はねずいろ ステキな響き:植物の名前は具体的には分かっていないものの--多分「ニワウメ」:花も実も楽しめる花木 はねず(唐棣花) / 万葉集 やまぶきの,にほへるいもが,はねずいろの,あかものすがた,ゆめにみえつつ 作者不詳 

1. はねずいろ

ステキな響きです.漢字では,唐棣花色. 

唐棣花(:植物)のような色.

天武天皇14年の冠位制定で「親王の色」とされた(日本書紀),高位の色とのこと.

残念なことに,

万葉集にもうたわれた「唐棣花 はねず」がどんな植物かは具体的に分かっていない(日本国語大辞典)んですね.

日本書紀に書かれた唐棣花色は,赤系であることが確かとか.

 

どんな色なのでしょうか?ネット上では,例えば

「白みをおびた淡い紅色、庭梅や蓮の花のような淡紅色」

「鮮やかな朱色に近いオレンジがかった薄い赤色」

「黄色がかった薄い赤色」

等の説明があります.

3月:花津月 朱華色(はねずいろ) – THE COVER NIPPON 紅色、猩々緋、洗朱…| IROZAマガジン(紅色と並べて),唐棣色 - Wikipedia では,

次の様な色が(ディスプレーで色を見せても正確ではないですが)

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数字を示しているサイトも:

朱華(はねず)とは?:日本の色・和色:RGB R:244 G:165 B:122 CMYK    C:00 M:45 Y:50 K:00

唐棣色 - Wikipedia:RGB       (240, 144, 141) CMYK      (0, 40, 41, 6)

数字が違いますね.

決まった色を指しているのではないようです.

染織史家の吉岡幸雄氏が「日本の色辞典(紫紅社」に公開している色調は,上に示したものよりオレンジに近い色でした.

朱がかった華の意味で、これを表わすには、朱や鉛丹といった顔料がふさわしいが、染色においては、あらかじめ支子で黄色に染めてから、紅花を何度もかけて、濃くしていくのがいい」(朱華(はねず)の色 - 染司よしおか工房だより

とのこと.

 

2. はねず(唐棣花、朱華、棠棣)とは?

日本国語大辞典には

「はねず:初夏に赤い花をつける植物.具体的には未詳.バラ科の落葉低木ニワウメとする説,その変種ニワザクラとする説,またモクレンとする説などがある」

としています.

また,吉岡幸雄氏は

「遠く奈良時代天武天皇の時に、『朱華』という色名が用いられた。これは中国において、『黄丹』という黄赤の色が尊ばれていたことの影響らしいが、日本の、万葉の時代の人々は、ザクロの花を往時「はねず」と呼んでいて、その花を色名としたらしい(朱華(はねず)の色 - 染司よしおか工房だより)」

と,ザクロ説が最も有力としています(「日本の色辞典 紫紅社」).

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ニワウメの育て方|ヤサシイエンゲイ ニワザクラ|育て方と花の写真|365花撰|栽培の手引集 モクレンの写真<2> - 育て方図鑑 | みんなの趣味の園芸 ザクロ(柘榴)とは?開花時期や種類は? - horti 〜ホルティ〜

吉岡氏は「「日本の色辞典(紫紅社」で更に詳しい説明をしています.その日本書紀「朱華」の説明はとても説得力のあるものと読みました.

しかし,万葉集の解説では,「ニワウメ」説がほとんどの場合採用されています.

花を直接読んだ歌は一首ですが,ザクロでは歌の内容と合わない?そうとも言い切れないような気もしますが---

夏まけて 咲きたるはねず ひさかたの 雨うち降らば 移ろひなむか 大伴家持

(夏になって咲いたはねずの花は,雨が空から降れば,色あせてしまわないでしょうか  たのしい万葉集(1485): 夏まけて咲きたるはねずひさかたの

また,残りの三首は二つが枕詞としての「はねずいろの」という使い方.「うつろいやすし」にかかるとされています.染めた色がさめやすいからとのこと.

もう一首は「はねず色の赤裳(あかも):古代、腰から下にまとった衣服(デジタル大辞泉)」という使い方で「色」として用いています.

 

ニワウメは実もなかなか美しい.庭に一株あったら嬉しい花木ですね.でも,実は鳥に直ぐに食べられてしまいそうな気がします.

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ニワウメ 品種の特徴花ひろばオンライン ニワウメの育て方|ヤサシイエンゲイ

ニワウメの育て方|ヤサシイエンゲイ Prunus japonica - Wikipedia

による「ニワウメ」の解説は次の通りです.

バラ科・スモモ属Prunus japonica(サクラ属 Cerasus japonica)・サクラ亜属,

4月頃、葉が出る前に2~3輪ずつ固まって枝を覆うほどたくさんの花を咲かせます。花は5枚の花びらを持っており色は淡い紅色です。花後に球形で直径1cmほどの果実ができて6月~7月頃に赤く熟します。赤く熟した果実は新緑の葉とのコントラストも非常に良く鑑賞価値が高いです。

姿の似た仲間に、八重咲きで白色の花を咲かせるニワザクラ〔P. glandulosa= Cerasus glandulosa〕があります。

 

山田卓三先生の「万葉植物つれづれ(大悠社)」によると

ニワウメは中国から奈良時代以前に移入され,栽植されている落葉性の小低木です.ニワウメは庭梅の意で,ほかに小梅という別名があります.ニワザクラは本種の変種とされています.果実は球形で光沢のある紅色に熟し,甘酸っぱくておいしく,生で食べられます.実の核は利尿や虫歯などに効用のある漢方薬として用いられています.

 

はねず(唐棣花) / 万葉集

やまぶきの,にほへるいもが,はねずいろの,あかものすがた,ゆめにみえつつ  (第11巻 2786) 作者不詳

山吹(やまぶき)の,にほへる妹(いも)が,唐棣花(はねず)色の,赤裳(あかも)の姿,夢に見えつつ

山吹の,にほへる妹が,唐棣花色の,赤裳の姿,夢に見えつつ

斎藤茂吉 万葉秀歌

この歌は,一首の中に山吹と唐棣花(はねず)すなわち庭梅とをいれて,その色彩をもって組み立てている歌だが,少しく単純化が足りないようである.それにもかかわらずこの歌を選んだのは,唐棣花色の赤裳(古代半身用の衣装)を着ていたという,そういう色までも詠み込んでいるのが珍しいからである.万葉集の歌は,夢をうたうにしても,かく具体的で写象が鮮明であるのを注意すべきである.