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お湯に入れれば緑色,分類は難しい モ(藻)&ワカメ(稚海藻,和可米)/万葉集 たまも かる,みぬめを すぎて,なつくさの,のじまの さきに,ふね ちかづきぬ 柿本人麻呂

 「万葉にモ(藻)をよんだ歌が実に六九首もある」

松田修さん(万葉の植物 保育社).「多くは『なびく』『みだる』などの枕詞」だそうですが.古来から,日本人は海藻に親しんできたんですね.

そして,わかめ(稚海藻,和可米)をよんだ歌も二首.

養殖ワカメはこれから収穫時期.浜での収穫を手伝ったことも,そして,友人に連れられてテトラポッドについているワカメ採りをしたこともありましたっけ.財布を落として,割の合わない収穫になりましたが.

少しワカメについて調べてみました.

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めかぶのおいしい食べ方☆ - NAVER まとめ  わかめに関する豆知識 - 竹中水産株式会社

 

ワカメの緑色

ワカメは今も海苔・昆布とともに日本の食卓に欠かせない海藻.私も大好きで,さっと湯がいて緑色になったところで冷水にとって,そのまま食べても美味しい!

湯がいて緑色になるのは,クロロフィルがなくなってカロテノイドやアントシアン系色素が現れる紅葉/黃葉とは逆.

わかめの持っている赤い色素(フコキサンチン)が、熱によって橙色に変化し、緑の色素(クロロフィル)の色が現れるためとのことわかめってなぁに?|わかめについて|日本わかめ協会

生産地

養殖生産量は海苔には遠く及ばないものの.2番目に多い海藻(農林水産省/平成27年漁業・養殖業生産統計 ).県別生産量1・2位は岩手,宮城の三陸二県,続いて徳島,長崎だそうです.三陸産はナンブワカメと呼ばれ、葉の長いのが特徴で,徳島のナルトワカメは茎が短く、味と香りがよいのが特色とのことわかめに関する豆知識 - 竹中水産株式会社).

 

生物学上の分類

食べることは好きでも,植物としてのワカメについては,藻類で褐藻類に分類される.ぐらいの知識しかありません.ちょっと調べてみようと始めたら----.この項目はかなり複雑で手強い.

「植物とは何か」まで考えなくてはいけないことに---.難しくて分からないところもあります(長くなります.興味がない方はここまでにして,万葉の和歌を楽しんで下さい).

a. 日本植物生理学会のウェブサイト「植物Q&A」

「中1の娘が理科の時間に先生から『藻類が植物ではなくなりました。資料集では植物になっているけど、注意してください』と言われ,教科書にも「藻類は植物ではない」と書かれています。では藻類はどのような分類になったのでしょうか。ご教授ください 」みんなのひろば | 日本植物生理学会

回答は

「藻類が植物かそうでないかは、「植物」をどう考えるかによります。植物とは何か、についてはこれまでいろいろな考え方が出されてきました。おそらく多くの人になじみ深いのが、「光合成をして独立栄養で生きる生物(いわゆる生産者)が植物である」という考え方だと思います。この場合、藻類は植物ということになります。しかし近年、生物の系統関係(類縁関係)に基づく分類体系の見直しが進められている中で、この考え方は現実的ではなくなってきました---」とあり,

「現在,広く受け入れられている考え方は『陸上植物、つまりコケ植物、シダ植物、種子植物を植物とする』で,この定義からは,『全ての藻類は植物ではない』」.

陸上の植物を普段見慣れている私たちからすればわかりやすいのですが---.この考え方には問題点もあるのでは?植物以外は「原生生物(原生動物と藻類を合わせたグループ)」とされるのです!

ワカメが原生生物って言われてもピンときませんよね?

 

b.筑波大学生物学類BotanyWEB「植物とは」http://www.biol.tsukuba.ac.jp/~algae/BotanyWEB/plant.html

ここには植物について,昔のままの定義が書かれていました.

「植物 (plants) とは何だろうか? ふつう植物とは、水と二酸化炭素、光エネルギーから酸素と糖を合成する光合成(酸素発生型光合成)を行う生物と定義される。私たちに身近なタンポポやイネ、マツ、シダ、コケなどと共に、海にすむアオノリやテングサ、コンブのような海藻や、クロレラ (Chlorella) 、クラミドモナス (Chlamydomonas) 、ミドリムシ (Euglena) 、珪藻のような単細胞生物までもが植物であるといえる。植物は水圏から陸上まで、生態系の生産者 (producer) として欠くことのできない役割を担っている。ただし植物の中には、二次的に光合成能を失った生物 (寄生植物、腐生植物など) も含まれる 」

この後が難しい.

光合成は最初、原核生物において誕生した。この子孫がアオコなどの藍色植物 、つまりシアノバクテリア (藍色細菌) である」

「この藍色植物 (藍藻) は、ある真核生物に取り込まれ、共生関係 (一次共生) を築き上げ、葉緑体 (chloroplast) へと変化した」

「その子孫が灰色植物・紅色植物 (テングサやオゴノリなど)・緑色植物 (イネやクロレラなど) である。この3植物群は一次植物 (primary plasts) ともよばれ、また系統分類学的にはこの3植物群のみを狭義の植物 (kingdom Plantae) とする意見もある」

何となく分かりますか?

まず「シアノバクテリア共生して葉緑体になった」ことを想像しなければいけないようです.

そして,紅藻類=紅色植物,「一般の陸上植物+緑藻類」=緑色植物 を一次植物!?

さらに

「この狭義の植物が二次共生 (secondary endosymbiosis) という現象によってさまざまな真核生物に取り込まれ、葉緑体となることで新たな植物が生じた。その結果生まれたのがミドリムシや珪藻、ワカメなどの植物 (二次植物 secondary plants) である」

「酸素発生型光合成は、共生という現象を通じてさまざまな生物が獲得した機能であり、それによって定義される植物というまとまりは多系統である」

ここまで来ると,かなり理解が難しい.次の図の上から何となく理解ができる程度ですね(ただ解像度が悪いのでよく見えない可能性も⇒別のサイトhttp://shigen.nig.ac.jp/shigen/news/n_letter/2013/nl201302.pdfの図も併記します).

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色がついた線で示されたものは全て「植物」!(ワカメ等の褐藻類は珪藻等と共に「不等毛植物」に分類:上側の図では黄色・下側の図では橙色)

沢山の枝分かれの先の部分ですから,まとまった単一の系統ではなく多系統

そして,この定義なら,「藻類は植物」です.

でもその先があってまたややこしくなります.

「しかし私たちがふつう植物として認識しているのは、陸上にすむコケやシダ、裸子植物 (イチョウ、ソテツ、マツなど) 、被子植物 (スイレン、イネ、ダイコン、キクなど) である。系統分類学的にも、植物という用語をこれらの生物群に限る場合がある」

「これらの植物は陸上植物 (land plants) とよばれ、共通の祖先をもつ単系統群である」「これに対して、陸上植物以外の植物は藻類 (algae) と総称される」

結論は出さずに二つの考え方が併記されています.

光合成生物=植物 

②陸上の光合成生物=植物,それ以外の光合成生物=藻類

①の従来の定義に再び収束していく気がします.自然科学の定義らしい.でも,理解しづらいし,「分類は単系統を基本」という考え方からは②も棄てがたい.っていう感じでしょうか.

いずれを採るにせよ,「原生動物と藻類をひとくくりにして原生生物は止めて欲しい」というのが素人の願い.

 

Wikipediaでは英語版/日本語版ともに以下の通りで,①に準じている気がします.

 C. Wakame - Wikipedia   ワカメ - Wikipedia

 ワカメは

不等植物門,褐藻綱,コンブ目,チガイソ科,ワカメ属,ワカメ U. pinnatifida

 

 ◎モ(藻)&ワカメ(稚海藻,和可米)/万葉集

たまも かる,みぬめを すぎて,なつくさの,のじまの さきに,ふね ちかづきぬ 

玉藻(たまも)刈(か)る,敏馬(みぬめ)を過(す)ぎて,夏草(なつくさ)の,野島(のじま)の崎(さき)に,船(ふね)近(ちか)づきぬ 柿本人麻呂  巻3-0250

玉藻刈る,敏馬を過ぎて,夏草の,野島の崎に,船近づきぬ

 ▽斎藤茂吉 万葉秀歌

 これは,柿本朝臣人麻呂覉旅歌八首という中の一つである.覉旅八首は,純粋の意味の連作ではなく,西へ行く趣の歌であり,東へ帰る趣の歌もある.しかし八首とも船の旅であるのは注意していいと思う.敏馬は摂津武庫郡,小野浜から和田岬までの一帯,神戸市灘区に編入せられている.野島は淡路の津名郡に野島村がある.

一首の意は,[玉藻かる(枕詞)]摂津の敏馬を通って,いよいよ船は[夏草の(枕詞)]淡路の野島の崎に近づいた,というのである.」

内容は極めて単純で,ただこれだけだが,その単純が好いので,そのため,結句の「船近づきぬ」に特別の重みがついてきている.一首に枕詞が二つ,地名が二つもあるのだから,普通いう意味の内容が簡単になるわけである.この歌の,「船近づきぬ」という結句は,客観的で,感慨がこもっており,驚くべき好い句である.

 

 ◎モ(藻)&ワカメ(稚海藻,和可米)/万葉集

つのしまの,せとのわかめは,ひとのむた,あらかりしかど,われとはにぎめ

角島(つのしま)の,瀬戸の稚海藻(わかめ)は,人の共(むた),荒かりしかど,我れとは和海藻(にぎめ) 作者未詳   巻16-3871

 角島の,瀬戸の稚海藻は,人の共,荒かりしかど,我れとは和海藻