「山を見て感動する,という精神性を持つ外国人は見つかりませんでした」(山とロボットにみる西洋人の感覚)& 「水戸黄門の印籠に土下座し,バナナで電話する」(大阪人は日本人でない?)鴻上尚志 『クール・ジャパン!? 外国人が見たニッポン』(6)

 「世界にこんな見方があり,こんな考え方がある.多様であることを楽しむことは,きっと自分自身の人生も豊かにし,深くすることになるのです」

クール・ジャパンを知り,楽しむことは,未知なる自分と未知なる世界を知り,楽しむことと同じだと思うのです」

これは,NHKクール・ジャパン!? 発掘!かっこいいニッポン』の司会者,鴻上尚史さん自著『クール・ジャパン!? 外国人が見たニッポン』(講談社現代新書で書き記した言葉.

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このブログでも,このところ集中的にこの番組を取りあげてきました.

yachikusakusaki.hatenablog.com

 なぜ「洗浄器つき便座」は日本在住の外国人に愛されるのか? 2016年「外国人が選ぶ本当にかっこいいニッポン」トップ20位〜11位 『クール・ジャパン!? 外国人が見たニッポン』(2)

 2016年「外国人が選ぶ本当にかっこいいニッポン」②(トップ10位〜6位) & 2017年「世界が驚いた日本」①(トップ25位〜21位) 『クール・ジャパン!? 外国人が見たニッポン』(3)

 2016年「外国人が選ぶ本当にかっこいいニッポン」③(トップ5位〜1位) & 2017年「世界が驚いた日本」②(トップ20位〜11位) 『クール・ジャパン!? 外国人が見たニッポン』(4)

 「世界が驚いた日本」③(トップ10位〜1位) 『クール・ジャパン!? 外国人が見たニッポン』(5)

 

今回は鴻上さんの著書からあと二題.

 

1. 山とロボットにみる西洋人の感覚

(2009年の外国人がみつけた日本のクール・ベスト20)第12位は「富士登山」です.(2016年では第9位)

そもそも,山を見て感動する,という精神性を持つ外国人は番組では見つかりませんでした.日本では,ただ富士山を写すだけのライブカメラというものがいくつもネット上にあります.そのサイトを開けば,「今現在の富士山」がみられるのです.

外国にも,山を写す大分カメラはありますが,それは山の天候を知るためのものです.登山やスキーのために,山の状態を知りたいからカメラを向けるのです.

ただ,山が好きだから,綺麗だから,愛されているから,ライブカメラを向ける,という国はありませんでした.番組ではスイス人もいたのですが,ライブカメラはもちろんあるけれど,それは登山のためであって,山を愛でるためではない,と答えました.そもそも,山そのものを愛でる,山を神秘的なものとして崇める,という感覚が理解できない,と不思議そうに言いました.

 

ちょっと話はそれますが,これはキリスト教の影響が大きいのではないかと,僕は思っています.

ただ一つの神を信じる一神教として確立していくために,キリスト教は,自然信仰的なものをきびしく禁じました.

例えば,「満月に祈る」とか「大きな木には精霊がやどっているような気がするから大切にする」とか「湖や沼が神秘的な雰囲気だからお供え物をする」というようなことはすべて,「迷信」であり,「悪魔の誘惑」であり「堕落への始まり」「異端の信仰」だときびしく禁じたのです.

日本人からすると,ごく当たり前の気持ちです.富士山を見上げる時,なにか荘厳な気持ちになって,思わず拝んだり,頭を下げるとか,願をかける,というような感覚です.

キリスト教がきびしく禁じたと言うことは,そういう感覚を,ヨーロッパの人たちももともとは持っていたということです.

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さらに話は飛ぶのですが,「人間型ロボット」というのも,じつは日本の独壇場です.西洋が研究するロボットは,四足歩行だったり,上半身ではなくて二本足の部分しかなかったりして,人間の姿とはほど遠いものです.

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イタリア人の男性「私はカソリックです.神の教えを守っています.人間を創るのは神だけです.------ですから,欧米では人間型のロボットは創らないのです」

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こんな分野にも,というか,こんな分野だからかもしれませんが,一神教としてのキリスト教が影響しているんだと知って,僕は驚いたのです.

 

2.大阪人は日本人ではない?

(2009年の外国人がみつけた日本のクール・ベスト20)第13位は「大阪人の気質」です.

番組でこういう特集を組んだのです.それは,外国人の中から,「どうも大阪人は,私たちがイメージしている日本人と違う」という声が聞こえてきたからです.

内気で,恥ずかしがり屋で,奥ゆかしい,思ったことはなかなか口にしない,という日本人のイメージと,どうしても大阪人は合わないと言うのです(僕が言ってるんじゃないですよ.番組に出た,多くの外国人が口をそろえて言っているのです).

それほど言うのなら確かめてみましょうと,2009年,大阪でロケをしてみました.やることは簡単.外国人が,街を歩く大阪人に突然,葵の印籠を見せて「コノインロウガ メニ ハイラヌカ!?」とたどたどしい日本語で言うだけです.日本に住んでいる人ならみんな知っている『水戸黄門』のパロディーです.

呆れたことに,いえ,驚くことに,印籠を突きつけられた大阪人は,九割近い人が,「ははあ〜」と言いながら,ひれ伏す真似をしました.ロケ地が大阪城の近くだったので,ひれ伏さなかった残りの一割は大阪以外から来た観光客なんじゃないかと僕たちは想像しました.

20人ぐらい土下座の真似をしてくれる人を集めるのに,2時間はかかるかなと考えていたのに,20分で予定人数は集まりました.

東京で,事前にロケをしましたが,誰一人,やってくれませんでした.印籠を突きつけられた人はみんな,惑い,ポカンとし,照れ笑いをしながら「えっ?なんですか?」「印籠ですね----」「ごめんなさい」などと反応しただけでした.

大阪の結果に,外国人も番組スタッフも僕も,大笑いして感動しました.「これは,まるでラテンのノリなんじゃないの?」と口々に言いました.

歩いている人の前で突然,バナナを取り出し「ハイ モシモシ チョットマッテクダサイ」とバナナを渡すというネタもやりました.これまたほとんどの大阪人は,当然のようにバナナを受け取り「はい,もしもし」と耳に当て,すぐに「バナナやないかい!」と外国人に突っ込みました.業界用語で言う「ノリツッコミ」ですね.一回,相手のボケに乗って,その後,突っ込むという技です.バナナを突き出され,一瞬,戸惑う子供に,横で「アホ.ちゃんと受けんかい.もしもし,やろ」と,ノリの指導をする父親もいました.

どうしてそんなことを言うんですか?と訊けば,「いや,当然のことでしょ」としごく普通の顔で答えてくれました.

じつは,「回転寿司」も「カラオケ」も「インスタントラーメン」もすべて大阪で生まれて世界に広まったものです.どれも感動的な発明というよりは,思いついた時にちょっと笑ってしまう雰囲気があります.いえ,バッタもんの匂いさえします(笑).

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それともうひとつオレオレ詐欺」「振り込め詐欺」は,大阪では発生件数がとても少ないそうです.電話を受けた母さんが「あんた,誰や?」と徹底的に突っ込むからでしょうか.

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YouTube水戸黄門パロディin Osakaの映像はありませんでしたが,このような大阪人気質は,みのもんたさんの番組でも取りあげられその映像が投稿されていました.さらに外国人出演の類似した投稿動画ありました.残念なのはどの動画も撮影技術・演出法が私の好みと合わず,面白みにやや欠けているような--.リンクだけ貼っておきます. Osaka Bang! Gaijin SMASH - Fake Shooting People in Japan: 外人と大阪バーン 打たれたふり 大阪人のありえへんルール - YouTube 秘密のOSAKA #ナニワキッズ編 - YouTube

 

款冬華(かんとうはなさく,ふきのはなさく)雪の下からふきのとうが顔をだす頃