎす, なきてさわたる, きみはききつや
卯(う)の花の, 咲き散る丘ゆ, 霍公鳥(ほととぎす), 鳴きてさ渡る, 君は聞きつや 作者不詳 (巻十 一九七六)
卯の花の, 咲き散る丘ゆ, 霍公鳥, 鳴きてさ渡る, 君は聞きつや
▽斎藤茂吉 万葉秀歌
問答歌で,この歌は問で,答歌は「聞きつやと君が問はせる霍公鳥しののに濡れてこゆ鳴き渡る」というのであるが,問の方がやはり旨く(うまく),答の方は「鳴きわたる」などを繰り返しているが,余程(よほど)劣るようである.問答歌で,相手があるのだから,「君は聞きつや」で好いはずだが,こう単純にはなかなか行かぬものである.また,「卯の花の咲き散る丘ゆ」といって印象を鮮明にしているのも,技巧がなかなか旨いのである.「丘ゆ」の「ゆ」は,「より」の意で,「鳴きてさ渡る」という運動してゆく語に続いている.「咲き散る」というあらわし方も,時間を含めたもので,咲くのもあり散るのもあるからであるが,簡潔で旨い.「梅の花咲き散る苑にわれ行かむ」(同・一九〇〇),「秋萩の咲き散る野べの夕露に」(同・二二五二)等の例がある.普通は,「梅の花わぎへの苑に咲きて見ゆ」(巻五・八四一)という具合に,「て」の入っているのが多い.