「今回のアンケートでも,原発避難を理由に嫌がらせを受けたことがあると答えた大人は,741人の半数近い,337人に上ることが分かりました.その多くが,賠償金を巡るものでした」 『放射線がうつらないことを知っています.味方なので,安心してください』「今,僕は楽しく生きています.1日1日前向きにいれば何とかなります.だから,つらいことがあっても自殺を考えないでください」“原発避難いじめ”の実態 (2) クローズアップ現代+

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鎌倉千晶さん「再び,アンケートを見ていきましょう.

とある男性の言葉です.『大人が常に口に出している言葉を子どもたちは聞いている.大人たちの心の在り方がゆがんでいる.子どもたちのいじめの背景には,こうした大人社会での偏見や嫌がらせがある』ということも見えてきました」

 

 手記「何回も死のうと思った.でも,震災でいっぱい死んだから,つらいけどぼくは生きると決めた」

尾木直樹さん「よくこの少年がね,死なないで生きていてくれた,その事を,感謝したいなと思いますね.--たまらないですね.--予見可能だった.『安全配慮義務』違反」

辻内琢也さん「全国的な広がり,現在進行形.『放射能』『賠償金』『避難者であること』のラベルが貼られている」

“原発避難いじめ”の実態(1)クローズアップ現代+ - yachikusakusaki's blog

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震災6年 埋もれていた子どもたちの声 ~“原発避難いじめ”の実態(2)

NHKクローズアップ現代+ 2017年3月8日(水)

出演者   尾木直樹さん(法政大学教授)   辻内琢也さん(早稲田大学教授)

キャスター:鎌倉千秋さん

(この番組のダイジェストをNHKがまとめてアップしました.ほぼ私が書き写したこのブログと同じです.よりリファインされた物は以下のサイトでご覧下さい.なお,この後半の部分では,NHKダイジェストから写真等を使わせて頂いています:

https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3947/1.html

www.nhk.or.jp

リポート:白河真梨奈さん

震災前,福島第一原発のすぐ近くで暮らしていた家族です.

首都圏に避難した後,息子2人がいじめに遭い,次男は今でも精神科に通い続けています.

母親「下の子は別人になってしまった.人が怖くて,人と話すことも出来ず.『自分はいなくなってもいい』とか,『もうどうなってもいい』とか」

 

子どもたちへの悪質な原発避難いじめ.

まるで映し鏡のように,大人にも嫌がらせが広がっていました.

父親「知らないところにぽつんと来て,仕事を探して,小さくなりながら,つらかったですね」

 

ナレーション

「今回のアンケートでも,原発避難を理由に嫌がらせを受けたことがあると答えた大人は,741人の半数近い,337人に上ることが分かりました.その多くが,賠償金を巡るものでした.

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福島で,米の販売店を営んでいた父親は,原発事故で仕事も家も失いました.

店や自宅のローンの返済のため,首都圏の避難先で,ようやく見つけたアルバイトの仕事.その職場で嫌がらせを受けたのです」

 

父親「ずっとこう言われる.『東電に文句を言えば金になるんだろうから,なにも働かなくてもいい』って」

 

ナレーション

「アンケートには,福島から避難してきた人への偏見に苦しむ声がつづられています」

 

女性(東京)「『あの家は,福島から来た,やつらで汚い』と言われた」

90代女性(埼玉)「あなたたちは,俺たちの税金で暮らしてんだよなーと声をかけられた.心が震えました」

 

ナレーション

「首都圏の避難先でいじめを受けた家族です.子どもも親も,福島から避難してきたことを,周囲に隠して暮らしています」

 

父親「他の人たちに被災者だと知れ渡ったときの怖さが出てしまう.今でもそうですけど,福島の人間だっていうのは出さないように.それはあります.今でも『絶対に言わないように』って,お互い確認し合いながら生きている状態ですから」

 

鎌倉千晶さん

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大人の社会での嫌がらせの原因は,賠償金にまつわるものが最も多いわけですけれど,辻内さん,なぜ,本来の意味合いが理解されないのでしょか?」

 

辻内琢也さん

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「そうですね,賠償金をもらっているということは,彼らが原発事故によって,生活,人生,環境,そして人間関係まで,全てが根こそぎ奪われたわけです.だから,それに対する償いとして賠償金.これは,生活費ではないんですね.

もらっているわけなんですが,そのことが忘れ去られて,バッシングを受けていると.

この現象は,すごく,生活保護バッシングによく似た現象だなと私は思っていまして,その背景に,みなさん,われわれの日本がですね,みんなが生きていくのが苦しい社会.格差,貧困が広がっているような社会がベースにあるんじゃないかなというふうに見ています」

 

鎌倉千晶さん「そんな中で,復興を加速化させるために,避難している人たちの帰還も進めていこうとしていますよね?」

辻内琢也さん「避難者は,今まさに,絶壁に立たされているような状況だというふうに私は思うんですね.住宅の支援が打ち切られます.そして,避難指示がどんどん解除されていきます.解除されると,その1年後には賠償金がもう打ち切りになるわけです.まさに絶壁に立たされて,もう突き落とされる寸前,まあ,そういうような状況じゃないかなと思います」

鎌倉千晶さん6年たって,私たちも,震災直後に福島の人たちに感じていたような絆だとか,そういう気持ちが,だんだん薄れてきてしまっているんじゃないかと思うんですが?」

尾木直樹さん

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「どんどん薄れているなと思います.今,先生もおっしゃったように,現実をきっちりと伝えることもきわめて重要だと思います.崖っぷちに立たされている状況についてですね.

それと,やっぱり,社会全体が今,貧困化の中で,子どもたちの貧困化が6人に1人という状況の中で,弱者が弱者をいじめるという,そういう構造になってしまっていますから,これをどういうふうに解決していくのかが,僕ね,一番,大事だと思うんです.

1つは,やっぱり,貧困化対策をきちっとやることと,そのことによって,具体的に夢や希望を子どもたちが語れる,持てるというビジョンも,そういう動きを作っていく,我々大人の方が.これが大事だし.

それから,もう1つは,子ども参加で,それを実現していこうと.今回も,横浜の少年の声を聞けて分かってきたわけですよね.こういう社会にしてほしい.という声を聞いて,やっていけるようになるといいなと思います」

 

鎌倉千晶さん「今もありましたように,この不寛容になってきている時代に,私たちは,では,どんなことができるのでしょうか.こちらをご覧頂きたいと思います.横浜の少年も少しずつ前を向き始めています」

 ナレーション

避難先の横浜市で,いじめに苦しんでいた少年のもとに,遠く離れた場所から思いもかけないものが届きました.

『離れていても,いつもみんなで応援しています』

 

少年を励ます,メッセージカードです.メッセージを送ったのは,岐阜市の小学校でした.6年たった今も,原発事故や放射線について,子どもたちに教えています.

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先生「人が住むことが難しいと感じた人,手を上げて」

原発事故がどんな被害をもたらしたのか,事実を知る必要がある.

子どもたちが,自分の問題として考えています.

児童A「福島の人たちも地震にあいたくてあったわけじゃないから」

児童B「ひと事みたいに考えたらいけない」

横浜の少年が原発事故を理由に,いじめに遭ったことを知った子どもたち.

全校児童に呼びかけ,メッセージを書きました.

 

 『放射線がうつらないことを知っています.味方なので,安心してください』

 このメッセージを書いた,5年生の長屋美桜さんです.美桜さんの心を動かしたのは,少年が書いた手記でした

長屋美桜さん(小5)「自分がつらいのに,震災でいっぱい死んじゃったから,つらいんだけど生きるっていうところが,すごいと思いました.味方はちゃんといることを忘れないでほしいなと思いました」

美桜さんの母親も,娘の姿を通して,今も福島の人たちが苦しみ続けていることを,改めて思い知らされたといいます.

美桜さんの母親「ちょっと遠くの記憶みたいになっている部分があるので,子どもを通して,遠いところで起きていた出来事ではなくて,今もいろいろつらい思いをしている人がいるという.まだ元に戻っていないんだということを,改めて教えられた,考えさせられた」

 

岐阜の小学生たちのメッセージは,横浜の少年に届けられました.

「手書きで冊子まで作ってくれて,涙が出る思いでした」

1つ1つのメッセージを,大切に読んでいた少年は,いつも手元に置いています.

「(息子は)読みながら『遊ぼうね』とか言っていた.1つ1つに返事をしながら読んでいた」

「一生の宝物です,本当に」

今は,フリースクールに通い,明るさを取り戻しつつある少年.今回,自分と同じように,いじめを受けている子どもたちに,今の思いを書いてくれました.

 

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新たな手記「今,僕は楽しく生きています.1日1日前向きにいれば何とかなります.だから,つらいことがあっても自殺を考えないでください」

 

 

 付録 「生徒の記事全文」 NHKニュースより

www3.nhk.or.jp原発事故で避難 いじめ問題で生徒の手記 全文明らかに

3月8日 16時30分

東京電力福島第一原子力発電所の事故で横浜市自主避難してきた男子生徒がいじめを受けていた問題で、生徒が当時の心境をつづった直筆の手記の全文が明らかになりました。

原発事故で横浜市自主避難し、転校先の小学校でいじめを受けていた現在、中学1年の男子生徒は、おととし7月に当時の心境を手記に書いていて、これまで一部だけが公開されていました。(中略)

生徒の直筆の手記【全文】

としょホール教室のすみ防火とびらのちかく体育館のうら

3人からどれかしらでお金をもってこいと言われた。

○○○(関係児童名)からはメールでも言われた。

人目がきにならないところでもってこいと言われた。

お金もってこいと言われたときもすごいいらいらとくやしさがあったけどていこうするとまたいじめがはじまるとおもってなにもできずにただこわくてしょうがなかった。

いろんな人から○○(生徒本人名)が(金を払ったと)言われてるが、うらでは、○○○ ○○ ○○○(関係児童名)がしじしてる。

てんこうしたときなんかいつもけられたりランドセルをふりまわしたりいつもこわくてなにもできなくてほんとうにつらかった。

4月もゲーセンにもいってるのに、○○○ ○○ ○○○は(関係児童名)ずっとだまっていて、やつらはほんとうにむかつく。

ばいしょう金あるだろと言われむかつくし、ていこうできなかったのもくやしい。

○○○ ○○(関係児童名)にはいつもけられたり、なぐられたりランドセルふりまわされる、かいだんではおされたりしていつもどこでおわるかわかんなかったのでこわかった。

ばいきんあつかいされて、ほうしゃのうだとおもっていつもつらかった。

福島の人はいじめられるとおもった。なにもていこうできなかった。

しえんぶっしをとられてむかつく。

だれがやったかわからないけどきがつくとえんぴつがおられてる。そしてノートにはらくがきをされてた。

いままでいろんなはなしをしてきたけどしんようしてくれなかった。だからがっこうはだいっきらい。

なんかいもせんせいに言おうとするとむしされてた。

(大文字で)学校も先生も大きらい。

いままでなんかいも死のうとおもった。

でも、しんさいでいっぱい死んだからつらいけどぼくはいきるときめた。

(大文字で)みんなきらいむかつく

5年のたんにんはいつもドアをおもいっきりしめたりつくえをけったりして3.11のことをおもいだす。

 

現在、フリースクールに通っている13歳の生徒が、いじめで苦しんでいる人たちへのメッセージをつづりました。

 メッセージの中で男子生徒は

「今、僕は楽しく生きています。一日一日前向きにいれば何とかなります。だから、つらいことがあっても自殺を考えないで下さい。もし自殺したら何があったかほかの人に伝える事も出来ない、それに今は学校に行きたくないなら、僕みたいにフリースクールみたいな場所もあるから、そこに行って勉強するのもいいです。環境になれなくてもゆっくり自分のペースでなれればいいです。だから自殺は考えたらダメ」

と呼びかけています。

 

桃始笑(ももはじめてさく)桃の花が咲き始める頃